第13話 ギルドでの訓練
冒険者ギルドに集まったルネ、レオ、ガスであったが、もともと装備が違うので訓練の対象が違う。
すぐに分かれて、レオは今の戦闘スタイルの、短剣投擲の後の小盾(スモールシールド)と短剣について指導を相談する。以前に短剣の扱いを丁寧に教えてくれた女性が再度でてきて、まず短剣の扱いがどの程度上達したのかを素振りや投擲について見て貰う。
「あら、ちゃんと自主訓練していたのね。前より格段に上達しているわよ」
と褒めてくれる。きっと褒めて伸ばすタイプなんだと調子に乗らないように思うがそれでも嬉しいレオ。
「盾と組み合わせるならば、片手剣などもう少し大きい武器にならないと、盾が邪魔になるわよ。左手が遊ぶのが嫌ならば、私みたいに短剣の両手持ちにするのもありだけど、どうする?」
練習用木剣の片手剣を借りて盾と組み合わせて動かしてみると、ギルド職員の言う意味は良く理解できた。ロドが小盾と短剣の組合せをしていたが、盾はギルドで鍛えて貰っていたように、もともとその組合せをしていたわけでなく、きっとルネと自分を守るために不慣れな盾を練習して使ってくれたのだと、改めて理解した。
戦闘スタイルを見直すと言われて悩むレオであったが、盾があることの安心感はもう捨てることはできない。となると、短剣投擲は継続するにしても、盾と組み合わせるにはショートソードやブロードソードなどの片手剣ということになる。せっかく短剣の扱いを教えてくださったのにと申し訳なく思っていると、
「あら、若い段階で色々と試行錯誤するのは良いことよ。それに屋内など片手剣も装備できないときや隠し持つのには短剣の扱いは重要だしね」
と相変わらず暗殺者かと思われるような発言をする女性職員。
「じゃあ今日のところは短剣投擲の続きをしようか」
と、レオ所有の短剣による投擲について再指導をして貰う。
少し早めに切り上げて、まさに片手剣と盾の組合せであるはずのガスの様子を見に行く。
「足元が疎かになっているぞ!盾が小さいのだからな」
と木剣を持った職員が、ガスの隙が出来たところを次々と指摘しながらその場所を突いている。ガスは自前のショートソードとラウンドシールドを使っているのだが、男性職員に怪我を負わせるような感じではなく、まさに大人と子供のやり取りであった。それでも、その子供に見えるガスの動きですら、自分は及ばないのが分かる。
続いてルネの様子を見に行くと、弓ではなく短槍(ショートスピア)の訓練をしているようであった。
「ほら、そこは石突(いしづき)の方を上手く使う!刃のある穂だけにとらわれない」
と、槍全体を回転させて防御したり、穂先だけでなく地面に突き立てる方である石突を突き出したり、ただの木の棒であるはずの柄を打撃武器につかったり、様々な使い方を指導されていた。ホーンラビットを3人で相手するときは穂先での突きだけしか見ていなかったが、それ以外の使い方もルネはある程度習得していたようで、それに磨きをかける訓練のようであった。
昼休憩で3人が集まったときには充実した感じのあるガスとルネであったが、1人落ち込んでいるレオ。
「どうしたのよ?」
「実は……」
と、盾と短剣の組合せの問題点について説明する。じゃあ、と自身のショートソードをレオに預けて、振らせてくれるガス。最近、投擲メイン用の短剣で軽い物ではあるものの少しは筋力を使ってきたレオは、以前に武具屋で持ってみたときよりも扱えるようにはなっていた。
「昼からはうちの親方のところに行ってみるか」
とガスの誘いにのり、3人で向かう。親方や先輩職人に挨拶をした後に、ガスと同じショートソード、ブロードソード、レイピアなどいくつか振らせて貰うが、何となくショートソードがしっくりする。
「ガスの仲間なら、原価で譲ってやる」
とぶっきらぼうなりに優しい親方は、さらに
「手入れしてやるから、それぞれ出せ」
と言ってくれる。お前は横で見て勉強しろ、とガスを横に、ガスのショートソード、ルネのショートスピアの穂先、レオとルネの短剣3つの刃の手入れをしてくれる。
「だいたい大事に丁寧に使っているようだな。ん?これは大事にしているのではなく、全然使っていないな」
とルネの短剣にだけはつぶやいていた。
いったんお礼を言って退出したルネとレオだが、レオは急いで家に帰り父ディオと母アンにショートソードの費用についてお願いをする。
今まで消極的な行動ばかりであったレオが、最近は魔法のことを含めて積極的になってきたのが仲間たちのお陰と思っていた2人は、今度も能動的に武器の費用の相談であるから喜んで賛成するも、額があまりに安いことを言うのにも驚く。アンがレオを連れ立ってガスの親方の工房に行き、いつものガスとの付き合いと今回の破格な値段について御礼を言いながら支払いをする。合わせて、料理店での人気商品も手土産に差し出す。
その夜から、レオの庭での訓練は短剣から片手剣にかわるが、重さがかなり増えたことによる筋肉痛にもなる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます