第23話 奴隷購入
ヴィムはガルヴァンの案内で1番奥の部屋へと遠された。
その部屋は先ほどまでとは少し様子が違っているように感じた。
不衛生と言ったら嘘になるが、先ほどまでのように衛生的とも言えない。
奴隷の女の子たちもどことなく体力がないように感じた。
「ここには、うちに来た時にはすでに治らない怪我や病気、呪いがかかった者がおります。他の奴隷たちと同じ扱いを
しておりますが、正直な所を申しますと、慈善事業に近いと思います」
国の許可を持って営業する奴隷商はこういった奴隷が回ってきても、断らずに受け入れるのだという。
逆に言えば、そういう奴隷商は信用に値するというわけである。
「ちょっと見せてもらいますね」
ヴィムはその中に居た奴隷の少女を眺めていった。
「この子は……」
その中に一人ヴィムの興味を引く少女が居た。
すごい敵意をこちらに向けているが、こういう女は嫌いじゃない。
ヴィムは色々ぶっ飛んでいるから、こういう判断を下せる訳であって、通常の思考を持っていたらそうはならないだろう。
「彼女は毒に侵されています。おそらく、このまま行くとそう長くは持たないでしょう」
確かに、彼女の皮膚はところどころ黒ずんでいる。
これは、かなり高位な毒に侵されている証拠である。
この毒を解毒できる人間は、世界広しと言えども、ヴィムのような高位な魔術を使える者に限定されるだろう。
「決めた。この子にする」
「はい?」
ガルヴァンは驚いた表情を浮かべていた。
「この子にする。聞こえなかったのか?」
「あの、今説明したように彼女は毒に侵されていて、そう長くは持たないと」
「毒なら解毒すればいい。それだけの話だ」
「はいぃ!?」
ガルヴァンの表情がさらに驚いたものに変化した。
「今、なんと?」
「解毒すればいいんだ」
「で、できるんですか?」
恐る恐るといった感じにガルヴァンは尋ねた。
「俺は出来ないことをやるというほど、無責任な男じゃないつもりだが」
「わ、分かりました。彼女を別室に連れて行きます」
ガルヴァンは他の職員に支持を出した。
「ヴィム様もこちらにどうぞ」
ガルヴァンに案内されて、ヴィムは応接間のようなところに通された。
そして、中央付近にあったソファーに腰を下ろす。
「これが、奴隷契約にあたっての書類になります。読まれたら、こちらにサインをお願いします」
ヴィムはその書類を受け取ると、一通り目を通すとペンでサインを入れた。
「これで大丈夫ですか?」
「問題ございません。こちらは私どもがお預かりし、控えをヴィム様にお渡しいたします」
ヴィムのサインを確認したガルヴァンは書類を受けとった。
「彼女が来たら奴隷契約の儀に移りましょう。ちなみに、奴隷紋と隷属の首輪はどちらになさいますか?」
「その二つは何か違いはあるんですか?」
ヴィムにはその二つの違いもよく分かっていなかった。
何しろ、奴隷を買うという経験が人生で始めてなのだ。
「基本的な効果は同じになります。しかし、周囲から見た時に隷属の首輪だと一目で奴隷だと判断することができますかね」
「なら、奴隷紋の方でお願いします」
ヴィムには奴隷を見せびらかすような趣味はないし、そんな首輪が付いていたら、戦闘の邪魔にもなりかねない。
「かしこまりました。では、そのように致します」
ガルヴァンと一通りの話が終わったタイミングで先ほどの少女が職員と共に入ってきた。
相変わらず、こちらに敵意をむき出しにしていた。
「まず、彼女の毒を解毒してもいいか?」
このままでは埒があかないとヴィムは判断した。
「構いませんが、本当にできるのですか?」
「出来ないことは言わないと言ったはずです」
ヴィムには絶対的にこの毒を解毒することができる自信があったのだ。
「では、始めますね」
彼女の解毒に向けて、ヴィムは魔法の準備を始めた。
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