桜散る夢の通い路隠すほど
@mahumi
第1話
佳乃はシャーペンを回していた。横の席の男子の顔を見つめた。まつ毛が結構長い。女子みたいだ。色も白いし。肌が不健康に見えるほどだ。かっこいい。色が白いのはオタクか勉強している人だけなのだ。佳乃はどちらかと言えばオタクな方である。こんな見た目で眼鏡もレンズが分厚いやつに変えたばかりなので勉強ができる人だと思われる。辛い。成績は悪くはないのだがとびぬけて良くもない。偽ガリ勉といったところか。佳乃は趣味で小説を書いており、帰宅部なのでこの教室では身分が低かった。体育も苦手でありよくいる本好きの少女と思われがちだった。実際本を読んでばかりで数少ない友人と会話をしても早々に切り上げる。変わり者はスクールカーストの底辺にも所属していない。本を好きな女の子はこの教室にもう一人いたが佳乃と違いあまり読んでいないし、良く売れているミステリが好きなようだったから話はしていなかったが修学旅行で同じ部屋になっても居心地がよかった。同じものが好きだとなんだか言葉をかわしていなくても親しいような雰囲気になってしまい、話かける理由が見つからなかった。やっぱり卒業する前に何か言っておこうかと思ったがやめておいた。気を使いすぎな気もしたが佳乃には内緒にしておきたいことが幾つかあった。中学一年生の夏休みのことだった。ひさしぶりに友達ができて嬉しかった佳乃は一人脳内で盛り上がっていた。横断歩道を渡っているときカップルのように見える二人とすれ違った。顔を見ると同じクラスのピアノを弾く少女だった。可愛いというより美人で優しい人だったのだが私の幼馴染のバカに惚れてた割には次の人見つけるのが早いじゃないか、とがっかりしたような安心したような変な感じだった。佳乃は歌が上手い方なので彼女とは合唱のときから少し話す関係だった。やっぱり綺麗な人は普通なのだ。わたしが勝手に思っても問題ない。絶対に叶わないから。私には恋人をつくるより大事な目的があるのだから。告白してもいいけど自分から振ると決めていた。この時点では誰かに告白するなんてごめんだと考えていたのに。男でも女でも自分の邪魔をする人はすぐに自分から離れる。あまり親しくなりすぎないならしつこくされることもないだろう。今までと同じだ。でも、どこかでそんな自分を責めている自分がいた。今は責める声は小さいが高校に入るころには大きく変わっているだろう。友人キャラはダルいので壁の花を目指す。そう誓っていた。
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