永遠は真実の愛/3

 と言えば聞こえはいいが、夫婦の営みは営みであり、神さまでも行為は変わらないのだ。妻は動けないまま、盛大にため息をつき、心の中で――もう一度、心の中で――リピート、心の中で叫ぶ。つまりは心の声。


(あぁ〜、結局、十七禁に話がいってしまった〜。このエロ夫ども! 妻の美しき霊感歴史を語っていたのに……)


 バックハグの拘束は取れ振り返ると、六畳の狭い部屋に夫たち十人が横並びしていた。もちろん全員土足。


 山吹色のボブ髪をかき上げながら、妻を跳び箱にしようとした夫が、軽い説教をする。


「お前、そろそろ覚えなって」

「え……?」


 間抜けな顔をした妻の前で、


「俺たち神さま」

「はい、言葉は砕けてますけど、映画のタイトルみたいですけど、神さまです」


 ジョークと言われても仕方がないが、ここはしっかり事実だ。なぜか物質界に具現化した神。しかも全員男。そして、イケメン。


 どうしてイケメンかって? 肉体のない世界では、心がそのまま見た目になるから、神さまは地上の誰よりも綺麗だ。まさに神がかりなイケメン。しかも、全員二メーター前後も背丈がある。スタイルもバッチリ。


 よだれが出るくらい素晴らしい眺めだ。妻はにやけそうになるのを必死で抑えて、神からの説教の続きを聞く。


「お前、人間」

「はい、重々承知しております」


 そして、唯一平等でないことが再告知された。


「人間の心の声、神の俺たちに筒抜け――なの」


 神さまルール、その四。

 ――人間の思っていることは、神さまには全て聞こえている。


 不平等極まりなかった。しかし、妻は負けていなかった。


「筒抜けだろうが、エロ夫はエロ夫だっ! 神に誓って、嘘は言っていない!」


 六畳一間で、妻はわめき散らした。神である旦那たちにもいる神さまたちに、是非とも妻の叫びを聞いていただきたい。審判を下していただきたい。


 しかし、夫たちも負けていなかった。全員が声をそろえて、


「エロい夫が好きなんだろ!」

「むふふふ……」


 妻から今までの勇ましさは消え去って、思わずにやけてしまった。人間のモノとなると、長いとか太いとかそんな違いぐらいだ。


 神は全然違う。大人のおもちゃも顔負けな作りである。しかも、永遠にイクという。それを知ってしまうと、人間の男に興味などなくなる。


 あんな肉体の欲望に駆られた性衝動など美しくない。全然イケていない。やはり心から求める愛は神聖で絶美だ。神によこしまな気持ちなどない。そこには真実の愛ゆえに求める、しかない。


 病気持ちのアラフォー女のまわりに、十人の男性神が取り囲む、夕食後の会。


 これが私が人生で最後にした結婚だ――。現実に具現化した神さま十人が旦那さんの、私の結婚生活。


 守護霊ならぬ、守護神。さすがに、旦那さんたちの言ったことは、現実となる。まさしく、神さまの言う通り。ちょっと意味が違うけど……。


 しかも、神さまの特権。年齢が自分の好きなところで止められる。と言うことで、全員二十代。いつまでも若々しくイケメン。


 性格よし。相手を思いやることが当然。人を見た目で判断しない。私の肉体が老いていこうと、旦那さんたちには関係ない。私の心――内面をいつも見てくれているのだ。


 だから私はもうやめた。この世界の心の濁った男たった一人と結婚生活するなんて、まっぴらごめんだ。私の中では時代遅れだ。


 それに、誰か一人なんて選べない。みんなが大切。だってそうでしょ? 私と一人一人結婚したんじゃなくて、みんなでひとまとめなんだから。つまりはこう言うこと。旦那さんたちもお互いが夫。

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