第14話 牧場 2

皆羊だということにしたらここにいる全員が急に可愛く思えてきた。おそらくそんなに物わかりの良い人もいなければ居心地も良くはないんだろうけどそんなの気の持ちようでどうにでもなる。隣の芝生が青いなら自分の芝生も青くするだけ。青が苗字に入ってるから青がつくものは何でも好きだ。青は私のもの。空が青いうちは私の時間。空が青くない時間帯は苦手。なんとなく自分のテリトリーから外れた猫みたいに居心地が悪くなる。補導される年齢だったからかもしれないけど。夜は大人の時間って感じがする。皆何考えてるんだろうご飯食べてるしそんな怖いことや難しいことは考えてないよね。心配しすぎな気もしたが私は石橋を叩いてぶっ壊すタイプの人間だからしょうがないね。長年しみついた習慣は防衛本能だから簡単に剝がせないでしょ。どんな人かもわからないから警戒は必要だ。ラインで豹変する人もいるんだ。私も本性だしたら思ってたのと違ったとか二重人格とか言われそうだけど誰だって他人に見せたくはない一面があるはずだ。十数年も生きていたら嫌なことの一つや二つあるだろう。私の場合はもう多すぎて数えるのも面倒なんだけど。髪の毛の短い眼鏡の子が喋り始めたとき佳乃は思わず弁当を食べかけていた手を止めて聞き入ってしまいそうになった。それを同じく髪の短い後ろの席の子が見ていた。「ゆづはなー」と昔の幼馴染の女子みたいに名前を一人称にして喋り始めたのでちょっとビビった。なんだか小さい子みたいだけどそう思われてもいいのだろうか。冷たい印象を与えるような美人さんではあるけど、そんな風にして親しみを与えてくれなくてもドルオタだから色んな子がいて皆見た目どうりじゃないことくらい知ってるし推しと同じくらい可愛い子は皆佳乃の妹だと思っているからね。何かきもいかな。下心なんてなさすぎるくらいなんだけども。美人さんは私と同じで推理ものの有名アニメ、バレーボールのアニメ、おんなのこが変身するアニメ(小さい時みてた)なんかが好きみたいだったので顔をちらっと見てしまった。結局6個も同じものが好きだと判明したので黙りこくっていた私も流石に「わたしそれ好きだよおもしろいよね」くらいは言わないと後ろめたいなくらいの気分にはなっていた。可愛い子には弱いんだ、オタクだから。妹泣かせたらだめでしょ絶対。たぶん嫌われたり引かれたりしたら嫌だから無難なものを挙げただけだと思うので本性が掴めないし面倒な性格してるからこの人がもし百合だったとしても面倒じゃないなと思ってしまった。有り得ないけど。

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