第3話
「ねえ、人の家で何してんの?」
人の家であることをすっかり忘れて口論をしていたせいで、家主に存在がバレてしまったようだ。
「さささささささ坂下くん!!!!!」
突然、一緒に押し入れの中にいた女性が取り乱した。わかりやすくテンションが上がっている。
「この人あなたのストーカーみたいなんで、すぐに警察に通報した方がいいですよ?」
僕は坂下なる人物に忠告をしておいた。
「そういうあなたはなんでこの家にいるんですか?」
せっかく親切心で忠告してあげたのに、坂下は呆れた声で僕に攻撃の方向を変える。
「なんでって……」
「坂下くん! こいつ空き巣よ! 早く追い出しましょうよ」
今度は女性の方が水を得た魚のように、僕のことを糾弾してきた。
「そういうあんたもストーカーなんだろ? ていうかそもそも僕のことストーカーしてるっていうけど、あなた一体誰なんだよ?」
「え、あなたとこの人、面識ないんですか?」
思わず聞いてしまった。てっきり知り合いのイケメンを追いかけて、無断で家に潜んでいるものと思っていた。
「知らないよ、こんな人」
「ええ? じゃあどこで出会って、ストーカーし始めたんですか?」
僕の質問に、女性がうっとりとした目つきで答え始めた。
「この間、この家の前を歩いていた時に、縁側に座って、ネコみたいに無防備に欠伸をしてる坂下くんを見て一目惚れしちゃったの。それから私は四六時中坂下くんのことしか考えられなくなっちゃって、少しでも近くで坂下くんのことが見たくなって、気が付いたらここにいたのよ」
「結構ガチ目のストーカーじゃないですか……しかもそんなオフのタイミングに一目惚れって、どのタイミングで恋に落ちてるんですか!」
「でも恋ってそういうもんじゃない? 坂下くんのことを見ていたら、突然雷に打たれたような衝撃が降ってきたのよ!」
なんだか女性の話を聞いているうちに呆れて我に返ってくる。とりあえず、坂下にこの女性の仲間だと思われるのも嫌なので、今更ながら僕は常識人としてふるまうことにした。
「もう諦めて警察を呼びましょうよ。ここに来てもらって、お互いに潔く警察のお世話になりましょう」
その言葉はあくまでもストーカーの女性に向けて言ったつもりだった。
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