第24話 『スキル』


本日24話と25話を同時更新しています。

――――――――――――――――――――――――――――――――



 先輩が俺のステータスを確認している間に、俺も先輩のステータスを見せてもらう。



五津木塔子


基礎能力値


筋力: 7

体力: 9

知力:15 

精神:14

敏捷:10

器用:11

運 :10 


――――――――――――


種族:人間:レベル1→2


HP:142/142→164/164

МP:208/208→245/245(+100)


筋力: 7→ 8 

体力: 9→10

知力:15→18

精神:14→16(+20)

敏捷:10→12

器用:11→13

運 :10→12


スキル

‐‐‐‐

同調1 言語翻訳1 魔力操作1



 以前見せてもらった時も思ったが、知力と精神の値がとんでもないな……。あと筋力が別の意味で凄い。


「……君のステータスは凄まじいな。これは、私が見てもいいものだったのか?」

「元々センパイには話そうと思ってたんすけど、言うタイミングが無くて。話が脱線するんで、ええと……明日の朝にでも説明します」

「何故そのタイミングなのかは気になるが、分かった」


 明日の朝食にドラゴン肉ご馳走する予定だからです。最初はステーキで食べて欲しいところだが、朝からステーキはないよな。食パンがあるのでサンドイッチにでもしよう。


「ステータスの値も気になるが、それより注目すべきは……」

「このスキル、同調ってやつっすよね」


 スキルはどれも気になるものばかりだが、他のスキルが取得理由や内容が推察できるのに対し、一番正体不明なスキルがこれだ。タブレットのスキルの部分を弄ってみても、スキルの詳細が説明されるような機能はなかったので、スキル内容は推測するしかない。


「他のスキルを見るに、この並び順はスキルの取得順になってますよね。同調以外のスキルは身に覚えのあるものばっかだし」

「しかし私も君も、この同調のスキルが一番最初にきている。異世界の夢に関連するスキルにも思えるが、それにしては取得のタイミングがおかしい」

「俺が最初にあの夢見たの、たぶん料理スキル取得した後だと思うんすよ。下手したら身体制御より後かも」


 あのアナウンスでは、確かスキルシステムの解放とか言ってた気がする。スキルレベルの上がり具合を見るに、スキル自体は以前から取得していたが、有効化されていない状態だったのだろう。アナウンス以降、意識せずとも最適な力加減ができるようになったのも、身体制御のスキルが有効化されたためだと推測できる。

 料理スキルがやたらと高いのは、ドラゴン肉を調理したせいだとしか思えない。素材によって取得できるスキル経験値みたいのが違うのなら、ドラゴン肉は絶対に経験値高いだろ。


「料理スキル獲得したの、恐らくマーケットボードが出現した当日の、たぶんステータスボードが出る前っす」

「私も普段からそれなりに料理はするが、スキルは出ていない。ということは、恐らくこのスキルはタブレット入手以降の経験によって獲得したものだと推測される。君の話も鑑みると、この同調というスキルはタブレット入手直後、それこそ同時に入手した可能性もあるな」

「この同調スキルが、いや、同調スキルを取得することになった要因が、タブレットが出現した原因でもあるかもしれない……」

「同調……何かに同調している?いや、もしや……」

「センパイ?大丈夫っすか?」


 急に黙り込み、眉間に皺を寄せて蟀谷を揉みだした先輩に声をかけると、目線だけで肯定が返ってきた。少し顔色が悪い。

 頭痛薬はあっただろうか?確か引っ越してきた時に置き薬は一通り揃えたと思うが……。

 雑多な小物を適当に突っ込んでいる引き出しから、なんとか薬を見つけ出して先輩に手渡す。

 いきなり体調が悪くなったように見えたが、先ほどの会話が原因か?

 先輩が最後に言っていたのは、俺たちが何かに同調しているのかという話だったか。いや、それを否定していた?俺たちが同調しているんじゃなく、別の可能性……同調、されている……?

 そこまで考えたところで、思考に靄がかかったように考えが纏まらなくなった。その先を無理矢理考えようとすると、頭がい骨を内側から殴られるような頭痛がしてくる。先ほどの先輩のように蟀谷を押さえていると、目の前に頭痛薬が差し出されたので有難く受け取って麦茶で飲み下した。これはツライ。バ〇ァリンじゃなくロキ〇ニン買っといてよかった。これがバファ〇ンなら頭痛に負けてた。

 暫し2人揃って頭痛と戦うはめになったが、次第に薬が効いてきたのか痛みが薄れてきた。よろよろと重い頭を持ちを上げ、先に復活していた先輩と顔を見合わせる。


「これはよくないな。この先が事態の核心だと確信……駄洒落じゃないぞ?」

「分かってますよ」

「んん、確信しているのに、これ以上考えることができない」

「明らかに妨害されてますよね」

「ああ、そしてそんなことができる存在は一つしか思いつかない」


 そこまで言って先輩は眉を顰める。恐らくまた思考に靄がかかりだしたのだろう。この話題をこれ以上続けるのは得策ではない。少なくとも、今は。


「この件についてはいったん棚上げしときましょ。とりあえず、同調スキルだけ経過を観察するかんじでどうっすか」

「ああ、スキルレベルが上がる前後の行動は記録しておこう。どういった状況でレベルが上がったのかは知っておきたい」


 事態の解決ないし収束を目指すなら、この件を掘り下げる必要があると感じるのだが、現状これ以上思考を進めるのは危険が大きすぎる。

 頭痛を堪えて思考できたとしても、明確な妨害があったのだ。妨害で済んでいるうちはいいが、相手は恐らく人知を超えた存在だ。こちらの存在ごと抹消されるなんてこともあり得る。

 唯一の光明は同調スキルが確信に迫る鍵になりそうということだが、今はこのスキルのレベルを上げるのを最優先に考えた方がいいか。でも、装備で精神を補強して再チャレンジすれば結構いいとこまでいけそうな気もすんだよな。いや、思考はできても抹消の危険は残ってるか。先輩がマーケットボード使えなくて良かった。あの人危険を承知で実行しそうだ。

 そんなことを考えながら先輩を見ると、視線が絡んだ。暫し見つめ合った後、お互いニコッと笑って視線を逸らす。

 ……ぜっっったい同じこと考えてたな、今。俺が先輩の考えを察したように、こちらの思考も読まれているだろう。一人で試すのも止めといたほうがいいな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る