ミニマリストには生きづらい世の中だ
水原麻以
ミニマリストには生きづらい世の中だ
骨身を削れとはこのことか。外出の機会を極力減らせという。ミニマリストにとっては死活問題だ。特に深夜、夜八時以降の居場所を奪われては行く所に困る。
断捨離に断捨離を重ねて身一つで渡り歩いて来た。本当にスーツケース一つも持たない。家も家族もない。自室すらない。効率の良い稼ぎ方を見つけたからだ。
仕事はIT関連の企業やコンサルティングをしている。最近は特に忙しい。クライアントとのやりとりはスマートフォン。書類の作成や打ち合わせはオンラインで済ます。
掌がオフィスだ。何も持たない。だいいち所有することに重要性を感じない。家賃と管理費と光熱費を払って寝るためだけに帰宅するぐらいなら最初からホテル住まいがいい。家財道具や什器という概念も無用だ。必要な時だけレンタルで済ます。接客は応接室付きのバーチャルオフィスを都度、スポットで借りている。衣服だってユニクロを使い捨ててる。スーツもレンタルだ。では何が財産かと言えば時間だ。
人間の寿命は有限で不定期だ。そして死だけが機会平等。それならば無形資産である残り時間を上手に運用した者勝ちだ。その為に時短サービスでコスパに見合うものは全て買っている。スタッフも常時接続の外注。所有する事はコストだ。そして時間と等号である。ただ自分の身だけは省略できない。忌々しい事に宿や飲食店に休業要請が出た。仕方なく賃貸物件を探したが県外者は感染予防を理由に断られた。「どこでもいい」
俺はスタッフに探させた。LINEで打ち合わせ中、背中に痛みを感じた。振り返ると殴られスマホを奪われた。「自粛要請聞いてねえのかよ」
若者とは言い難い年代の集団が金属バットを振り回している。ここで俺は唯一かつ致命的なミスに気付いた。安全まで断捨離すべきではなかったのだ。
ミニマリストには生きづらい世の中だ 水原麻以 @maimizuhara
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます