草刈り用の鎌
とかなんとか考えつつも、リーネが水汲みをしてる間に、鎌が砥ぎ上がった。そして柄を付けて、完成だ。それを持って外に出て、自分でまず試してみる。うん、悪くないと思う。草刈り鎌はこれまでにも何度か作ったことがあるしな。
そこに、水を汲んで戻ってきた彼女の姿が見えて、
「リーネ。草刈り用の鎌を作った。今度からこれを使ってくれ」
と告げた。
「あ、はい! ありがとうございます!」
彼女の笑顔が眩しい。俺自身にとっても、すごく励みになる。そうだ。家族のこういう表情が、仕事のモチベーションになるんだ。
ただ、それは、
<その笑顔を向けたいと思える相手>
であることが大事なんだ。仕事を真面目に頑張るなんてのは、最低限の<大前提>だ。実際にはその上に、『その笑顔を向けたいと思える』ことが必要だったんだ。なのに俺はそれに気付かず、仕事さえちゃんとしてれば労ってもらえるものだと思ってた。
実際にはそうじゃないことを、誰も教えてはくれなかった。教えてはくれなかったが、それに加えて、俺自身が気付こうとしてなかったというのもある。
今は、前世の記憶が戻ってそれを客観的に見られるようになったことで、自分自身が<反面教師>になってるけどな。情けないことに。
それでも、活かせるなら活かすさ。
で、出来たての鎌を持ってリーネが草刈りを始めたのを見送った次は、一昨日捕まえたウサギの皮を
毛も刈って集めて、冬用の上着を作る材料する。骨も炉で焼いて砕いて、庭の一部を畑にする時の肥料にする。いただいた命は、無駄にしない。
まずは、皮を鞣す。これも、子供の頃から散々やらされることだ。だから手順は分かってる。と言っても、前世で革のバッグを選んだ時に<タンニン鞣し>と<クロム鞣し>があるいう程度のことは知ったんだが、正直、ここでやってるのは非常に原始的なものだ。
鞣しの職人は<タンニン鞣し>という形で本格的にやってるらしいものの、各家でウサギとかの皮を使う場合は、
『口の中に放り込んでガムのようにひたすら噛む』
って方法だ。結局、これが一番手っ取り早い。品質はまああれだが、どうせ売り物にするわけでもないし、傷んだり腐ったりしたら捨てて新しいのを作るだけだから、長持ちさせる必要もない。ただの消耗品だ。
で、一昨日には実は噛んで鞣して洗って干してあったんだ。
リーネが。
見た目だと十歳にも満たない少女がウサギの毛を刈って皮をはいでそれを口に放り込んで噛んでってしたわけだ。正直、マニアでもドン引くかもしれないな。
だが、ここじゃ生活する上で必要なことだ。
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