危険信号

真世中 深夜

第1話 危険信号

早朝、まだ空が白くなり出した時刻。僕は昼に職場で食べるパンを買うためにコンビニへと足を運んだ。そのコンビニは家からそう離れてはいないため特になにかを意識することはく、散歩するくらいの感覚で歩いた。この地域は田舎ではなかった。周囲が山や畑ばかりなんてことはなく、たまに田んぼがあるくらいだ。ではここは都会だろうか。まさか。高いビルなんてなくあるのはマンションくらい。けれど買い物などには困らない程度に色んなお店が点々とあり、夜にはきちんと暗くなり空に星が輝く。そんな田舎とも都会とも言えない地域だ。もしや東京に行けば、街中をドレスやタキシードで歩く人達がいたりするのだろうか。こんな頭の悪そうなことを考えているなんて、と思うとバカらしくなる。僕は目の前で信号が赤に変わったので立ち止まった。そしてまた、バカなことを考えてしまう。

──どうして止まることを示す信号は赤色なのだろうか。

きっと危険を連想させるからなのではないかと思う。例えば血、そして火。どちらも少し危ない雰囲気がある。いやしかしそれなら黒信号でもいいのではないか?とふと思う。だってみんな夜道は危険だって誰かしらに習ったはずだし、強盗や不審者がカラフルな服装をしているなんて聞いたことがない。いつだって彼らは黒づくめだ。

 そこまで考えたところで信号が青に変わった。変なことを考えるのはやめて早くコンビニに行こう。そうして僕は横断歩道を渡ろうとしたが、やめた。

──ドレス、赤。

横断歩道の向こう側に赤いドレスを着た女が立っている。

いつからここは東京になった。(東京にそんな人がいるかは知らない)まるで結婚式から逃げ出したかのようだったが、それなら白いドレスか白無垢であるはずだ。だとしたら彼女はなんだ。ヨーロッパからテレポートでもしたのだろうか。ああいけない、また悪癖が出ている。そもそも!僕の目の前に赤いドレスを着た女がいる!だがそれがどうした!そんなこと、僕にはなにも関係ないじゃあないか!

もういちいち小難しいことを考えるなんてやめだ。時間がいくらあっても足りない。これから僕は細かいことなど気にせずに器の広い男になるんだ。そう思い横断歩道に一歩踏み出した。堂々と。だんだん女と距離が近づき、すれ違う。その瞬間女が突然よろめいた。僕の肩とぶつかり思わず、「だいじょうぶですかっ」と声を発したがそれに対して赤いドレスの女は「すみません」と小声を発して走り去った。たしか僕とぶつかる前までは歩いていたはずだったが。なんだったのだろう。しかし僕はもう気にするのをやめたのだ。それから僕は予定通りコンビニに着いて、パンを選んでレジに並んだ。そして会計のために財布を出そうとしたときだった。財布がない。いや待てよスマホもないぞ!?家を出るときに確かにポケットに入れたはず……。そのあたりで気づいた。

心当たりは一つしかない。

やっぱり危険を示す信号は赤信号であるべきだ。

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