可愛いがられ系ラブコメ主人公は、どうやら俺のヒロインらしい。 ──センパイ、ボクがヒロインですよっ?
もっちゃん
第1話 席替え
運命の強制力という言葉を知っているだろうか。ある未来へ向けて、運命せかいが残酷なまでの力を行使し、その未来を強制すること──だと俺は考えている。
仮にの話だが、運命の強制力が現実にあるとするならば、この教室内で行われる『席替え』にも当てはまるだろう。何故なら、クラス内に可愛がられ系ラブコメ主人と、誰もが認める複数人のヒロインが存在しているのだから。
主人公とヒロインの席は近くでなければいけない、という決まりでもあるかのように、入学してから一度も、主人公の周りをヒロイン達が離れたことはない。それの意味することは、ヒロイン達の内の誰かが、主人公様と結ばれるということだ。
つまり、何が言いたいのかというと
「今日から、よろしくね」
花が咲いたように微笑む姿を見て、心臓がドクッと、大きく跳ねる。
──何で、主人公様が隣なの!? 運命の強制力仕事しろ、おらぁっ!! ということである。
§§§§§§
俺こと
カースト制度が存在しないわけではない。が、他のクラス──どころか、全国的に見てもすごく緩いだろう。
その理由はとある人物だ。
──純真無垢。
──純情可憐。
──天真爛漫。
──天衣無縫。
──まるで、幼い子供のよう。
──見る者を癒す、少女のような笑み。
──ころころとよく変わる表情。
──初心うぶで、可憐で、無垢で、清純で。
──まるで、天使のよう。
これら全ての褒め言葉を使っても、表しきれない人間性。
なにより、そのあどけなさ。
美点を挙げればきりがない。
彼に、ヒロイン達が恋に落ちたのは、ある意味当然のことだった。
そんな可愛がられ系ラブコメ主人公様である男の娘
今だって、「また隣の席になりましょうね?」「次は、アタシが隣だよ」「近くなら……どこでも……いい」等と、ラブコメを繰り広げている。しかも、彼女達ハーレムのメインメンバーの他に、クラス中の女子や一部の男子達から恋愛的な意味での好意を持たれているときた。羨ましいかぎりである。……男の好意はいらんけど。
まあ、今回も雪野の周辺にヒロインズが集まるだろう。その弊害として、むさ苦しい男どもと隣になる確率大UPなのだが。それはもう仕方ないと諦めている。
「移動しろ」
俺の思考を遮るように、冷徹な声が響く。担任の教師だ。その声に、机を動かす騒がしい音が鳴り響く。
だが、俺は動かない。窓側最前列。何の因果か、そこが俺の定位置だ。さっきのクジも、この席の番号。小学生だった頃から変わらない。
さて、今回の隣は誰か。雪野とそのヒロインズは除外して。
二人の様子を見ていると、残念ながら違うようだ。田中は真ん中へ、四宮は窓側後方へと移動した。
せめて、気軽に話せる人でありますように。切に願う。理由は単純。どこの学校でもそうだと思うのだが、この学校では基本的に隣同士又は、四人班で様々な活動をする。それだけだ。ただ、“隣同士”というのは、でかい意味を持つ。苦手な奴だったりしたら、堪ったもんじゃない。
果たして、俺の祈りは神様に届いたようだ。
「今日から、よろしくね」
花が咲いたように微笑む姿を見て、心臓がドクッと、大きく跳ねる。
「あ、ああ、よろしく」
真っ先に除外した──普段は、ヒロイン達に囲まれている《彼》が、何故か隣にいた。
気軽に話し掛けれる。たしかに、その条件はクリアしている。人柄を見るなら。
「「「……………………」」」
教室中から視線を感じる。特に、ハーレムのメインメンバーからの視線が半端ない。とてつもない呪いが篭こもっていそうだ。
……視線だけで人を殺せるんじゃないか?
自分の心臓の事を考えると、話し掛けるのは大変そうだ。
話し掛けやすいのに、話し掛けにくい。なんと面倒な事だろう。
……はぁ、一つ言わせてくれ。
──何で、主人公様が隣なの!? 運命の強制力仕事しろ、おらぁっ!!
ラブコメの神様が気まぐれだという噂は本当だったようだ。
内心でラブコメの神様を罵倒している俺を見て、雪野がきょとんと、首を傾かしげている。悔しいけど──可愛かった。
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