第80話 魔法実験
王宮に行った帰り、俺は屋敷の書斎に籠っていた。
空間魔法についての文献を読む為である。
「やっぱり、そうだよね」
空間魔法は多くの場合、収納に使うものである。
俺が持っているマジックバッグも空間魔法で収納量が拡張されている。
しかし、それが一般的というだけで、空間と空間を繋ぐことも可能ではあるようだ。
それを大人が通れるような大きさまで作るのには相当な魔力が必要らしい。
魔力量については問題ないだろう。
俺が保有している魔力量には多少、自信がある。
「これなら、やってみる価値はありそうだな。明日にでも実験してみよう」
今日はもう日も暮れている。
明日、明るくなってから色々試してみようと思う。
「今日は寝るか」
俺は着替えてベッドに体を預けた。
♢
翌日、昼前には起き出した。
「早速やるか」
いつもの魔術師スタイルへと着替えると中庭へと向かった。
「空間と空間をつなげるようなイメージをして、場所は東の森でいいか」
魔法というのはイメージが大きな役割を占めている。
魔法の効果を正確にイメージすることによって発動状態が大きく左右するのだ。
「意外と難しいな……」
空間を繋げるのは例えヴィムであっても簡単なことではない。
小さなサイズから試しているのだが、中々思うようにはいかない。
「魔力がまだ少ないのか?」
ヴィムは魔力の質量を更に上げてみた。
「お、これは成功か……」
すると、ヴィムの顔の前に円形の空間魔法が発動した。
「確かに、東の森だな」
顔を突っ込んで当たりを確認すると、そこは確かに見慣れた東の森で間違いなかった。
「しっかし、これは凄い魔力を使うな」
この規模でもヴィムの魔力は今までにないほどに消費されていた。
これを人の通れる規模まで拡大するとなると、更に大きな魔力が必要になることだろう。
いくら魔力はすぐ回復するとはいえ、一度に大量の魔力を使うのはリスクではある。
「まあ、一回くらいなら何とかなりそうかな」
大人が通れる規模にしても行きと帰りに展開するくらいなら何とかなりそうだ。
そこから色々探ってみて分かったことがある。
まず、空間を繋ぐにはその場所に実際に行ったことがあるというのが条件らしい。
人から聞いたりしただけではその場所を繋ぐことが出来ないみたいである。
「どっちにしろ、皇国には行かないといけないらしいな」
ヴィムはグリフィント皇国に立ち入ったことは無い。
つまりは空間を繋げるには一度グリフィントの皇都に出向く必要があるということだ。
ここまでで分かったことを纏めて陛下に報告すべく、ヴィムは王宮へと出向いた。
急な来訪であったにも関わらず陛下は会ってくれた。
「急にすみません。まず、分かったことを報告致します」
ヴィムは空間を繋げるには一度現地に赴く必要があることと、一度空間魔法を発動させたら次の発動までには少し時間を置かないと行けないことなどを伝えた。
「流石だな。この短時間でそこまでやってくるとは思わんかったわ」
陛下は少し口角を上げて行った。
「私としては是非ともお願いしたいんだが、頼めるか?」
「承知しました。屋敷に戻ったら準備を進めます」
「よろしく頼んだ。報酬は弾ませてもらうよ」
そこから、陛下と話し合って出発は一週間後ということで纏まった。
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