3章 とある女神サマ、再降臨
女神サマが帰って来る
メイティーが姿を消してからはや一週間ちょい。
もし、あいつがいたら絶対に問題が起こっていたであろうGWも昨日で終わり。
今日からまた勉強生活か。
「……ねっむ……」
昨日は夜更かしをしたせいで、かなり眠い。
いやー、GW前に発売された最新作のゲームがあそこまで面白いとは……。
ドはまりして実家にも帰らず、GWはゲームで消化してしまった。
我ながらそれはどうなのよとは思うが、面白い物は面白いのだから仕方ない。
「よし、弁当完成っと」
もう前みたいな思いはもうしたくないから、ちゃんとバッグの中に入れて……。
メイティーに連れ出され、全てを忘れたあの日の昼は悲惨だった。
教科書も無ければ弁当も無い、仕方がないので購買に行ったら人・人・人。
義秋から、購買で買うのはお勧めしないと言われたが……まさか、あんな戦場だとは思いもしなかった。怒声罵声、一部では物をめぐっての乱闘。
流石にその中に入って行く勇気もないから、遠くで眺めて人だかりが無くなるのを待つ羽目に。
しかし、それが駄目だった。人が居なくなって中に入ると弁当もパンもおにぎりもなにもなし。
それを見た義秋が、部活後に食べようと思って買ってあったおにぎりを恵んでくれた。
あの時は本当に義秋が神様に見えたな……神は神でもどっかの女神とは大違いだ。
盗撮するし、勝手にメッセージのIDを登録していたし……そういや、あいつが帰ってからメッセージも来ていないな。天界に居ると圏外になるのかな?
「……まっいっか」
別に俺は関係ないし。
さっさと学校に行こっと。
※
「……」
商店街の空中に、虹色に光るドレスを着たピンク髪の神野さんが浮いている。
いや、もう神野さんと表現するのは神野さんに失礼だな。
あれは間違いなくポンコツ女神のメイティーだ。
『む~……』
メイティーが辺りをキョロキョロと見渡しているけど、あれは俺を探しているんだろうか。
だとすると、このまま商店街を進みたくない。
よし、ここは少し回り道をして別の道から学校に行くとしよう。
『――あっ!』
うっ。
『見つけた! 遅かったじゃない』
メイティーが俺の目の前に降りてきた。
ちくしょう、やっぱり俺を探していたのか……もっと早く逃げればよかった。
『こっちは朝早くから待っていたのよ』
そんな事を言われても、俺はいつも通りの時間に出ているんだがな。
まぁいいや、言うとあれこれうるさいから流そう。
「はいはい、そうで……ん? 朝早くから待っていただって?」
『そうよ。というか、1週間ぶりに会ったんだから一言ないのかしら?』
それはおかしくないか?
こいつの趣味である盗撮で、俺が家から出るのは確認できるのに?
そもそも、俺の家は知っているから待ち伏せをすること自体がわからない。
どういう事だ? これも何かの作戦なのだろうか。
『もしも~し』
んー考えてもわからん。
変な作戦だとしたら困るし……仕方ない、聞いてみるか。
「なぁ何でここで待ち伏せをしていたんだ? 盗撮をすれば俺が家から出るのは確認できるし、家も知っているじゃないか」
『盗撮ですって!? ちょっと、変な事を言わないでよ! いつアタシが盗撮したって言うのよ!』
思いっきりしていただろう。
俺と会う前から見ていたくせにどの口が言うか。
『もう~1週間ぶりに出た言葉がそれ? ものすごく失礼なんですけど!』
ふくれっ面になってしまった。
くっ神野さんの顔だから、つい可愛いと思ってしまう自分が情けない。
「悪かった、言い過ぎたよ。謝るから」
『……はあ……許してあげる寛大なアタシに感謝しなさいよ。確認できなかったのは、お父様にスマホを取り上げられたから。で、持ったままお父様が出張に行ったから、どうしようもなかったの』
神様が出張って……。
あーでも10月は出雲に集まるというし、おかしなことじゃないか。
『あと、商店街に居たのは初心に戻って1からやり直そうと思ったからよ』
初心というが、動いていたのは初日の1日しか活動していないじゃないか。
それで初心っておかしいと思う。
『もう言いつけを破る事はしないわ! また1週間も檻に入れられたくないからね』
おいおい、檻に閉じ込められていたのかよ。
なるほどな……連絡をしてこなかったのも、姿を見せなかったのもそういう事があったからか。
『という訳で頑張るわよ! お~!!』
閉じ込められていた反動か、めちゃくちゃ気合の入れている。
余計に不安なんですけど……。
※
「……」
『ジ~……ふむふむ』
「……」
『ジ~……なるほど、なるほど』
メイティーの奴、学校についてからずっと神野さんにくっついてメモ帳に何かを書いているのがすごく気になる。
授業が始まってもジロジロと見ているし、おかげで気になって授業に全然集中出来ん。
『……ピンクの花柄っと……』
「ピッピンクの花柄!?」
それって神野さんの下――。
「ピンクの花柄がどうかしたのか? 種島」
「あっ……」
しまった、メイティーのとんでも発言でつい大声を出してしまった。
先生やクラス全員から注目されちゃっている。
「えーと……あははは……夢を見ていたようです……」
「……1限目から寝るなんて、GWで夜更かしをし過ぎていたんじゃないのか? シャキッとしなさい!」
「……すみません……」
《くすくすくす》
みんなに笑われている。
その中には神野さんも……これは恥ずかしすぎる。
――キーンコーンカーコーン
ナイスタイミング、授業終了のチャイムだ!
「それじゃあ、今日はここまで……号令」
「起立、気をつけ、礼」
さっさとメイティーを連れて行って、問いたださねば。
「――っ!」
あと、今は教室に居たくない!
『ん? ちょっと、なに手を掴んで……って、どこに連れて行く気よ! アタシにはまだ――』
問答無用!
※
「大丈夫そうだな」
体育館裏なら人はいないだろうと思って来たが、予想通り人影は無し。
さて……。
「神野さんにくっ付いて何をしていたんだ!」
『ただの観察よ。敵の情報をまとめようと思って』
何で神野さんが敵なんだよ。
いや、今はそこじゃないな。
「だからといって、変な所までメモをするなよ!」
『変な所? 何を言っているの』
自覚無し。
そりゃそうか、あればメモなんてしないか。
「その……下着……の事だよ……」
言っていて、こっちが恥ずかしいよ。
『下着?』
「誤魔化すな。ピンクの花柄……って言っていたじゃないか」
はっきりと聞いたんだからな。
『……それってシャーペンの事?』
「は? シャーペン?」
そういえば、神野さんの使っているシャーペンってピンクの花柄だったような。
え? もしかしなくても、これは俺の早とちり?
『ブッ! アッハハハハハハ!! なに? ピンクの花柄って聞いただけで、下着だと思ったの? 嘘でしょ!?』
ちくしょお!! 紛らわしんだよ!!
『まぁ思春期の男の子だものね~そう思っちゃうのも仕方ないと思うけど……ああ、それでさっきあんな大声を出したのね、理解したわ! アッハハハハハハハ!』
メイティーが笑い転げている。
くそ! こいつに笑われるのが、一番心に刺さる!!
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