第16話 ゴブリン
大人たちの思惑とは関係なく、レオたち3人はホーンラビットの狩りを少し飽きつつも続けて、自分たちなりに武器や魔法の習熟を試行錯誤していた。そろそろ違った獲物を相手に訓練することもと相談しながら、冒険者ギルドで付近の魔物生息地帯などの情報も確認していた。
入り江まわりの港町から西方向にあるホーンラビットの生息する草原との間あたりの森は人間の生活圏に近くほぼ魔物も居ないが、その森も草原の南側、海に沿って西に行くほど魔物が生息しているらしい。手前の方はEランクのゴブリンだが奥に行くとDランクのオークなどになっていくとのこと。ホーンラビットのいる草原も西に進むにつれてDランクの魔猪(ワイルドボア)や魔狼が出現するらしい。この魔狼は通常は群れを組むがはぐれて1頭で居る限りは魔猪と同様にDランクでも下位とみなされるとのこと。
ゴブリンやオークになると武器を持つなど知恵があるので、獣ベースの魔物に比べて格段に戦いにくくなるから要注意とアドバイスを受ける。それに兎や猪と違い、人型であることから攻撃する際には慣れるまで抵抗感もあって不覚をとることもあるという。
「狙うならば、移動に時間がかかっても草原の奥の魔狼や魔猪だね」
と話し合い、今はホーンラビットという小さな獲物を狩っているが、大物になった場合もイメージしながら訓練を続けるのであった。
ちなみに、この小さな港町シラクイラの北側には山が続いており、港町の東側は山と海との間に街道、西側もその魔物の草原や森と山との間に街道がある場所である。そのため、地上では近隣に発展開発していく見込みがないが、入り江という地形のお陰で港としては何とか成り立っている街である。
まれに地引網で現代語ではない文字が刻まれた陶器などが見つかることから、近くに海に沈んだ古代遺跡があると噂はされているが、観光スポットとして成立はしていない。
そのため、軍事的にも政治的にも重要拠点とみなされていなく、小国が乱立する不穏な時代に街の外壁もそれほど頑丈なものでなくても問題なく平穏に過ごせる場所であった。
ある休日もいつものようにホーンラビットの狩りに草原に来ていた3人は、昼食も終わり午前中の狩りの成果を荷馬の背中に結び付けたところで、急な荷馬のいななきに驚く。
「どうしたの?」
「まだルネに懐いていないだけでは?」
と軽口も少しは言い合える関係になっていた3人ではあるが、いつまでも落ち着かないので岩場の上に立って周りを見渡す。
「南から子供が何人か来るみたい?」
「いや、服をほとんど着ていないし、肌の色が人間でない」
「ゴブリンか!?」
「俺たちを狙って来ているわけではないみたい?たくさん居るぞ!何かから逃げている?」
「そんなことより、俺たちも逃げるぞ」
と東の森の方に荷馬を連れて急いで駆け出す。
最短で森に向かうが、
「見つかった!?」
「間に合わない!」
と2体のゴブリンとの戦闘は回避不能になる。
「仕方ないから、まずは弓ね」
とホーンラビットへの対応と同様に、まずはルネの弓、レオの魔法、近接してからは皆で集中攻撃、にすることにする。
的が兎よりは大きいことから矢や≪水球≫を確実に当てることができ先制攻撃はできたが、手入れがされていなく刃こぼれが分かる片手剣を振りかぶってくる子供のような2体にどうしても戸惑ってしまう。それでもガスとレオは盾を前に突き出して、その横から片手剣で攻撃しつつ、ルネも持ち替えた槍で遠くから突き出すことで何とか攻撃することはできた。人型であることから弱点は胴体と頭と想像されるので、兎ほど奇抜な動きもないことから狙いやすい胴体に対して次々と攻撃を繰り返し何とか2体をしとめることはできた。何か理解できない言語を叫んでいた気もするが、それよりも自分たちの命の危険を感じたことでの防衛本能の方が先に立ち、無我夢中であった。
念のために心臓付近を切り開くと魔石が取り出せたので、やはり魔物であったといったん安心する。しかし、荷馬が再び鳴くことで再び周りを見渡し、森の方への避難を再開しようとするが、既に3体のゴブリンが接近している。
それからの3人は合間があると森へ移動しながら戦闘し、自分たちが何を叫んでいるのか分からないぐらい気合いを入れたりしながら、剣を振り回したり槍を突きだしたりを繰り返す。レオは遠目の敵には魔法、途中から腰布が上手く燃えたら?と思ったことで≪火球≫に変えた魔法攻撃をしつつ、接近すると盾と片手剣で対応する。魔法発動体を杖ではなく指輪にしたおかげで持ち替えが無くて良かったと一瞬だけ思う。もともと丸盾と片手剣だけのガスはそのままであるが、形ばかりに盾を叩いて自分に注意を向けさせるなどを織り交ぜている。ルネは矢を回収する間が無いため、すぐに尽きてしまい、途中からは短槍によるガスとレオの後ろから突きによる攻撃のみになった。
荷馬は逃げてしまうと自分だけゴブリンに追われると思っているのか、3人の少し後ろで震えている。
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