クラスの冴えない女子が気になって仕方ない

天野すす

第1話 オレの嫁

 授業が終わった。教室から、生徒がそれぞれはけていく。それにも気づかず、オレらは、放課後の会話に盛りあがっていた。



「おい! 大翔ひろと昨日の見たかー?!」

「おーみたみた!」



 こいつは、野間大翔のまひろとオレの親友だ。そいでもってオレは、城田天満しろたてんま


 なに? 名前負けしてるって?

 まあ、今の時代、子供にカッコいい名前をつけたがる親なんて珍しくないだろ? うちの親もそうだったんだな。


 そんな事は置いといてだな。オレは、この篠瀬高校に通う、男子高校生。恋愛経験ゼロ、特にモテたこともない。ヒエラルキーで言えば中の下に棲息せいそくしている、か弱い生物である。



「くぅ〜!! 今回のもよかったなぁ〜! オレ100回くらいリピしてたわ」

「マジ、鬼リピじゃね?!! お前ヤベェな」



 そんなオレにも、癒しのひとつくらいある。


 それが、音楽だ。


 それも、いまYouTubeで人気の歌い手『アキノコノミ』にむちゃくちゃハマっている。彼女は、あんなに人気がありながらも、コメントも丁寧で、とにかく話し方が可愛い。


 声フェチの俺としては、それで、歌もうまい、とくれば、まさにドストライクだった。


 それなのに、極めつけは、生配信中に起こった、虫が飛んでくる、というハプニング。逃げまわって、涙目になったコノミを見て、守ってやりたい、とオレのココロは完全に射抜かれてしまった。


 動画では、仮面をつけて、顔を隠しているけど、その唄うピンクの唇や、顔形からみても、きっと可愛いに違いない!!

 


 あぁ、嫁にしたい……

 


「あーあ。もし、コノミみたいな子が身近にいたら、即アタックするのになぁ」

「あはは、人見知りのお前が? そんな事できるのか?」

「うるせーな」


 そんな事、わかってらぁ!

 でも、もし本当にいたら、見てるだけでもにやけてしまうんだろう。あぁ……コノミ。俺の嫁。生きてるうちに一度くらい会ってみたい。



 どんな匂いがするんだろう?


 抱き締めて、首筋に顔を埋めることを妄想すると、股間が、ピクッ、と反応した。


 やべっ


「そろそろ、部活いくかー?」

「おおっと! そうだな。行こうぜ」


 これ以上考えてたら完勃ちしてしまうじゃないか。


 耳もとでささやかれる、という妄想を打ち消しながら、俺は軽音部に行くべく立ち上がった。


「ちょっと、待って城田くん」


 教室を出ようとすると呼び止められる。オレは足を止めて振り返った。

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