重影戦記

華麗なるサクラゴン

第1話 小さな不幸①

この物語は影に関わった者たちの戦いを描いた記録である。


「〜は一日中快晴の予報です。では、続いてニュースの時間です。昨夜、また例の通り魔が現れました。えー通り魔が現れた場所は日垣市の魚田でまだ犯人は逃走している模様で」


ピッ


「朝からクソみたいなニュース聞いちまった…魚田って隣町じゃねぇか。週明けでだりぃしよぉ目覚めも最悪だし…嫌な事がある日は学校遅れても良いっていう法律ぐらいあってもいいんじゃねぇか?」


テレビのリモコンを消し、愚痴を零しながら学校の制服に着替えている。

着替えが終わるとそのまま洗面台に行き、寝起きのわりには寝癖のついていない髪を眠い目をこすりつつ鏡とにらめっこして手入れを行った。


「あー遅刻するなこりゃ。1限目は確か…現文だった気がするから…ってんな事考えるのは後だ、出なきゃマジでやばい。」


ワックスに伸ばそうとした手は方向を変えヘアゴムを取りあげた。彼流のこだわりなのだろうが彼は普通の一高校生よりも髪は長く洗面台には沢山のブラシやワックス、トリートメントが置かれている。


「ま、遅刻するとわかってても朝の占いは見ないとなんか一日始まらないんだよな、そろそろ八時だし点けよっと。」

一度消したテレビを点けるため部屋に戻るため玄関にカバンを置きリモコンに向かい小走りをした。


「えー八時になりましたが緊急ニュースの続きです。様々な専門家の先生にお越しいただいています。まず犯人の特徴と似たような人物にあった時の対応策からいきましょう。犯人の特徴は白い服の上にk-」


ピッ


「黒コートにマスク、睨めつけるような目だろ!もういいんだよ、何回聞かされなくちゃならないんだクソッタレが…占いのために遅刻したのに、占いやらないで耳障りなニュース代わりに聞かされるなんてな。」


少年はぶつくさ言いながら家を出た。学校へ行くために歩き始めると空が曇りはじめポツポツと雨が降り始め、それに気づいた少年は手元を見た。

朝ぼーっと聞いていた天気予報は最後のほうの沖縄であり、快晴だと勘違いしていた少年は傘を持ち合わせていなかったがちゃんと聞いていてもあたふたして持たなかっただろう。


しかし、少年にとってそのことはクソほどどうでもよかった。少年は朝から色々とドタバタしていて多少疲れていてストレスも溜まっていたがなんとか抑えることができていた。

なぜなら、確実に遅刻するためコンビニやカフェなどに寄り道する時間ができたからである。この時間はストレスを押さえつけるいわば蓋のような役割をしており、彼の足は学校へ行く道から少し逸れた駅のほうに向かっていた。


はずだった。


「今日はよぉ、占いは見てねんだよ。ま、見れなかったってのが正しいな。ンなことはどうでもいいんだ、よくないけどいい。ともかく俺は分かっちまった、今日は占いは見てないけどよぉ」


歩くのをやめ、つぶやきながら体を駅側から学校側へと方向転換し立ち止まった。


そして


「今日の運勢は絶対最下位だってことは分かっちまったぜこんちくしょー!!!」

そう叫びながら学校へ走っていった。


日垣市の今日の天気は曇りのち晴れ、朝の降水確率は30%であり今降っている雨はただの通り雨であった。

だが少年は知らない、そう知らないのである。

今の天気のことも、これから起こることも。

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