第6話 当たり前
隣で何を考えているか、何をしたいかだって大体顔や表情を、見れば分かる。
それだけ見てきたし、一緒に過ごしてきたのだから。
まあ、最近はあまり一緒にいることはなくなったのだけれど。だけれどもふとした時に目で追ってしまう。何をしてるのかと。
家の前を用事で通ったり、何かにつけて姿を探してしまう。
探した所で特段何も起こるわけでもないのは自分でも理解している。
けれど、理解してたってどっかで期待している。
言葉を交わして、笑い合って隣で歩きたい。
まあ、そんなこんな今日も家の前を通るわけですよ。どんな些細な事でも知っていたい。
私の気持ちなんてさっぱりわかってないからムカつく。アンタなんかこっちを見る気もない。私の一方通行だ。たまーにこっちを見ているかと思って目が合ったりするとすぐに目線を下げられてしまう。
ほんの僅かな時間だったけれど、どきりと心臓が高鳴る。その瞬間が嬉しく感じるのだ。あー意識しているは私だけではないと、あんたも何かしら感じでいてくれれば、私にしてみればしてやったりだ。
本当にね。
2回目でもなんでも言うけど、私はアンタの事なら大概分かるよ。見てればね。だから時々アンタの目線の先が気に入らない。一瞬でこうも私は視界に入る機会はなくなってしまうんだろうかと。頭のなかでぐるぐると考えてしまう。今日もあんたの目線の先はあの人にむくんでしょうね。
こっちも見て欲しい。気にかけて欲しい。けど、見ないで欲しい。ぐちゃぐちゃと自分の感情が反比例してしまう。アンタの笑顔が、体温が感じる以前の私の場所に帰りたい。また、くだらないしょうもない話をして一緒に居てただ楽しんでいたい。本当にそれだけなのにね。
本当にそれだけ。私自身に言い聞かせるのだ。そうすれば冷めた自分が冷静に見てくれるおかげで平静に保てるのだから。
けどね、きっかけなんで直ぐにできてしまった。アンタは変わらずに当たり前のように声を掛けてくるなんてさ。話すことのなかった間の距離なんて他愛のないことであっけなく埋まってしまうものなのね。話すことが嬉しくて、側にいることが嬉しくてさ。
不覚にもチャンスが巡ってくるのは早かった。運命の神様とやらはいるんでしょうか。アンタの隣に座ってアンタの話を聴いて気付かれないようにアンタの顔をみる。
ちょっと近くで見ない間に大人っぽくなるもんだなと思う。
私のアンタの距離は大胆にも私から狭めていく。アンタは疑いもせずに椅子に腰かけてくる。一気に私とアンタの身体的距離は0㎝だ。アンタの声だったり、息遣いだったりすぐ近くで感じる。制服の肩や腕がぶつかって窮屈そうに座り直すアンタの横でアンタの体温を感じて心地良いと思う自分がいる。
あなたの言う一言一言で浮き沈みする私がいる。アンタも同じ事考えてたのかと思ったら急に気恥ずかしさを感じた。
これからもっと話す機会が増えてくればいいなと期待している私がいる。けど、これからは一緒にいる機会が学校にて増えるのだ。
様子をみながらアイツの様子を窺っていこう。
それまでは私の気持ちはしまっておこう。その方がいい。アンタの目線の先も気にしない。
見ない振りで決め込む。
あー気付きたくないこともあるよね。
本当にね。
―もう一人の当たり前。-
(2)
まあ、みんな仲良くいつまでもって無理なんかね。異性だり、同性
男と女だから?色々なんか不都合が生じるわけですか?俺にはよー分からない。いつも一緒にいてさ、家なんか大体同じ方向だから、一緒に帰ったり、普通なわけですよ。自分の中では。けどよー周りから見れば当たり前じゃないらしいんですよ。
これがまた。
周りからさ「仲いいね。」なんて言われても、まーずっと一緒にいるからなとあっさりと返すんだが、どうしても何かあるんじゃないかとうたがって疑ってくる。いやいや特段にないですよと。切り替えしても「またまた~。」なんて言われてしまう。とやかくそんな会話に面倒臭くなるんだよなぁと。俺の中での普通が普通じゃないのかと思ってしまう。まあ、どれも正解なんてないんだろうし、人によって【普通】なんて違うからなあと割り切っても色々詮索されるとやっぱり面倒だ。
3人でいるのが当たり前だったのよ。よく一緒にいるし、遊ぶしそれが俺らの【普通】なのよ。俺らって言っては見たけど、俺は少なくともそう思っている。最近は一緒に居ること減ったけどさ。
思春期になると周りじゅうあーだのこうだの色恋の話が多い。春だし暖かくなってきたからから色々思う事があるのかねと思考を巡らせても俺にとって優先順位は低いのだからしょうがない。
まあ、クラスも一緒になったんだからこれから話せる機会は増えるだろうし、あいつもぶつぶつずっと言ってたからちょうどいいだろう。けど、ぶつぶつ俺にいうくらいなら直接言えばいいのに。
まあ、これで落ち着くならいいけどさ。
お膳立てして話す機会も作ったし、これからちょくちょく自分でも話せるだろうしな。
俺も3人で入れるようになったのは嬉しいけどさ。
けど、いつから一緒にいなくなったんだけな。
とりあえず、まあいいか。
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