育ち盛りの幼馴染は僕と性欲処理をする

@chrono_bbn

第1話 事実はエロゲよりも奇なり


2022年9月14日深夜23時51分。日本、都内某所--


いつもの学校の帰り道を帰路についた、いつもの自分の部屋。


いつもと違うのは、僕とは天地の差がある美少女が部屋にいるって事実。


通話の声がしんと静まり返った部屋に響く。


「あぁーそ、そ。ウケるよね。松センの机漁ったらコンドーム出てきてさ、今頃ホテルで焦ってる顔が見え見え。え?いや有効活用するじゃん?使い方って……んーと……風船とか?」


しゅる……する、キュッ。


衣擦れの音がする。

彼女は恋人に電話しながら、今日一日の出来事を報告し、二人きりの世界に身を投じながらーーー


「あっちょっと待って。ちゅ……んっ、れろ、んむぅ………………」


行為が終わったあとのゴムを口で器用に外して、うっとりした顔で後始末をしてくれる。ただの友達でしかない僕に。


「もう有効活用……しちゃった」


「もう切るね。また明日。愛してるよ…………ダーリン」


その気持ちに嘘は感じられない。彼女の気持ちが僕に向くことはないってわかってる。わかってるけれどーーー望まずにいられないのは、小さな星が生んだ男の性分か。


「くく、授業でも言ってたよね。人類は4万年かけて進化してきたんだってーーーでも変わらないものだってある」


だから少しくらい言い訳しても、いい筈だ。


「まーたわけのわかんないこといって……せっかくヤらせてあげたんだから、賢者になってないでもっとあたしも楽しませてよ。ーー気軽にさ」


気軽に。

そう彼女は言う。


「もうゴムないけど?」


「外に出せばいいでしょ。それか触ってくれるなら胸でもいいし。ほら……時間が惜しいし、お父さんたち、帰ってくるし。めんどいや脱ごうっと」


ブラにスカートにパンツにと、ポイポイ投げつけられる。


8年振りに再会した幼馴染は、約束も僕のこともすっかり忘れていたけど、無邪気さはあの日のまましっかり出るところは出てて、スレンダーながらもふっくらとした肉感の妖艶さを秘めていた。


肩までかかる長いブレンドの茶髪に、やる気のない細目。学生であるシンボルのリボンだけが外し忘れたのか残されている。


…………えっろいなぁ……


「見てるだけでおなかいっぱいになってんな。星降る夜より腰振る夜にしよーって……んっ……おーい。無意識に尻揉むな」


僕みたいな発散できない性欲を抱えている思春期の青年に、ほぼ全裸の肢体は毒すぎた。


「………………っ!」


「ちょ!がっつきすぎ……まぁ、いいけどさ」


それが昔から憧れ続けた女の子なら。修学旅行の水着姿を収めた写真で何度も妄想し、何度も頭の中で汚した対象なら。


「彼氏にメールだけ打たせて。挿れてていいから……」


「……くく、っ」


乾いた笑いを浮かべて。歪んだ欲望を豊満な身体にぶつけにいく。


「あっ、キスはダメね」


「だってあたし達ーーーただの友達だし」



そうだった。


彼女の名前は「風見 華凪」。学校で美人のグループに所属するカースト上位の人気者だ。

どうしてか僕のことを気にかけてくれる。恋愛感情でないことはハッキリしているけれど、それ以上にーーーああもうなんでもいいや。股間を撫でてくれるから撫で返す。それだけだ。






この物語の結末は決定している。








むかしむかし、ある小さな小さな孤児院に


お互いを想い合う少年と少女がいました。


少年は少女のために全力を尽くし、少女もまた少年に忠義を唱え、朧気に思える心とココロを重ね合い、小さく慎ましくも幸せな日々が続いていました。


そんな2人が引き離される時が来た。6年前のことだ。

里親に連れられて、遠くに行ってしまう彼女を引き留めるだけの力を持たなかった自分は弱く地べたを這い蹲るしかなかったように思える。


『僕を救って欲しいんだ』

『ずたずたを、途方に暮れる僕を、どうか忘れないで』

『大好きな景色を、忘れてしまう前に。どうせやらなかった後悔もやった汗臭さも、いつしか思い出して泣くことになるんだから。そんなのは嫌だ。こがねいろの君を、失いたくないよ……いかないで……』


少女は答える。


「もしもまた迎えに来てくれるなら」

「ついでに私も救ってもらって、いいですか」


そこで僕と彼女は、『はじめて』を預けあった。


だけどもだっけっどっ。


中学時代。

何もなし。

足取りすら掴めなかった。


高校。

次に会った彼女はーーー



全部忘れたように振る舞ってて、僕のことなんて目にも入ってなかった。


その刹那僕の口から漏れ出た言葉は「ポッピローナ?」無表情で呟き2拍遅れてムンクの叫びを体現した。


視線の先にいたのは、主人公ーーおそらく風見華凪という物語のヒーローだった。


それでも目で追って、黄昏の時を僕だけら忘れないように努めた。視界の隅には入るようにしたけど、


うん、無意味だった。


既に彼女の『はじめて』が喪われている事は、何となくわかっていたのに。

そうだ。僕以外の誰かが、既に彼女を救済して、ハッピーエンドを迎えたんだ。アフターに意味は無い。端役の端役に位置する僕の出番なんてハナから表舞台にはないんだから。


「それでも、その一端に触れるために、彼女に降りかかる火の粉だけは払おうと奮闘した。好きな食べ物を食堂の日替わり定食にしてもらえるよう食堂で働いたり、初詣のおみくじが大吉になるよう細工するため神職のお爺に弟子入りしたり。


気持ち悪い。でも才能のない僕が彼女の髪の毛一本でもつまめるのなら、全力全開を惜しまないのなんて当然だ」


なーんて。


まあ、上記のような努力してないんですね。正直言います。叶わない恋より叶う子で妥協。これすなわちこの世の真理。


気力もなく、夢も希望もなく一日の殆どを惰性に生きて、馬鹿なことに男同士で笑ってエロ雑誌コンビニで立ち読みして家でゲームして漫画読んで寝る。


それだけ。約束なんてそんなもん。現実は幼馴染なんて設定考慮してくれないし。


悪意のある言葉を見ないように、ネットもテレビも見ない。楽しいことだけして生きる。それが無気力系ダーク主人公の実態。んでーーーたまに彼女の水着姿を思い描いてベッドの上で果てる。この行為は数秒で終わる。手の届かない高嶺の花、それもかつては触れていた花を汚す倒錯感に溺れる。これが相当気持ちいいのなんの。


んで、7月6日。七夕を控えた自分にとってスーパーの特売商品が増えて閉店間際に7割引特化になるハイパーお得飯を買い漁りに出かけたついでのこと。


橋の上で死にそうな顔をして立っていた彼女を引き留めた時から、僕らの時間は再び動き出した。


ーーー否。僕だけの時間が。







「んあっ……余所見してんな……ほら……胸が寂しいじゃん……」


華凪は最早自分から腰を振り、ねだるように胸に手をあてがわせる。押し寄せる快感に、思考が揺り戻される。


「あ……ぁあ…………っ、ちゅ、む……」


マウストゥーマウスのキスはしないのに、身体のそこかしこを啄んでくれるから、征服感もバッチリで、名器の中の最上級に位置しているんじゃないかとさえ思える。いや華凪以外の女を知らないしなんとも言えないが。


「んんっ、あはぁ、そこ…………んっっ」


激しい動きに、魅惑の言葉。


「イきそーになってるじゃん…………ヘンタイ……がっしり腰掴んで……ゼッタイ離す気……ぁんっ!これっぽっ!ちも……ないし……」


目の前にある本能に従う。過去も未来もお構い無しにただ全身が赴くままに身を委ねる。彼女の身体が痙攣してきた。我慢する気もサラサラ無いようで。


「あ、イく」


最後の一滴まで搾り取らんとする収縮が、僕の倫理観と理性を粉々に吹き飛ばした。


どくん。どく、どく…………


この物語の結末は決まっている。


そう!!!ひとときの快楽を全身で味わって、責任持たずに気持ちよくなれるハナシ!後腐れのない性欲開花奇譚のはじまりはじまり!


遠慮なくぶちまけて、頭の中真っ白で、これはそういう物語だって神託を得たみたいな的な感じなやつ!







そして、時は2ヶ月前の橋の上に遡る。

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