第105話 明かされし過去

 屋敷に戻ると、ヴィムはリビングのソファーに体を預けていた。


「ヴィムさん、少しお話したいことがあるのですが、よろしいですか?」


 そこには、ハナが真剣な表情を浮浮かべていた。


「ああ、構わないよ」

「出来たら、ミサさんとディアナさんにも聞いて欲しいです」


 同じくリビングにいたミサとディアナに言った。


「大丈夫よ」

「我も構わんぞ」


 二人はハナの真剣な表情を見て頷く。


「少し長くなってしまうと思うのですが、私の過去についてです」


 そう前置きをしてハナはソファーに座り、ポツポツと話し始める。


 ハナは獣人の住む街に生まれた。

そこは獣人だけが住んでおり、人間や他の種族とは完全に隔離されていた。


 獣人は戦闘スキルに長けており、ハナもまた例外ではない。

父、母、祖父母と一緒に暮らしており、決して裕福というわけではないが、幸せだった。


 そして、父の働きが評価されて、獣人の街の領主へと大抜擢された。

そこで、ハナは“姫“と呼ばれていた。


 しかし、その三年後に獣人の街は人身売買組織の連中に襲撃された。


 もちろん、獣人たちも無抵抗のままやられたわけではない。

対抗し、戦闘をしたが、多勢に無勢ということもあり、戦闘スキルに長けた獣人でも敗北した。

間もなくして、炎に包まれた。

ハナは街が焼かれていく様子をただ見ていることしかできなかった。


 女は奴隷、男は労働力として多方面に売り飛ばされた。

人間以外の種族は高く売れるのだ。


「何だそれ、完全に違法じゃないか……」


 ヴィムの目に怒りと灯火が灯る。


「違法ということは隠されて奴隷商の元に流れたのだな」


 話を聞いていたディアナが言った。


「そうだろうな」

「酷いですね」


 ミサも少し表情が暗くなっている。


 違法に入手した奴隷だと分かっていた場合、奴隷商が厳しい処分を負う。

真っ当な奴隷商ならそんなことはしない。

違法ということは隠して、闇のルートから正規のルートへと流れたのだろう。

よくある話ではあっていけないが、よくある話だと聞く。


「ハナ、その組織の中心にいた男の顔は覚えているか?」

「男じゃありません」

「え?」

「その組織の中心にいたのは男ではなく、女です」


 ヴィムは先入観でその組織の人間は男だと思っていた。

しかし、女ときたらヴィムは少し心当たりがあった。


「そいつは、赤髪ロングでポニーテールで真っ黒の服を着たいたか?」

「そうです! ヴィムさん、知っているんですか?」

「ああ、俺もあいつには因縁がある」


 ヴィムの目が真っ黒に燃える。


「ハナ、仇を取りたいか?」

「え!?」

「今のハナならその力がある。過去の何も出来なかったハナじゃない」

「はい! 私、父や母の、街の皆んなの仇を取りたいです!」

「よく言ったな」


 正しいことの為に戦うことは罪ではない。

昔、ヴィムに魔術を仕込んでくれた師匠が言っていた。


 ヴィムの師匠、《異端の賢者》アーク・サンベルが。

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