第2話 ステータス

 アプリのアイコンは某RPGに出てくる青いスライムだ。デザイン丸パクリである。名称は異世界人アプリ。


(怪しい)


 開いたら取り返しがつかない事態に陥るんじゃないか。ていうか既によくわからないことになっているけども。もう、なるようになれ。


 スライムのアイコンに触れると画面が変わり、上部に各種メニュー、中央部にマップ、下部にHPとMPのゲージが表示された。


(ゲームかよ! MP⁉ 魔法⁉)

 そんな場合じゃないがちょっと興奮した。異世界転移が有りなら私が魔法使いでも有りな気がする。

 今はどちらのゲージも満タン。正にゲーム画面だ。


 マップの中央には温泉マーク。

(現在地?)

 温泉マークの周りは濃い緑一色だが、縮尺を変えると川や黄緑色の部分が現れ、広域にすると集落らしきマーク、更に広域にすると城のマークや海が現れた。


(日本の地図じゃない)

 旅行ガイドで見た温泉宿周辺の地図と違う。

(でもリアルの地図じゃなくて、RPGのマップなだけかも。……離れの外はリアルで森だったけど)


 いったんマップについて考えるのをやめ、気を取り直して各種メニューから『ステータス』を選択してみる。


 名前 :モモ (24歳 女性)

 職業 :─

 レベル:高め

 HP :高め

 MP :高め

 攻撃力:高め

 防御力:高め

 賢さ :普通

 器用さ:普通

 素早さ:普通

 運  :普通

 スキル:鑑定、アイテムボックス

     異世界言語翻訳

     異世界の温泉宿

 装備 :武器 ─

     防具 異世界の服一式

 所持金:0ゼニー


(何このふわっとしたステータス表示)

 神の手抜き感がすごい。

 レベルが既に高めなのは神のサービスだろうが、賢さから下が普通のままなのがもやっとする。

 …いや、素は普通以下なのを普通に上げてくれてる可能性もあるか。運が普通だったらこんなとこ来てないだろうし。


(所持金が0って)

 神のミスで異世界転移する羽目になった人間を無一文で放り出すとは、さすが裸の女に上着も貸さない男。女神に振られろ。


 スキルの詳細は出てこなかった。まあ、前の3つは定番のやつだろう。4つ目はこの離れのことかな。


 ステータスを閉じ、次にメニューから『持ち物』を選択する。


(空じゃん)

 スキルのアイテムボックスを使うとここに表示されるのだろうか。

 試しに、ティッシュを1枚『アイテムボックスに入れる』と念じる。するとティッシュは消え、画面の表示が

・ティッシュ(1枚)

 に変わった。取り出そうと思えば出てくる。すごーい、これは便利。


 次は、メニューの『温泉宿』を選択する。

 画面に並んでいるのは、ルームサービスのお食事、ランドリー、売店、貸し出し。

(こ、これは…!)


 お食事のメニューを開く。

(値段が日本円だ)

 だが高い、高過ぎる。


 ルームサービスはやめ、売店を開いてみる。

 ネット通販のように検索できたのでチョコレートを選び、カートに入れる。

 支払い画面に移ると、残高に私の貯金額が表示された。

(おおっ! 円で買い物できる⁉)


 注文を確定すると、目の前にチョコレートが出てきた。

「や、やった!」

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