まぎれもねえ<ハズレ親>
前世の俺は、まぎれもねえ<ハズレ親>だ。何をどう言い訳しようがその事実は変えられねえ。俺は、その事実と向き合える人間になりたいんだよ。そのための努力をしてえ。
なのに、夢の中のリーネは、
『何もかも手遅れだ!!』
って言ってきた。それがたまらなく悲しかった。リーネにそんな風に言わせる俺自身を許せなかった。気付くと、俺は、自分が勤めてた会社の屋上に立ってた。
もう、何もかもが嫌になってた。馬鹿で愚かで糞野郎な俺自身も、リーネが俺を見限ったという事実も。
俺はもう、俺自身が嫌なんだ……
……
………
……と、屋上のフェンスをよじ登って超えたところで転げ落ちて屋上の縁に頭をぶつけて『落ちる』ってなった時に目が覚めた。
ビクッて体がなるヤツだ。なんて言ったっけかな。<ジャーキング>だったか? なんか他にも言い方があったような気がするが、まあいい。
しかし、『夢だ』と自覚してたはずなのになんでこんな結末なんだ? 夢の中で夢だと自覚してるヤツって<明晰夢>とか言って自分の好きな内容を見られたりするんじゃないのか? こんなバッドエンド、誰が見たいよ!?
ちくしょう。この手の話は本当に当てにならないな。信じ込める奴の気が知れねえ。
なんて思いながら今の自分の状態を確認する。外は……まだ暗そうだ。そして俺の前には、リーネとトーイ。すると、
「トニーさん……?」
俺の体がビクッてなったことでリーネの眠りも浅くなっちまったらしい。
「ごめん、起こしちまったか……大丈夫、ちょっと嫌な夢を見て目が覚めちまっただけだ……」
そう応えた俺の体を、リーネはそっと撫でてくれた。
「トニーさん……大丈夫ですよ……私がついてます……」
明らかに寝ぼけた様子だったが、もしかするとリーネ自身、夢の中のつもりだったかもしれないが、そんな風に言ってくれた。瞬間、ぐっとこみ上げるものがあって……
なんだよもう……リアルのリーネはこんなに優しいじゃねえか……それなのに俺はなんで夢の中でリーネにあんなこと言わせたんだ? 許さんぞ、俺……!
とは思いつつ、でも俺の接し方がマズいと、ホントのリーネもあの夢の中の彼女みたいになるかもしれない。たぶん、前世で、女房もゆかりもそうだったんだ……俺のあいつらへの態度がそのまま俺に返ってきただけだと思う。
こんな俺が<ハズレ親>じゃないって……? 頭ん中<お花畑>かよ。誰がどう考えたって<親ガチャ>に外れてんじゃねえか。ゆかりにとっちゃよ。
くそ……っ! マジでなんで前世の内にそれに気付けなかったかなあ……
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