龍聖 ーfrom Realー
彼方希弓
第1話 『みえる人』
別に、ファンタジーな物語を語ろうってんじゃない。
これは、俺のリアルな日常。
10年間一緒にいるバンドメンバーにも、まだ話してない話。
何から話そうか。
俺は、Realのボーカル、桜井龍聖。
俺は、みえる人。
『みる』
を表現するのは、どんな漢字なのだろう。
見る
観る
視る
診る
覧る
わからないけど。
まぁ、みえるんだ。
そう言うこと言うと、変な宗教と一緒にされちゃいそうだけど、俺には別に思想はない。
俺にできることは、大きく分けて3つ。
『みる』
『よむ』
『きく』
だ。
『みる』は、そのまま。
ただ、見るだけ。
その人のオーラのような物が見えて、どうゆう人なのか、何を考えているのか、これから何をしようとしているのかがわかる。
『よむ』は、あえて読もうとしなければ、読めない。
その人の過去の足跡を読むことができる。
他人のプライベートな部分を覗き見ることだから、あまりしない。
でも、読もうとするのなら、これは相手の器によって違うんだけど、手をかざすくらいで簡単に読める人、使っていた物や座っていた場所からの残映で読める人、実際に触れないと読めない人がいる。
『きく』は、神様からのお告げのようなもの。
これは、欲しい情報が手に入るというよりは、
一方的に与えられる情報。
言っちゃ悪いが、役にたたないものが多い。
この3つを組み合わせることで、ある程度の予知ができる。
これは、生まれ持った力。
櫻井家の人間なら、力の大小はあるにしろ、生まれた時から備わっている。
櫻井家の力は、一子相伝。
俺は、次男。
だから、生まれ持ったニュートラルの状態の力しかない。
次男の役目は、長男にもしものことがあった時の為のスペア。
第1子は、男子。
その子が10歳まで育ったら、第2子の男の子をもうける。
その子が7歳になったら、第3子の女の子をもうける。
何百年も続いている。例外なく、このように。
第1子は、17歳になった時に父親から、力を半分分けてもらう。
この部分が、一子相伝の部分。
俺には持てない力。
『みる』『よむ』『きく』以外に、『操る』『消す』も出来る。
櫻井家は代々、天皇家に仕えてきた家柄。
近年は、宮内庁の職を務めている。
平和な近年においては、天皇家を衛るというよりも、神々を御守りするという方にシフトチェンジされている。
立場的には、国家公務員。
各県へ赴任して、寺社仏閣を巡り、神々の声をきくのが仕事。
この仕事を、父と兄はしている。
次男は、ニュートラルな力を持っているだけで、それを仕事にすることはない。
兄のスペアとして、自由にしていればいい。
そんな立場には、なんの疑問も、不満もない。
どうせ、見られているのだから、隠しごとも、謀もできないけれど、俺は本当に自由な立場をありがたいと思っている。
兄は前に、俺のことをかわいそうだと言った。
一子相伝の力を与えられないことが、かわいそうだと。
でも、俺からしたら、そんな力は別にいらないし、自由に生きれることの方が幸せだと思っている。
だから、逆に、兄が一子相伝の力を引き継いでくれたことに感謝している。
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