第56話 王宮図書室

 ヴィムは屋敷に帰ると書斎に籠って本を読み漁る。

この屋敷には魔術系の本や雑学の本がある程度揃えられている。


 ヴィムは迷宮に関する本を読み漁っていた。

最深部まで迷宮を攻略した時に手にした力である不老不死。

これは、ある種の呪いのような力である。


 この呪いのような力を解明することができるかもしれない。


「ダメかぁ」


 ヴィムは読み終わった本を閉じると、天井を眺めた。

すると、書斎の扉をノックする音が聞こえた。


「ヴィム様、よろしいでしょうか?」

「ああ。どうぞ」


 そう言うと、アーリアが紅茶のポットを持って入って来た。


「また、お勉強ですか? ヴィム様は帰って来たばかりですし、たまには休んでもいいんですよ」

「ありがとう。でも、ちゃんと寝てるから大丈夫だよ」


 ヴィムは何かをしていないと落ち着かない性分なのだ。

一日中何もしない日などは滅多にない。


「紅茶、ここにおいて置きますから、飲んでくださいね」

「うん、ありがとう。そういえばさ、ここより本が置いてある所ってどこかある?」


 この屋敷には数千の蔵書が存在する。

これは、全て陛下が集めてくれたものだ。


「そうですね。ここよりとなると、王宮の図書室くらいでしょうか。あそこには数万の蔵書があったはずです」

「それって、誰でも使えるの?」

「いえ、貴族以上の方ではないと使えないですが、ヴィム様なら使えると思いますよ。話を通しておきましょうか?」


 Sランク冒険者というのはそれなりの立場である。

何しろこの世界に数十人しかいないのだから。


「そうしてくれ」

「かしこまりました」



 ♢



 翌日、朝起きるとアーリアが声をかけて来た。


「ヴィム様、王宮の図書室の使用許可が下りました。いつでも使っていいとのことです」

「分かった。早速行ってみるよ。ありがとうな」


 ヴィムはそう言うと王宮へと向かった。


「こちらが、図書室でございます」


 王宮に到着すると、宮廷司書の人が案内してくれた。


「こちらには約5万冊の蔵書があります。あちらの部屋には2万冊ほどございます。お探しの本がございましたらお声掛けください。場所は把握しておりますので」

「ありがとうございます。そうさせてもらいます」


 さすがは王宮の図書室だ。

蔵書の数も凄い量である。


 ヴィムはとりあえず、迷宮に関する本や呪いについての本、魔法についての本を片っ端から読み漁った。


「ここにもないかぁ」


 特に新しい情報は見つけられなかった。

どかで読んだことのある情報ばかりである。


「勉強かね?」


 図書室の机で本を読んでいると、後ろから話しかけられた。


「陛下!」


 振り返るとそこには国王陛下が立っていた。

ヴィムは思わず立ち上がった。


「まあまあ、座ってくれ。勉強熱心で感心だな」


 そう言いながら陛下はヴィムの対面の椅子に腰掛けた。


「ちょっと気になることというか、知りたいことがありまして。まあ、なかなか辿り着けないんですけどね」


 ヴィムは苦笑いしながら言った。


「今は何を調べているんだ?」

「迷宮や呪いについてですかね。詳しい方とかご存知ありませんか?」

「そうだなぁ」


 陛下は顎に手を当てて考え始めた。


「ディオン伯爵なら知っているかもしれんな。彼は宮廷に欲しいほどの学者だからな」


 ディオン伯爵はバーロンの街の領主である。

ヴィムも一度あったことがある。


 陛下が宮廷に欲しいというくらいだから相当な博学なのだろう。


「ありがとうございます。近いうちにディオン伯爵を訪ねてみようかと思います」

「うむ。それで何か分かるといいな」


 ディオン伯爵も顔を出せば喜んで迎えてくれるだろう。


 そこから、ヴィムは興味のある本を数冊読んだら王宮を後にするのであった。

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