第8話 ずれ

教室に入った瞬間品定めされているのが分かった。この閉じた空間ではここで見せる私が全てなのだ。女の子は厳しい。私は見た目だけで人を選別したりしないけど皆と育ち方が違うからな。幼馴染はいないし、わたしを守ってくれる絶対的な何かがあるわけでもない。何も言わずに机に座った。書いてないけどここは私の席だ。いつもそうだ。一番だから。後ろの席の人は可愛らしい背の低い子だった。誰からも愛されるであろう小さな体躯がちょこんと大きすぎる机の前にあったから小学生がきたらだめだよこんなところと言いかけ、ネクタイを確認して黙った。オタクだったりするのだろうか。私の横は背の高い女の子だった。教室に男子みたいな格好いい感じの女子がいるとは思ってたけど私の横だとは。体育会系ぽいから私からは話しかけないぞ。後ろの人はまなという名前らしい。黒猫っぽい名前。猫はとても好きだ。担任は最悪なことに年寄りの男だった。しかも専門科目の。真面目に授業受ける気ないのに。怒られそう。横の人と後ろの人は凸凹フレンズになれそうだな。二人ともオタクっぽいし。今の段階では成績順でクラスが分けられているだけなのでこの人とはお別れかも。今生の別れとかだったりして。ウケる。私は背が高くも低くもないのでちょうど真ん中になる。昔から私は仲良し三人組の真ん中だった。またか。本が好きそうな女子が全然いない。最初はどこかのグループに所属しなければならない。勝手がわからないうちは危険だからだ。頭も見たところ悪くなさそうだし妥協しよう。口が悪いから嫌われるかもしれないがグループを抜けるいい口実にはなる。こういうことにばかり頭を使うのであほになるのかな。女子の厳しい村社会で生き残るには知恵と共感力が必要だ。私は共感できることがすくないのでとにかく知恵を絞るしかない。それにしても皆可愛いな。告白する必要なさそう。陽キャでさえ可愛い。私が相対的にこけしに見える。特徴がない人はどんな人からも可愛がられるが私には残念な特徴がひとつあり、髪の毛がくせ毛なこと。とても目立つのだ。真っすぐな髪が欲しかった。巻かなくてもくるくるなので雨の日はやばい。目の茶色が琥珀くらい薄くて二重なところは気に入っているが誰もめったに気づかない。あいぷちは買わなくていいので楽だと思う。一長一短だ。まつ毛もそこそこ長い。つけまもいらない。うん化粧水くらいしかいらないよ。すっぴんは存在したのだ。明日弁当いるのか。聞いてないのに。声かけられるなら明日だな。

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