第12話
「ラーメン、いっとくか……」
背広姿の青年はそう呟いた。しかし、『いっとくか』とは何だろうか? 岸辺さんしか思い当たらない。むしろ他にあるのか? まぁ、名前ではない。
うだる暑さのビジネス街、オフィスの連中は快適かもしれないが室外機から出ている熱風が青年を本気で殺しにかかってくる。
「お! 町中華発見」
その店はビジネス街のはずれにポツンと建っていた。二階建ての建築は遠めに見ると二階は恐らく住居。一九九〇年台の土地高騰で土地を転がすブローカーの甘い囁きにも耳を貸さず、堅実に商売に精を出していた感がある。
「酷暑なのに昼にラーメン、これは一つの戦いだわ」
待ちきれない青年は、人差し指でチョイとネクタイを緩めた。
「午後のことを考えればニンニクはご法度、トッピングは……」
生唾を飲み込む。お店に入る五秒前。扉をあけて
「すみませーん。炒飯を大盛りで!」
まぁ、汁物食べて背広が汚れたら大変だしね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます