レオは2国を兼任する貴族
第115話 私設使用人の契約解除
公国というより第1公子からのご褒美?の話も落ち着いて、第3公女マルテッラの屋敷に訪問する。
「レオ、これからどうしたい?」
「え?いきなりどうされたのですか?」
「お兄様に言われてレオをコリピサ王国に送って数ヶ月、本当に襲撃とか危ないことは無かったの。私を邪魔に思っていた第2側室、第4公女が馬脚を露して、その裏で繋がっていたコリピサ王国ではクーデター。それも無事に政権交代がされたのならば、私の身をどうにかしようとする人が本当に居なくなったみたいね」
「それは本当に良かったです」
「そう?私もその数ヶ月の間に誕生日を迎えて11歳になったわ。でも、レオが居ない間ではあまり魔法も上達しなかったの」
「私はその間に覚えた新しい魔法を教科書に反映したものをお持ちしております。どうぞこれを活用ください」
「その教科書は本当に良くできているわよね。レオは魔法の研究の道が相応しいのかしらね」
「マルテッラ様、今日はどうされたのですか?」
「実はね、レオとの私設使用人契約を解除するように言われているの。護衛も不要になったし、私は成人に近づくのに異性のレオがいつまでも近くに居るのは、外聞も良くないって」
「そうですか……」
「この前のコリピサ王国の王太子妃の話、聞こえていたでしょ。第2側室たちは居なくなったけど、私がどこかに嫁入りする可能性がまた出てきたみたいなの。だから余計に、ね」
「では、こっそりとの魔法の家庭教師はどうなるのでしょうか?」
「この屋敷での使用人でなくなれば自然と解消でしょうね」
「そうですか……」
「そればかりね」
「申し訳ありません。マルテッラ様とお会いして1年半。共に誘拐された後、色々と教えて頂き導いて頂いたことを思い出していました……元々小さな町の単なる平民でした私なんかは、マルテッラ様とはもともとご縁が無いはずの者ですので」
「そうね……貸したことにしていた魔法の袋はそのまま餞別であげるわ。この屋敷の私物を引き上げなさいね」
「本当にお世話になりました。ありがとうございました」
レオは寂しく思いながらマルテッラと分かれ、与えられていた自室に魔導書の写本などを取りに向かう。
残されたマルテッラに、執事が声をかける。
「泣かれるぐらいならばそのまま継続すれば良かったのでは?」
「これ以上は、レオの将来の選択肢を無くしてしまうから……」
「お2人ともまだまだ11歳なのに、つらい世の中ですね」
続いて執事はレオの部屋に向かう。
「色々とご指導いただきまして本当にありがとうございました」
「公女様のことは?」
「もちろん色々とお考え頂いてのことと、理解しております。ただ、私が残ることで公女様の外聞に影響があることも事実だと思いますので」
ため息をついた執事に、家臣団のことは考えているか確認される。まだ具体的なことを考えていなかったレオにアドバイスを与えてくれる。
騎士爵のときに、年金が金貨10枚つまり銀貨1000枚であり、普通の職人日当が半銀貨から1銀貨であることを踏まえて2人ほど従者を雇用するのが最低限の体面確保と教わっていた。子爵の年金がミスリル貨1枚つまり金貨100枚ということはその10倍になる。武官の意味の戦闘用従者2名程度と違い、文官として家宰や執事のような者たちも雇用する必要があり、それらを踏まえた屋敷を構える必要がある、とのことである。厳密には、王国子爵で金貨100枚、公国準男爵で金貨20枚なので貰っている年金額では12倍という計算にもなることを念押しされる。情報社会である貴族間や耳の速い商人間でレオの話はすぐに広まるであろうから仕官希望が殺到するかもしれないので、検討は早めに、と。
それと悪ふざけの黒ローブ・黒仮面から始まり、最近は濃紺ローブに変わった変装は、護衛としての使用人契約が無くなれば自由にして良いとも補足される。
そのうち自分の子供たちも雇用して貰えるならば、これからも相談には乗るぞ、と冗談なのか分からない笑顔で門から送別される。
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