風呂の完成を急ぐ
果実と木の実を採取してるリーネは俺が指示したとおり、すぐ近くの枝に布を括りつけて、一目見ただけで俺からも彼女がどこにいるか分かるので安心だ。
そうして彼女が作業してる間に、俺も風呂の完成を急ぐ。そしてまた夕暮れに差し掛かった頃、遂に、
「よぅし! こんなもんだろう!」
俺がそう声を上げると、
「FURO、できたんですか!?」
リーネが笑顔で戻ってきた。
「ああ、とは言え、ちゃんと使えるかどうかはまだこれからだけどな。まずは水を汲んでくる」
そう告げながら家に戻った俺に、
「水汲みでしたら、私が……!」
彼女はそう申し出てくれる。しかし、
「いや、風呂に水を溜めるにはさすがに何度も往復することになるからな。まずは俺がやってみる」
天秤棒に桶を吊り下げながら俺は応えた。その上で、
「リーネは夕食の用意を頼む」
と指示を与えると、
「はい!」
嬉しそうに笑顔で返事を。子供なんだからおとなしく家で待っててくれればいいんだが、家のために働くのが当たり前の環境で育ってきた彼女には、『遊んで待ってる』という感覚がないからな。この辺りは仕方ない。
だからきつすぎない仕事を与えてやるくらいが一番安心できるんだろう。
どうせ、集めてきた果実や木の実の分別も必要だし、その上で準備してくれてる間に行って来られると思う。それに、もうすぐ日も暮れる。一回往復するのが精一杯だな。
で、水を汲んできたんだが、やっぱり、桶いっぱいに水を汲んで運ぶのは、大人でもまあまあ骨が折れる。
いくら、一度に運ぶ水の量を半分にしてもらってるとは言え、これを毎日三往復くらいしてるというのは、なかなかに厳しい作業だと思う。それを文句も言わずにやってくれてるリーネには本当に頭が下がる。
ちゃんと感謝して労わないといけないなと改めて実感させられた。
で、桶二杯分の水を風呂に入れてみたが、
「少なっ!!」
ほとんど石の隙間に浸み込んでしまって、底の方にうっすらと茶色い水が溜まってるだけの状態に。
「こりゃあ、風呂に水を溜めるだけでもかなりの重労働だぞ……風呂で疲れをいやすために重労働をするってのは、ただのマッチポンプじゃねーか!」
まったく……こういう部分も<素人の浅はかさ>だよなあ……
できればもっと楽に水を用意できるようにしたいが、あの湧き水より上には水源もなさそうだし、こればっかりはな。
となると、あとは、雨水でも溜めておく小さな溜池みたいなのも作った方がいいだろうか……
つくづく、<便利な生活>ってやつは、それができるように力を尽くしてくれた人間がいてこそのものなんだって思い知らされるよ。
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