第23話 『ステータス確認』



 スーパーで先輩が買ったのは大量の砂糖だった。俺にマーケットボードが出現した時の状況をなるべく忠実に再現して再チャレンジしたいらしく、店員に在庫状況を聞いて100袋豪快にまとめ買いしていた。折半したポーション代だと言って俺の弁当代も奢ってくれたので、ここは有難く受け取っておく。

 砂糖の箱は俺が2往復して部屋まで運んだ。まだ確認できていないが、レベルアップで多少ステータスは上がっているのだろうが、先輩の筋力値、元々の値が値だしな。先輩もゴミステ……って自分で言っちゃってたくらいだから。

 男の一人暮らしにしてはきちんと片付けている方だと思うので、先輩をそのまま部屋に案内すると、早速砂糖の箱を前にマーケットボードが出せないかどうか試し始めた。

 先輩がウンウン唸りながら試行錯誤しているので、その間に冷蔵庫に作り置きしてあった麦茶を二人分煎れてきた。ウーロン茶も紅茶も好きだが、夏はやっぱり麦茶だよな。冷蔵庫に行ったついでに、冷凍してあったドラゴン肉をひと包み冷蔵庫の方に移しておく。これの存在を話したら絶対先輩も食べたいって言うだろうしな。うちの安いレンジだと解凍機能が付いてないのですぐには食べられないが、今から自然解凍しとけば明日には食べられるようになっているだろう。

 俺の住んでいるワンルームは玄関から部屋までの廊下沿いに狭いキッチンスペースがあり、その反対側にバス・トイレ・洗濯機の水回りが纏まっている。廊下から風呂やトイレに向かうと、ドアの手前に洗面所も兼ねた空間があり、洗濯機もそこに置いてあるため脱衣所として利用しているのだが、廊下とこの空間を区切るドアがない。一人で暮らしている分には不便はないが、人が居る時利用するには防御力が低すぎる脱衣所なのだ。

 先輩は明日の朝には家に帰るので、風呂はいらないと言っていたが、俺も今日は止めといた方がいいな。事故が起こったらいけない。入るにしても『箱庭』が寝泊りできる状況で、先輩がそっちに泊まるの確定してからにしよう。 先輩、当然着替えも持ってきていないが、寝る時ワイシャツとクロップドパンツじゃ窮屈だよな。姪っ子が寝巻用に置いてったスウェットがあるので、それ貸せばいいか?というかあの人、『箱庭』の内容によっては徹夜で調査するつもりかもしれない。


「うーん、まだ何か足りないのか……。他にどんな要素がある?運?タイミング?外的要因か?」

「センパーイ、麦茶ここに置いときますよ」

「ん?ああ、すまん。いただこう」


 お盆に麦茶を乗せて戻ってくると、砂糖の箱は依然としてその場で山積みになったままだった。

 先輩に声をかけるとあっさりとこちらに寄って来たので、今回はこれで諦めたらしい。


「ダメそうっすか?」

「ああ、ダメだな。色々と試してはみたんだが、どうも足りない要因はこちらではなく、外側にありそうな気がしてきた」

「外側って……世界の?」

「世界の、だな。どうもこちらからの一方的なアプローチでは足りない気がする。以前話したパソコンとゲームの例で例えると、RPGとSLGを2窓しているタイミングでないとダメだ、とか」

「向こうとの何らかの繋がりが必要、ってことっすか」

「向こうとこちらの繋がり……、いや、間を繋げる存在?やはりこちらや異世界ではなく、外に居る何某かの存在の介入があったのか……?」


 話の途中で先輩がまたも一人で考え込んでしまったので、俺は買ってきた弁当を温めに行った。今日の一番の目的である『箱庭』の探索にも早く行きたいが、時間が時間なので先に夕飯を済ませた方がいいだろう。ステータスのことや大学で起こった事件のこと、色々と話したいこともあるので、食事を取りながら情報の擦り合わせもしたい。

 現実に意識が戻って来た先輩がテーブルを片付けてくれていたので、温め終わった弁当を持って行った


「マーケットボードは今すぐどうこう出来そうにないことが分かった。この砂糖は君のマーケットボードで売ってしまってくれ」

「タイミングの問題である可能性もあるんなら、取っておいて時間を空けてチャレンジしてみてもいいんじゃないっすか?」

「しかしこんな大量にあると邪魔だろう?それにこの指輪も買い取りたいしな。この砂糖の売却代金を君が受け取ってくれれば、他に欲しい物がある時に頼みやすい」

「ああ、それはあるっすね」

「何か面白そうなアイテムを見かけたら、売却代金から購入しておいてくれ」


 先輩がそう言うので、山積みになっていた砂糖は俺のマーケットボードで売却することにした。まあ、正直マーケットボードの出現条件に砂糖が絶対必要ということはないと思うので、試すなら他の物でもいいもんな。

 砂糖を8割方売り払った後だった、最後のひと箱を出品すると、普段なら売りに出した瞬間すぐさま購入され消えていた商品が、珍しく出品欄に残っていた。今までせっせと売りに出していたので、そろそろ需要が落ち着いてきたのかもしれない。

 買ってきた弁当を食べながら、お互いに人目を気にして後回しにしていたステータスの確認をする。

 改めて確認したステータスは、レベルアップの影響か、表示形式からして以前と変わっていた。



篠崎佑真


基礎能力値


筋力:36

体力:35 

知力:37

精神:34 

敏捷:36

器用:35 

運 :40 


――――――――――――


種族:人間:レベル1→2


HP:573/573→686/686(+140)

МP:572/572→680/680(+240)


筋力:36→43 

体力:35→42 

知力:37→44

精神:34→40(+20) 

敏捷:36→43

器用:35→42 

運 :40→48(+140) 


スキル

‐‐‐‐

同調3 料理5 身体制御2 開運招福2 魔力操作1



 色々と突っ込みたい所が多いのだが、先輩が弁当を食べながら自分のステータスを書き写しているので、俺も先輩に見せられるよう自分のステータスを紙に書き起こしていく。

 というか、精神値の上昇によるМPの上昇率がえぐいな。運のステータスだと1:1の割合でしか上がらないのに、精神の方は1:5の割合で上昇している。まあ、運の方はHPも上がってるんだが。それにしてもHP・МPへの影響に倍以上の差がある。ここら辺が、豪運装備の価格の安さの理由かもな。

 先輩が書き終わった紙をこちらに回してくれたので、俺も自分の分を先輩に渡して交換する。手渡したステータスを確認した先輩に、顔を二度見された。


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