過度に干渉して何もやらせねえ
そんな感じで、俺はただ鉄を打ち、リーネとトーイには、麓の集落から回収したものの整理を改めて行ってもらってた。
日常的に使う諸々の大半はそれで確保できたと思う。特に、針仕事のための道具が確保できたのは大きかった。リーネは、だいたいの片付けが終わると服の繕いを始めた。言わなくても当たり前にやってくれるんだ。
トーイは、そんなリーネのしてることをじっと見てたと思ったら、いつの間にか今度は俺の仕事を見てた。まあ、男の子なだけに、針仕事よりはこっちの方が興味あるかな。
ただ、俺は、
「あんまり近付くなよ。熱いぞ」
と忠告した。すると火の粉が飛んでトーイの手に当たったらしく、
「っ!?」
慌てて手を振って距離を取ってた。まあそうやって実際に経験しながら学んでいくっていうのもあるだろう。なんにもやらせないってのもたぶん<過干渉>ってやつだと思う。
よくまあ、そういうのは<過保護>って言われるかもしれねえけど、俺の実感としちゃ<過保護>よりは<過干渉>なんだよな。やっぱり。保護することは悪くねえと思う。ただ、
『過度に干渉して何もやらせねえ』
ってのが問題なんだって感じるんだ。今だって、トーイが俺の仕事を見てることに干渉して、
『近付くな!』
とか怒鳴り散らしてたら経験できなかったことだしな。ただし、さっきのよりももっと近いところにいたら、敢えて手を止めてトーイの方に向き直って厳しい表情で、
『トーイ……』
みたいに声を掛けてたかもしれねえが。俺が声のトーンを落として名前を呼ぶだけで『これはまずい!』とトーイも感じてくれるらしい。
もっとも、やり過ぎるときっと慣れてしまって、効かなくなるだろう。こういうのはそれこそ『いざという時に』って感じに抑えておくのが肝だろうなって今は思う。
何でもかんでも頭ごなしに怒鳴りゃいいってもんでもないだろ。
「熱かっただろ? 水でよく冷やしとけ。そうすりゃそんなに痛くなくなる」
俺が告げると、
「トーイ! 大丈夫?」
リーネが手を止めてトーイの手を桶に汲んだ水に浸けてやってた。トーイも、
「……」
黙ったまま頷きつつもおとなしくその通りにしてる。
「ありがとう、リーネ」
俺は鉄を打ちながら彼女を労った。これが大事だと改めて思う。
『労うなら『ごめん』よりも『ありがとう』だよな。やっぱり……』
そんなことも頭をよぎる。なんかっちゃあ『ごめん』『ごめん』と、取り敢えず謝っときゃ許されるだろみたいに考えてそうなのが、そう言えば前世にもいたよなあ。
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