第9話 冒険者仲間

 ルネは最初の狩りで入手した毛皮から製作した羊皮紙、傷だらけだったので縫い痕もあり本当の練習品でしかないものであるが、自分の作品を持って親のロドのところに持ってくる。

「父さん、見て。あの角兎の毛皮で作った羊皮紙よ」

「おおすごい。寺小屋の子供たちの練習用に貰っていいのか?」

「ダメよ!娘の記念すべき作品なんだから、宝物として残しておいて!」

「分かったよ」

「それより、次はいつ行けるの?私も少しは弓の練習をしたんだから」

「近接武器も練習して欲しいところだったが」

「そう言うと思って、冒険者ギルドで短槍(ショートスピア)の練習もしたのよ」

「ほう、それはすごい。じゃあ明日冒険者ギルドに行こうか。ちょっと約束もあってな」

「あら何かしら。楽しみね」

と、レオが横には居るが親子2人だけで会話が進んでいく。もちろん明日に一緒に行くことは決定事項である。


 翌朝、冒険者ギルド前で待ち合わせると、ルネは先日の厚めの衣服、背負袋と弓矢を背負いながらショートスピアを杖のように持って待っていた。ロドもレオも先日と同じで、レオはローブと小盾が目立つだけであった。

「さぁ中に入るぞ」

とロドが先頭に立ち3人連れ立って入り、受付で声をかけた後は食堂にもなっているテーブルでしばらく待つ。

「こちらがガスさんです」

と職員が同じ年ぐらいのショートソードとラウンドシールドとレザーアーマーを装備した男の子を紹介して去って行く。

「ガスパオロです。ガスと呼んでください。よろしくお願いします」

ときちんと挨拶した後はこちらの発言を待っている。

「よく来てくれたな。俺はロドリックだが、ロドと呼んでくれ。こちらは娘のルネリーカ、ルネと弟子のレオナルド、レオだ。2人とも10歳になったところでまだまだ初心者だがお願いできるかな」

「父さん、ちょっと待って。何これ?どういうこと?」

「俺がいつまでも一緒に行けるわけではないし、同じ年頃の仲間を探して貰っていたんだ」

「あ、そう。ふーん。私はルネね。見た通り弓と短槍を始めたところ。よろしくね」

「俺も見た通り片手剣と盾だが、同じく始めたところで、俺も10歳になったところだ。よろしく頼む」

「レオです。盾と短剣です。よろしくお願いします」

とレオが恐る恐る小さな声で発言をする。ガスは無口なだけのようで、同じ話さない男子でもだいぶ違う感じがする。体格は仕方ないにしても背筋の伸び方も違う。


「ガスくんも角兎の草原は行ったかな?」

頷くのを見て、

「じゃあ早速だが、3人で草原に行って来てくれ。合う合わないも実際にやってみないと分からないしな。さぁ行ってらっしゃい」

と、アンに作って貰っていた弁当3人分をレオに押し付けて背中を押す。

 ルネとガスは切り替えてさっさと歩いて行くが、レオは仕方なしに付いて行く感じである。


 草原に向かう中で、ガスが自分は前回に小川を見つけたのでその近くに向かうことを提案され、ルネは≪水生成≫が使える父ロドが居ないのでありがたく賛同する。レオは付いて行くだけである。途中の森での薬草採取も、ルネが面倒がったのでレオが本当の片手間程度に取って行くだけになった。


 草原に着くなり、役割分担も決めることなく、ではさっそくとルネが弓でホーンラビット1羽を狙い撃つ。

 前回と違い、今回は練習の成果か偶々か傷つけることができ、怒って突進してくる。レオの短剣投擲は外すが、ガスが盾を構えて前に出て、盾でいなした後に片手剣で切りつけている。レオも出遅れながら短剣を突き出したところに、ルネが持ち替えた槍を突き出したところで止めを刺すことになった。余りに上手く行ったことに驚く3人。

 どうせ自分の仕事と思ってレオが、投擲で外した短剣を拾って魔石と角を取り出し、内臓も心臓と肝臓だけを残して捨てた後に小川で手際よく洗った状態にする。


 じゃあ次行くね、とルネがまた弓で狙うが今度は外し、レオの短剣投擲もまた外す。突進してきたラビットはサイドステップでフェイントを入れてくるが、ガスは上手くさばいて片手剣で切りつける。今回もレオの短剣とルネの短槍は当たるがとどめにはならず、次のガスの片手剣の斬撃を待つ必要があった。それでも、ルネとレオだけでなくガスも前回の狩りのときに比べて効率が良くなっていることを実感する。

 それからしばらく同様に狩りを続けると、ルネの弓は3回のうち2回ほど、レオの短剣投擲は2回に1回ほど当たる感じであった。ガスの片手剣はほぼ空振りは無かったが、レオの短剣とルネの短槍はそれなりに外していた。それでも狩りのスピードはある程度維持できていた。

 朝の出発も遅かったのだが、太陽が真上に来て昼休憩にしたときには、すでに15羽ほどさばくことができていた。これ以上の成果になると持ち帰るのも大変と、レオの簡易解体の先として、ルネが毛皮と肉の切り分けついでに大きくかさばる骨は取り外しておくことにした。


 昼からもある程度の休憩は取りながら、慣れてますます回転が速くなった狩りを続けて、3人で割りやすい30羽を追加したところで切り上げることにした。大きくかさばる骨を取り除いたことで、5羽ずつ縛った塊を1人3つずつ、何とか持つことができたが、ルネが

「レオ、男の子なんだから多めに持ってよ」

という声を聞いたガスが、レオよりも力があるとルネの分を1つ多めに持つことになった。ルネは少し反省をしたようである。

 毛皮はルネに、その分だけ肉をレオとガスに多めに、残りは買い取りに出し、1人3銀貨近く安全に稼ぐことができたこともあり、ルネとガスが

「またよろしくね」

と言い合って別れることになった。

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