難攻不落の美味しいダンジョン

深屋敷

第1話 プロローグ的な

 元始、世界はただ魔力が満ちていた。

 魔力の中から最初に光と闇が生まれた。

 光と闇は反発しながら魔力を引き付け、魔力に流れが生まれた。

 続けて流れの中から火と水と風と土が生まれ、残った魔力が固まって大地と海と空が形を成した。

 やがて、それぞれの属性を司る龍が生まれた。

 属性龍は世界を維持管理する役目を担い、彼等が役目を勤めるうちに、いつの間にか世界は様々な命に満ち溢れていた。

 龍達も命にならって子を成し、子は竜としてあまねく世界へ広がった。

 世界は安定し、魔力は調和を持って世界を満たした。

 世界は幸せだった。


 一番最初に異変に気が付いたのは、魔力の循環を担っていた龍。

 生き物が行う様々な活動で負の側に傾いた魔力を体内に取り込み、浄化して吐き出していた負龍と呼ばれる龍。

 魔力が負の側へ傾く速さと量が、人という存在が増加し、社会を築くのと比例するように増加していった。

 人にあって他の動物や竜には無い、明確な感情と欲望が、魔力をより負の側へ傾かせていた。

 

 やがて負の側へ傾いた魔力は負龍の浄化能力を越え、龍達は人を間引く為に負の魔力から魔物を生み出すダンジョンを各地に作った。 

 人はダンジョンが用意する宝物に引き付けられ、倒した魔物が落とす素材を求めてダンジョンに入り命を散らしたが、間引きは上手くいかない。

 魔物は人に倒される事で昇華されるが、昇華が起こるのはダンジョンの中だけ。    


 人の欲望に果てはなく、龍はダンジョンから魔物を溢れさせて直接多くの人を間引いたが負の魔力は増えるばかり。

 負の魔力を浄化し続ける負龍の体には、おりのように浄化しきれない負の魔力が蓄積されていく。

 

 やがて破綻は訪れる。


 負の魔力の増加は負龍の浄化能力も、ダンジョンの昇華能力も大きく越え、溢れた。

 溢れた負の魔力は負龍へと集まり、負龍を邪龍へと変えた。


 邪龍はその身から溢れる負の魔力を持って世界を滅びへと導こうとしたが、残った龍が力を合わせダンジョンの最下層に封じ込めた。


 邪龍はダンジョンの最下層で眠りに就くのだが、負龍としての負の魔力を集める力は未だ健在。

 邪龍が集める負の魔力は、時間を掛けてダンジョンから溢れ、ダンジョンは世界を浸食し始める。

 故に、このダンジョンはこう呼ばれる。


 終わりのダンジョン。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る