第124話 迷宮三階層

 三階層に入ると、そこにはマナが充満していない。

安全エリアというやつである。


「ほう、もう迷宮の守護者が居るのか」


 三階層にマナが存在しないという事は、次の階層で迷宮の守護者が居る。


「流石は難攻不落の迷宮、ボスが出てくるのが早いな」

「マスター、大丈夫か? こりゃ、とんでもないのが出てくるかもしれんぞ」

「かもな。でも、まだ三階層だ。こんな所で根を上げられないな」


 最深部に近づくに連れて、魔獣はどんどん強くなっていく。

三階層で手こずってはいられない。


「いくぞ」

「「はい!」」


 ヴィムたちは、階段を下りていく。


「検知範囲に入ったら、一気にくるぞ」


 ゆっくりと四階層の中央へと近づいていく。

遮蔽物にになるようなものは何もない。

ただ、広い見通しのいいエリアが出来上がっている。


「来たか」


 そう言って、ヴィムは上を見る。

強力な魔力生命体が、近づいてくるのを感じた。


「嘘、だろ……」

「マスターこれは、我も久しぶりに見たぞ」


 真っ赤な体をした竜が目の前に現れた。


「レッドワイバーンだな」

「ヴィムさん、これはヤバいやつですか?」

「まあ、ヤバくない訳ないよな」


 ハナが目線はそのままレッドワイバーンを見据えて尋ねてきた。


 レッドワイバーンは普通の迷宮なら、最深部に居てもおかしくないような魔獣である。

迷宮飲みに出現する魔獣なので、滅多にお目にかかる機会はない。


「迷っている暇はなさそうだな。俺が全力で援護する。思いっきりやってくれ」

「わかりました!」

「了解です」

「ディアナも頼むぞ」

「任せろ」


《空気防壁》《物理結界》


 防壁をミサとハナの前に展開する。

ハナは左から、ミサは右からレッドワイバーンに近づいていく。


 それにレッドワイバーンはすぐに反応する。

口から青白い炎を吐いた。


 しかし、それはヴィムの作った防壁に跳ね返される。


「はぁ!」


 ヴィムの防壁のおかげで、ミサの剣がレッドワイバーンにどどいた。

しかし、硬い皮膚によって剣は貫通することは無かった。


「一旦、引くぞ」


 ヴィムの指示により、レッドワイバーンから大きく距離を取る。

その際にワイバーンの爪の攻撃がハナを捉えた。


《縮地》


 間一髪で、ヴィムがハナの体を持ち上げて移動することでその攻撃を躱す。


「あっぶねぇ」

「すみません、油断しました」

「無事でよかった」


 お姫様抱っこの状態からハナを解放する。


「マスターできたぞ」

「おう、ぶっ放せ!」


《閃光の雨》


 ディアナによる精霊術、閃光の雨がレッドワイバーンに降りかかる。

光の矢が無数に空から降ってくるため、閃光の雨と呼ばれている。


 精霊術の中でもかなり、高位のものなので使える者は限られている。


 数秒で、その雨は降り止んだ。


「マスター、すまない。倒しきれなかった」

「いや、上等だよ。よくやってくれた」


 ヴィムはニヤリと口角を上げた。

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