第11話 魔力操作
お礼を言った後、自分の部屋に戻ったレオは1人興奮していた。
「あれが魔力操作なのか。回復魔法は相手の体の魔力を操って回復させると書いてあったが」
以前に冒険者ギルドにあった、魔法の基礎などの書物に書いてあったことである。
レオは先程感じた自分の体内の魔力の流れを思い出す。呼吸での空気でも血液でもない何かが体中にあることを感じられるようになった。それが意識をすると少しだけ移動させることができた気がする。ベッドに横になり、先ほどの回復魔法のことを思い出しながら同じように右腕に集めてくるように集中してみる。なかなか思うように動かせないだけでなく、ちょっと集中が途切れるとまた散ってしまう感じがした。
きっとこれが魔力操作なんだろうと思い、それから日々暇があれば練習をすることにした。だんだん慣れてくると、右腕だけでなく左腕や両足、指先など自由に集める場所を指定するだけでなく、右手左手それぞれに分けて集めることも出来るようになった。
そこまで来てロドに打ち明けることにした。
「師匠、魔力操作と思われることができるようになりました。魔法発動体の杖を貸して頂けないでしょうか」
「え?どういうことだ?何がきっかけだ?」
「先日の回復魔法のお陰だと思っていますが、これが本当に魔力操作なのか試させてください」
「うーん、わかった。ちょっと庭に出てやろう」
と杖を貸してくれる。
レオは魔導書の内容は十分に理解していたので、後は魔力操作による実戦だけである。ジェロの実演を見てイメージが分かる≪水生成≫について
「dedicare(デディカーレ)-decem(ディチャム)、conversion(コンバールショナ)-attribute(アッテリブート)-aqua(アクア)、aqua(アクア)-generate(ジェネラテ)」
と詠唱しながら試してみる。杖を伝って体の外に魔力が出た感じがする。再度唱えながら今度は水を強く意識して、その魔力を水属性に変えるところに注力すると、確かに霧のように何かが現れた。再度水筒の水のように水の塊を意識しながら唱えると、親指ほどの水量の水が発生し
「よし!」
と叫んでしまったときには地面に落ちた。
「やったじゃないか!」
とロドも叫び、後は練習をするだけだな、と頭を撫でられる。
その日の夕方、ロドはレオを連れて、裏道の怪しげな店に連れて行く。
「ここは何の店ですか?雑貨屋でもなさそうですが、いろんな種類のものがありますね」
「ここは魔道具屋だ。あの女性が店主だが、歳は聞くなよ」
と若く見えるきれいな女性をさす。
魔道具とは、使用者が魔法の発動をすることなく魔力による効果を得る道具である。魔力を込めると炎をまとう剣のような魔剣や、光り続ける光源のように生活を便利にするものなど色々とあるが、基本的に安いものはない。使用者の魔力を使用しないために、もしくは効力を上げるために魔石と併用する物もある。魔法の発動体も、魔法の効力を上げる魔道具である。
「ここら辺りにあるのが魔法発動体らしいから、好きな物を選べ。魔法使いになったレオへの贈り物だ」
「え!?ありがとうございます!」
「ほう新しい魔法使いさんか。おめでとう!どれでも試して良いからね」
ロドのような杖タイプが多かったが、他にも指輪タイプや魔導書タイプの物もあった。夢で見たのが短剣型だったので恐る恐る聞いてみる。
「短剣とか武器の形のもあるのですか?」
「たまにはあるけれど、武器だと何処ででも出して良いわけでないから、使える場所が限られるよ」
とアドバイスを貰う。
それぞれ手に持ってみたりはめてみたりして魔力操作を行って試してみたが、どれも使うことができた。売り物では無いから試すだけと渡された奥から持って来てくれた杖を試すと、非常に魔力の伝わり方が良い感じをうけた。発動補助の性能の良し悪しは材質にも依存するらしい。魔力操作が不慣れだと杖状の方が体から魔力を伝えて出すのがイメージしやすいという話もあるらしいが、レオはその問題は解決済みであった。ちなみに杖にも種類があり、肘から先ほどの短いワンド、身長ほどもある長いスタッフなどである。ロドが持っているのは木製のワンド型であった。
今は盾と短剣も使って戦闘しているので、そのままでも攻撃魔法を使えるように指輪型、突き出すのも右手が良いので右手薬指への指輪を最終的に選んだ。
家に帰ってからは、ロドに付き合って貰い、庭でその指輪を装備しての魔法練習に励むことにした。
何度も≪水生成≫を詠唱するが、目に見えるほどは水量も増えず効果のほどは分からない。ただ何度も唱えていると、走った後の息切れのように体がだるくなってきた。
「レオ、それは魔力切れだ。体力切れと同じで、時間と共に回復する。体力と同じように鍛えると魔力量は増えると言われているから、たくさん練習すると良いだろう。だが、今日はもう休め」
と言われてベッドに向かうことにした。
初めての魔法発動、そして魔法発動体の指輪の入手など興奮してなかなか寝付けなかったのは仕方ない。
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