掌編小説・『ハロウィン』

夢美瑠瑠

掌編小説・『ハロウィン』



掌編小説・『ハロウィン』



 世界でも多分有数の繁華街である、「渋谷」の喧騒は、最高潮に達していた。

 今日は、10月31日で、万聖節のイヴ、すなわちハロウィンである。

 もう恒例となっている、仮装行列の大挙している群衆の波が、街全体にうねっている感じだった。

 魔女や、カボチャ、ゾンビ、アニメのキャラ、その他およそファンタジーゲームとかに登場するキャラクターは勢ぞろいしている感じだった。


 愛は、女子大生で、ハロウィンの仮装に参加するのは初めてで、「ゴーストバスターズ」の衣装を着て、友達4,5人と歩いていた。

 ゴーストばかりの中を「バスターズ」が混じっているというジョークがウケるかと思ったのだ。

「ゴーストバスターズか!よおし勝負してやる!おれをやっつけてみろ!」

と、酔っ払った死神が喧嘩を売ってきた。

「許さないわよ!」といって、愛が用意していた煙を噴射するおもちゃの銃を「バーン!」と言って攻撃すると、「やられたー」と言って死神はあっさり退散した。


 そうやって大笑いしているうちに、宴も酣となっていって、群衆は入り乱れて、酔っ払いばかりになったみたいにカオスな夢幻境と化して、興奮の坩堝と化して人外魔境の様相を呈し始めた。

 そうして、その機に乗じて、ある邪悪な陰謀が進行し始めた。

 ファンタジーワールド、人間たちのイマジネーションが異次元に作用して、ちょうど怪異なブラックホールのように、想像上の妖怪変化だの、妖精とか、悪魔とか、邪神とか、そうしたあらゆる幻想的な存在が、跳梁跋扈している特殊な位相の空間が凝集されて、そこから、そうした怪物どもが次元の狭間からどっと押し寄せてきたのだ。


 実体のないそうした存在は無限数で、魂すらないような侵略者たちは悪意の塊で、できうれば、この世界すら乗っ取ろうという、そういう黒い野心を抱いていた。

 勿論誰もそのことに気づく人はいなくて、そうしてういう雪崩のような侵襲がなしうる千載一遇のチャンスは祝祭的な空間の熱狂が、エクスタシーのようなクライマックスに達している今だけだったのだ。


 烏合の衆の有象無象の中で、唯一、愛だけには、しかし特殊な超能力があった。

 それは邪悪で異質で破壊と災厄だけを意図している、そうした魔性の存在を感知して、的確にその正体を把握、分析して可視化して、尚且つ異世界へ葬り去るという、強烈なサイキックパワーだった。

 そんな能力はもちろん今までにはリリースしたことはなくて、祖父から受け継いだそうした能力について、ずば抜けている知的なインチュイーションによって、明晰な自覚を持っているだけだった。


 それゆえ愛は、すぐ誰よりも早く事態を理解して、「なんだかヒロイックファンタジーみたいねと、ちょっと笑いながら、ゴーストバスターズの衣装を脱ぎ捨てて、更に全裸になった。サイキックなパワーの解放には少しでも障害物が無い方がいいというのも知っていたのだ。


 白く輝くセクシーな肢体を惜しげもなくさらけ出し、鬼の表情になって、戦闘姿勢を取って、愛は絶叫した。「人類の敵!くらえー!!!!」


 強烈な青い光が轟いて、猛烈なトルネードと落雷のような、凄まじい爆裂の饗宴を繰り広げて、巻き起った阿鼻叫喚の混乱の渦の中で、聖的なパワーが炸裂して、異世界から襲来した怪物たちを瞬時にして跡形もなく消滅させた。


 人々はもちろん全員無事だった。


「ゴーストバスターズ・・・冗談から駒が出たってとこね」


 衣服をまといながら、愛は笑った。


 そうして、何事が起ったのかよく分かっていない人々の群れにまた、身を投じていった。



<終>(これは未完成稿です)

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掌編小説・『ハロウィン』 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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