第3話:初日(2)

順調に朝のHRが進んでいき、授業が始まっていく。 僕は黒板に書かれた内容をノートの書き写していく。


 この席は窓からは遠いが、開けられている窓から暖かで爽やかな風が流れ込んでくる。窓からは外で体育の授業を行っているのか賑やかな声が聞こえてくる。


 窓から視線を外し、また正面を見つめる。僕の視界の先に入ったのは長い黒髪の少女、島崎唯だ。今さっき、肩より下にかかる髪が邪魔なのか左手で耳に髪を掛ける姿がとても魅力的で僕の視界を奪う。髪を掛ける際に見えそうで見えない首筋やうなじをどうしても目に付いてしまい、キラキラと僕の脳内に保存されてく。儚くて脆い人形みたいだ。


 何ともやましい考えを抱くものだと自分でも罪悪感憶える。だって僕は島崎唯と会話などまともにした事もない。「おはよう」程度の単語だったらほぼ無いに等しいが、『ある』と頑張って言い張っても会話とは言わないだろう。僕が一方的に知っているだけ。彼女にしてみれば知らぬも当然。それか舞の友達程度なのだろう。だって彼女は舞と同じ部活仲間なのだから。


 廊下や学食等ですれ違ったりして目で追っているのかは自分だけ。


 会話などまともにした事はないが、彼女の事を僕は『あの日』から気になっていて見てきたのだ。


 目線を下に落とし再度授業に集中して取り組む。


 これからも僕に彼女は気づくことなんてない。彼女の事を深く知る機会なんてない。


 だって僕は君のクラスの生徒の一人に過ぎないのだから。




(1)


 午前中の授業を無事終えて一息入れていると、後ろから大きい奴の視線を感じた。


「孝!!昼飯の時間だ。朝の約束忘れてないよな。」


「本当に裕也にもか?もう迷惑かけた舞だけじゃ駄目なのか。」


 不服そうに「約束だろう!!」と言った。


「分かったよ。」


 僕は教室内に舞がいないか周りを見渡す。


 左側の窓側に2~3人の女子と会話に夢中になっている。


 あの輪の中に割って入ることはなかなか勇気のいる行為だとにいつも思う。


 複数の同性がいる中に声を掛けるという行為は僕にとって苦痛でしかない。


 同性であれ、異性であれ、色々勘ぐられたりするのは大嫌いだ。あの空間が気持悪くてしょうがない。ある程度知りあった仲ならいいが、そういう場合ではないと苦手だ。


 僕が声を掛けようか思案している(まごまごしていただけだが)所に裕也や舞に声をかけてくれた。


「おーい、舞。孝が飯おごってやるって言ってるからお前も来いよ!!」


 右手を大きくぶんぶん振って舞にアピールをしている。


 裕也は周りの人に対して誰にも憶することなく平等に接している。こうやって僕は悩んでいると空気を読んで行っているのか、天然なのか分からないが


 助けてくれる。


 こういう所は本当に羨ましいと改めて思う。




「今行く。」


 舞は周りの友達にまたあとでね。と声をかけて小走りにこちらに向かってくる。


「じゃあ早く行こうよ!!早く行かないと混んじゃうしね。」


「それじゃ行くか。三人仲良く昼飯にしようぜ。」


「あんまり高いやつはやめてくれよ。」


「てか、三人で食べるの久しぶりじゃない。」


 3人で食事をするのは久しぶりだ。少し前はよく3人一緒に昼飯を食べたり、くだらない話をしながらよく帰っていた。しかしそれぞれ普段の生活に変化が出来ればそれらはなかなか適わなくなっておのずと機会は減ってくる。


 裕也とはしばしば話す事はあっても舞とは二人で話す事はあまりなかった。別に気まずい関係ではないが異性というだけでなかなか近寄り難い所はあった。


 舞は部活の仲間と話していたり、知り合いは多い。その輪の中に入って声を掛けれる程の勇気なんて持ち合わせてもいないし、自身が裕也のように社交的でもない。


 だから廊下であったり、すれ違った際は目で舞を追って見ていた。昔と雰囲気の違う彼女に。


 だが今は昔に戻ったように話しが出来ている。だからそれでいい。


 僕らは和気藹々と学食に足を進めた。




(2)


 学食に着いた僕らはそれぞれの役割分担だ。舞は席を取ってもらい、僕と裕也は食事を取りに向かった。


 舞に頼まれた「日替わり定食とデザート付き」と隣の大食漢の分。嬉しそうに券売機で食券を買ってニコニコと僕の右横に並んでいる。僕の財布は月始めかた痛手をおった。


 僕は舞の分の食券と自分の食券を食堂の職員に手渡す。


「おばちゃん!!御飯多めにお願い!」


「わかったよ。しょうがないね。」


 裕也は食券を渡しながらトレーを持って待っている。おかずと御飯盛られていくのを嬉しそうに眺めている。


 そういえば。と裕也は声を掛けてきた。


「そういえば。お前舞と今まで喋ってたのか?」


「なんで?」


「いや、話している所見たころあんまりないし。」


「話してなかったかな。クラスも違うし。お前を含めて話す事はよくあるけど、二人学校で話す事はあんまりなかったな。」


「あーそうなのか。だからかぁ。」


 だからとは何なのか分からず僕は聞き返した。


「だからって何だよ。」


「いやー。去年からお前と話す事なくなったってぼやいていたから。「あいつ何でなのー?」ってよく言ってたからさ。」


「お前と舞は同じクラスだったから話すだろうけど、俺は別のクラスだったし、喋らなくなるのも当たり前だろ。」


「だってクラス3クラスしかないじゃん。話したいと思えばいつでも行けるし。」


「クラスが少なくたって用事がなかったら会いに行ったり、話に言ったりしないだろ。」


 裕也は舞の声と仕草を真似て言った。


「「前は一緒に帰ってたのに急に話かけてこないし最悪!!」ってぷりぷりしてたぜ。」


 僕はその姿があまりにも似ていなくて思わず笑ってしまった。


「似てない。45点」


「こりゃ辛口評価だ。」


 食堂の職員から食事をプレートに乗せてもらい、僕らは舞の待つ席に向かった。


「お前はよく話してたのか。そのよく。」


「ああ、クラスは一緒だし、部活終わった後とか休憩中に会ったときとか?」


「そっか。」


 舞に気にされていたことは僕にとっては嬉しかった。気にかけていたのが僕だけではなかったから。


 二人にこうやって話す事が出来るのは嬉しい。昔のように戻ったみたいで。


 舞はこちらをみてテーブルを指さして見ている。


「まあ。別にいいんだけどさ。話したいって言ってるんだから声くらいかけてもいいと思うけどな。俺だったら声かけるけど。」


 今行くよーと舞に裕也は声を掛けてテーブルに向っていく。


 席に着いて二人は談笑し始めた。これから僕も混じりに向かう。二つ分のトレーを持って僕も二人の待つテーブルに足を運んだ。


 舞は僕の方を見て椅子をひいてくれた。


「お昼奢ってくれてありがとう。」


「いや、迷惑をかけたのは僕だし。朝から本当に申し訳ない。」


「大丈夫。もう気にしてないし。悪いのは大概こいつのせいだし。」


 反対側の席に座っている裕也を見た。


「俺の責任かぁ。まあいいじゃん。お昼奢って貰えたんだし。」


 舞は裕也を睨みつけながら言った。


「そういう問題じゃないでしょ。まあ、奢ってもらえるのは嬉しいけど。」


 僕の渡したトレーから満面笑みで「ごちそうになります。」と箸を手に持ち食べ始めた。


 僕は先程裕也が話した事を思い出す。「何で舞に話しかけなかったのか?」僕らは3人揃って【幼馴染】なのだと思う。一人でも欠けることがあればそれは幼馴染としては成立しないと僕は思っているだけなのかもしれない。このカテゴリーに含まれているから僕は安心で安全な空間で過ごすことが出来る。僕らは【幼馴染】なのだから。




 僕らは最近の話をする。舞と裕也はこれからの部活の話。夏に向けてや各々の試合や大会の話。


 未来に向けて僕らは白線の上を真っすぐに進み始めている。時折曲がったり、他者とぶつかったりしながら進んでいく。僕は周りの進み具合を僕のスタートラインから足を進めずに眺めて焦る。


 振り向かず先に進む人をの背中を見て僕は改めて思うのだ。




 僕はただただここにいるのがお似合いだと。




 楽しい会話はどんどん弾んでいく。舞はそういえばと僕に話を振ってきた。


「孝はHRの時に図書委員やるって手を上げてたけど去年もやってたよね。」


「うん。去年もやってたよ。去年はやる人はがいなかったから先生に頼まれてやってた。」


 もごもごと口を動かしながら「確かにやってた。」と話しだした裕也に舞は「口の中綺麗にしてから喋りなさいよ。」とぴしゃりと言うと。コップの水を一気に飲み干して詰め込んだ物を飲み込んでいく。


「舞クラス違うのによく知ってるな。俺は孝から聞いてけど。」


「私だって図書室くらい行くわよ。その時孝の姿をみてやってるんだーと。思っただけ。」


「へえ俺はあんまり行かないから聞くまで知らなかった。」


 関心したように裕也は舞を見た。僕も食事をしながら平然と答える。


「来てるのは知ってたけど。」


「えっ気づいてたの?。」


「友達と試験近くなると来たり、時々本借りに行くところ見たりしてたから。」


 驚いたように舞は僕を見つめてくる。さっきまでの表情とは打って変わって舞は少し表情を曇らせて控えめに僕に尋ねてくる。


「じゃあ、なんで声を掛けてくれなかったのよ。裕也にはちょこちょこ声掛けてたのに。」


 なんて返答して良いものか。


 ただ女子の間に入って行くのが嫌なだけです。それとも単に二人で話すことに抵抗があったから。


 こんなの僕の言い訳なのだから正直に話したことで舞を怒らせるか、嫌な気持ちにさせるだけではないかと言葉を選んでしまう。しかし、ここで返答しない事でさらにいい結果を望めないだろうことは重々承知している。


 口の中の物をゆっくりと流し込んで飲み込んでから僕は口を開いた。


「友達と勉強してるのに声なんて掛けたら申し訳ないしさ。それに、楽しそうにしてる所に入って言ったら邪魔だろうなと思って。」


「そんなことないし!!」


 大声で僕に叫ぶ。真っすぐに見つめてくる瞳が僕の目線をそらさないように捕まえて離さない。


 目を見開いて僕らを見つめている裕也が間に入って場を諫めようと口をわった。


「まあまあ、そんなに大声出すなって。こうやってみんなで飯食べてんだからいいだろ。舞も。これから毎日一緒だし。」


「ごめん。なんで話かけてくれないのかなって。無視されてたのかとも思ってたから。」


 消えそうな声で下を向きながら呟いている舞にうんうん、そっか。と大きく頷いて舞をみて裕也は


「舞ちゃんは孝君とお話したかったんですねぇ。おーよしよし。俺が話を聞いてやるから。何でも言ってごらん。」


「あんたなんかに言う事なんてないわよ!!」


「ひどっ!」


 僕らは三人で顔を見合せて一緒に笑いあう。気まずさは残るがこうやって笑い話にできる。やっぱり、【三人】は必要不可欠な関係だ。




 この後色々話をしながら僕らは昼休み終了のチャイムがなるまで笑いあった。一緒に過ごすことが出来なかった期間の穴を少しずつ埋めていく。


 昔空の箱の中に互いに大切な一つ一つおもちゃをしまった感覚を僕は思い出した。






(3)


 あっという間に学校での一日は終わろうとしていた。外はまだ明るく、部活に向かっていく生徒が大半で部室へと向かっていく。勿論、裕也も舞と「部活行ってくる。」別れを告げて教室を出ていった。


 僕もそろそろ家に帰ろうかと教室を出ようとしたときに担任の佐藤先生に声を掛けられた。


「櫻井、お前時間あるか。図書室の整理手伝ってくれないか。片付けなきゃいけない本があるんだ。」声を掛けられて特に用事もなかったので僕は先生の頼みを了承した。


「分かりました」と頷きながら返事をし、田中先生と共に図書館に向かった。


 田中先生の頼みとは春休み中に返却された図書の整理だ。


 前任の担当から頼まれていたが、なかなかやっている暇がなくてごめんね。…と申し訳なさそうに話していた。カウンターの上に山積みになっている本(60冊程)を一冊一冊を種類別・番号に分けて片付けて行かないといけない。


 僕を片付けに誘った当の本人は他の生徒に声を掛けられ「後で様子を見に来るから!!」と一言告げ鍵を僕に渡してさっさといなくなってしまった。自分から誘っておいて薄情だなぁと思うが文句を言ってもここにある本は片付いて行くわけでもないので早速目の前の本を手に取りテーブルの上に種類別に並べていく。


 様々なジャンルの本があり、これはなかなか片付けるのが難儀するとため息をつくが、手を止めずに作業を進めていく。自分が読んだ事のある本など見つけてしまうとどんな奴が読んでいるのか時折気になってしまい、図書カードをのぞき見をしてしまってなかなか作業が捗らない。


 しかし、ふと手に取った本のカードを見ると島崎唯の名前がふと目に入った。


 自分自身もこの本は借りたことがあり読んだことがある。カードの上の方に僕の名前が書いてあり、カードの終わりの部分に彼女の名前が書いてあった。整った字で読みやすい字だ。僕は名前の部分を指で撫でてみる。特にだからと言って何もないが、知らない所で同じ物を共有している事に親近感を覚える。彼女も読んだと言う事実を知っている自分の秘密が一つ増えた事が嬉しかった。


 カードを手に取り本に付けられている袋にカードを戻して僕は真面目に作業を続ける。


 暫くしてカウンターの上に積まれていた本は整理したので、後は本棚にしまう作業のみとなった。


 時計を見ると思いの他時間が経っていた為早く本を棚に戻してしまおうと手に取り、棚に向かった。


 すると扉がガラガラと開く音がしておそらく田中先生が作業を確認しに来たのだろうと思い、そのまま大きい声を出して「先生今本棚に戻しているのでもう少しで終わりです。先生も手伝ってくれませんかー?」と背中を向けた状態で話かけた。


 すると、「テーブルに乗ってる本を棚に戻せばいいの?」と返答があった。


「はい。もう種類別にしてあるので棚にしまってもらえれば大丈夫です!」と手を止めずに声だけ掛けた。


 テーブルの方からよいしょっと声がして僕の方に向かってくる。僕より少し離れたところで作業をし始めた先生に棚にしまいながら話かけた。


「先生来るまでにあらかた終っちゃいましたよ。先生今まで何やっていたんですか?」


「んー私も分からないかな。職員室で少し前に見たけど。」ここ届かないなーと呟きながら作業をしている。


 あれ?とふと田中先生の声ではないなと疑問が頭に浮かんだ。透き通るような声に僕は聞き覚えがある。


 顔を持ちあげて左横をみると見知った顔が見えた。


「ここ届かないんだけど、台か何かないかな?」


 僕の顔を大きな瞳が見ている。綺麗な曇りのない目だ。


 僕も大きく目を見開いて見つめ返す。僕の心臓はきゅっと縮まり、そのまま体中の血液が送られないで酸欠状態になりそうだ。


 息苦しさを感じて身体中から汗がどっと吹き出しそうになる。


 僕は持ってい本を落してドサッと足元に散らばした。時が僕の周りだけ止まった気がする。


 そうだ。あれは先生じゃない。


 彼女だ。島崎唯だ。


「本落としちゃったよ大丈夫?」


 僕は我に返って「大丈夫です!!全然元気です!!」


「違うよ。櫻井君じゃないよ。本のほうだよ。」可笑しいのか、楽しそうに笑っている。


「そうだよね!!」落ちた本に傷がないか確認して棚にしまう。


 突然の島崎さんの訪問に頭の処理が追い付かない。取り合えず、早く手元の本を片付けて彼女の届かない本をしまわないと。


 彼女に恐る恐る近づいて手を伸ばして震える声で彼女に話しかけた。


「島崎さん。その本貸して僕がしまうから。」


 島崎さんは「ありがとう。」と僕に本を差し出してくる。


 僕は彼女の手に手を伸ばし、本を受け取った。その際に思わず接触してしまった手が暖かい。


 僕の神経が触れた部分に現在集中している。


 手を伸ばして目的の場所に本を戻す。


 左隣には彼女がいて彼女は僕から避けることなく傍らで見ている。


「簡単に届くんだね。私背伸びしても届くか届かないくらいなのに。」


「お役に立てて光栄です。」あまり目を合わせないように震える声で返事をした。


「こちらこそ。なーんてね。ありがとう。手伝う所か手伝ってもらって。」


 僕は何故かこのやり取りが可笑しくて笑ってしまった。


 彼女も僕を見てつられてしまったのか一緒に笑っている。


 僕は緊張していた身体の力が抜けてききた。彼女は僕に話かけてこれからの作業の手伝いをしてくれると申し出てくれた。


「あそこの本をしまえばいいんでしょう。早くやっちゃおう。」


「うん。けど時間大丈夫?」


「今日は部活っていうより新入生勧誘だから。早く終わったんだ。」


「ありがとう。」


「いいよ。同じクラスのよしみでしょ。」


 ふっくらとした唇から見える歯並びの良い歯が見える。魅力的な唇から語られる言葉言葉一つが嬉しくて、今僕の足は宙ぶらりんで地に足に着いていない。


 けれど、僕の想像していた島崎唯とは違くとても話しやすかった。


 僕は彼女とこの作業を通して距離が近づいたと(物理的にはまだだが)思った。


 彼女の好きな本や僕の好きな本の話をしたりした。


 以外にも彼女は文学少女のようでたくさん本を読んでいる。欲しくなると手元に置いておきたくですぐ買ってしまう。案外僕らの共通点となりゆるものがあるんだと知れた。短い時間だったけれど、僕には何時間にも感じられる程であり、満たされた時間であった。


 作業が一通り終わり僕は彼女にお礼を言った。


「今日はありがとう。おかげ様で早く終わったよ。」


「どういたしまして。私も櫻井君と話せて楽しかったし。」


「えっ。それってどういう…。」


 えっとね。と少し考えるように「よく、舞から佐藤君や櫻井君の話は聞いてたから。どんな人なのかなって思ってて。」


 舞め、余計な事を言ってなければいいのだがと心の中で舌打ちをした。


「別に変な事なんか聞いてないよ。」悟ったように弁解されている。


「いや、大丈夫だよ。全然。」内心はもうひやひや物だけれども。


 僕は彼女に今日のお礼をしたいと申し出た。彼女は「いいよ。」と言ったが是非にでもしたいですと強調をしながら僕からお願いした。


 少し悩んでいたが、僕に向かってじゃあとおずおずと話した。


「今日この後時間ある?」


「あるよ。何時間でも大丈夫!!」




「じゃあ今日一緒に帰らない?私電車だから。その時にお願いを話してもいいかな。」




 僕はうんうんと頷いて彼女に返事をした。


君とならどこまでも行きましょう!!


「それじゃ下駄箱の所で待ち合わせね。ちょっと荷物教室に取りに行きたいから。」


 また後でね。と彼女は手を振ってその場を立ち去った。僕も手を振り返す。


 先程から緩み切った顔はだらしないだろう。けれどまさか彼女とこんなにもお近づきになれるなんてそれに、今日放課後一緒に帰れるなんて最高の新学期!!




 僕は急いで図書室に鍵をかけ職員室に走って向かう。




 今日はなんていい日なんだろう!!


 もう僕は人生で一番の絶頂期に違いない!!と確信した。




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