バカは死んでも治らない

だいたいよお、俺は女房に丸投げだっただけで、そこまで酷い虐待とかしてなかった……いや、何度かゆかりが吹っ飛ぶくらい殴ったから、あれは余裕で<暴行罪>にあたるものだったか。単に事件化しなかっただけで。というレベルだったのは事実でも、そんな俺が、ゆかりがまともに育たなかったとしたらそのことについて、


『あいつの努力が足りねえからだ! 俺は悪くねえ!』


って言って、それで納得するか? 俺よりガチな虐待やってた親が、


『どうせ子供が努力すりゃいいことだろ。親は関係ねえ』


とか言ってて、納得するか? 正直、ネットで、


『自分の努力不足を親の所為にしてるだけだ』


とかホザいてた奴の中には少なからず<ハズレ親>がいたと思うぜ。自分のやらかしを誤魔化すためにな。てか、俺自身、そんな風に言ってた張本人の一人だからよ。


自分がそんなロクデナシだったってのに、それを自覚してるってのに、そういう自分を改めなかったら、それこそ、


『バカは死んでも治らない』


って話になるじゃねーか。それじゃダメだろ?


なんてことを考えつつ、今日も風呂に入る。二日続けて入れたが、さすがに湯が少なくなってきてた。こりゃもう明日は無理だな。


でも、リーネもトーイも、ホッとした様子だ。やっぱ、風呂はつええ。


「風呂、作ってよかったな」


俺が呟くと、


「そうですね。私、FURO、好きです♡」


リーネが笑顔になってくれた。湯は泥水でも、角は落したとはいえ石がごつごつしてても、それでも好きだと言ってくれるくらいには気に入ってもらえたのなら、作った甲斐は十分にあったよ。トーイも気に入ってくれたようだ。


と、日が暮れ始めた頃、急に一気に暗くなって、ザアと雨が降りだした。


「ありゃりゃ、これはいかん!」


風呂入ってたから俺達自身が濡れるのはいいとしても、服も靴も外に脱ぎっぱなしだったからな。


俺が三人の服も靴もひっかき集めて家に飛び込んだら、リーネとトーイも素っ裸で家に駆け込んできた。ただ足は泥だらけになっちまったけどな。


仕方ないから体を布で拭いて最後に足を拭く。せっかく風呂に入ったのにヤレヤレだ。今度はサンダルみたいなのを作ろう。濡れたままで履けるヤツをな。


こうして三人で素っ裸のまま、ホッとしたら、


「くくく……」


「くすくすくす…♡」


なんか笑えてきちまった。トーイはちょっと戸惑った様子だったが、でもまあ、怯えたりはしてない。


服も、村で回収してきたまた別のに着替えた。洗濯したのと合わせて雨で濡れたのも干しておく。こうやって干しておけるってのも実は贅沢なんだなって思った。


ちゃんと着替えがあるってのはな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る