若き力!激闘!!!

間もなく準決勝が始まろうとしていた。

アルデバランは18歳の若手のホープである。


「………あの人やりますね!」

「ああ、闘志を隠そうともしてないな」

「んっ?お父さん鎖帷子を着ている?」


兄レインが、革鎧の下に着こんでいる鎖帷子に気付いた。


「本当だ。防御力を上げているのか?」

「お兄様、アルデバランさんってどんな戦い方をするのですか?」


レインは少し考える仕草をしながら答えた。


「闘牛………という表現がぴったりだと思う。特殊な突進で防ぐ事はほぼ不可能。避けるしかないんだ」


「防ぐ事が出来ないってのは難しいね!?」

「おっ!始まるぞ!」


司会のお姉さんがトークで会場を盛り上げて─


「さぁ!準決勝、始めーーーーー!!!」



双方共に動きは迅速だった。予め準備しておき、グランの双剣に炎と氷をエンチャントした。しかし、アルデバランは既に突進していた。


「なっ!?ためなしで突進だと!?」


アルデバランの弱点として、突進前に力を溜めるのに動きが止まる事があった。しかし、タイムラグ無しに突進してきたためグランは反応が遅れた。


「グランさん、行きます!チャージ・アタック!!!!」


アルデバランは剣をレイピアの様に突き出し突進した。剣の周囲には真空の刃の様な鋭い流れが出来ており、身体を外敵から守る様に覆っていて突進力に換えている。


グランは避ける事が出来ず、まともに受ける事になり、双剣を十字にして防御した。


「ぐっ!?」


堪えたのは一瞬であった。次の瞬間には身体ごと吹き飛ばされ、会場の端まで飛んでいった!


レイラは急いでグランの所に掛けていき、ヒールを唱える。グランはすぐに起き上がると、片膝を付きながらもアルデバランの追撃に備えた。


「会場の中央にいて良かったわね」

「ああ、全くだ。会場の壁にぶつかっていたら意識を持ってかれてたぞ」


幸い、ダメージは軽微だったようだ。


「アルデバラン!やるじゃないか!試合開始で殺られる所だったぞ!」


アルデバランは静かに剣を構えた。


「自分の憧れの方との試合です。最初から出し惜しみ無しで行きます!」


眼に炎が揺らめいた!


「貴方……」

「ああ、これは本気を出さないとな!」


グランも双剣を構えて吠えた!


「アルデバランよ!すまなかった!こちらも本気を出すとしよう!」


グランとレイラは同時に発音した。


「「ブレイク・リリース封印解放!!!」」


ぶわっ………


二人の解放された闘気と魔力に会場は静まりかえった。結界の外に居ても圧倒されているのだ。


ゴクリッと喉を鳴らしてシオンは二人を見つめた。


「すごい………」

「ああ………」


子供達3人は圧倒的な闘気を放つ両親に目が放せなかった。


「これは………凄いですね。少しでも気を抜くと腰が抜けそうですよ!?」


アルデバランはパートナーに下がるよう指示を出し気合いを入れ直した。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!」


アルデバランの闘気も跳ね上がる!


「さっきの仕返しだ!いくぞっ!」


グランの何気ない剣を受けたアルデバランは吹き飛ばされた。しかし受け身を取り、即座に構える。


「ぐっ………ただの剣撃でこれですか!」

「まだまだいくぞ!」


グランの止まらぬ怒涛の剣撃の嵐に、アルデバランは防戦一方だった。避けられぬ炎と氷の剣撃に身体中に傷を付けていく


そこに、攻撃魔法が飛んできた!


「っち!?」


グランは不意打ちの魔法を後ろに飛んで避けた。


「はぁはぁ………すまん!助かった!」


パートナーに礼を言うが、グランからは目を逸らさない。後ろからヒールを受け傷も癒した。


「仕切り直しだな。レイラ、頼むぞ?」

「ええ、任せて!」


お互い様子を見ながら機を待つ。



そして─



グランが飛び出した!でもアルデバランは動かない!?


『何かを狙っているのか?だが!ここは真っ正面からいくぞ!』


「武技! 《氷炎四連斬》!!!」


グランの一振りの斬撃からもう1つの刃が生まれ、双剣から4つの刃がアルデバランを襲う!


グランの剣がアルデバランに当たる瞬間に、予想外な出来事が起こった!

アルデバランが溜めの態勢で、そのまま後ろに移動したのだ!足にローラーでも着けているように平行に!?


「なにっ!」


そしてアルデバランは限界まで溜めていた力を解放した!


「スキル解放! 《猛牛の加護》!!!」


猛牛の加護とはダッシュ攻撃の時に突進力を5倍に上げる。さらに、攻撃力も増加させる。


アルデバランの工夫はここからだった。戦闘スキルにチャージ攻撃を覚えたアルデバランは戦術にそれを組み込み、それのみ徹底的に詰めていった。そして、パートナーである魔術師は攻撃魔法が苦手で長年後ろ指を指されていた。

しかし、支援魔法が得意でレビテーション(浮遊魔法)を覚えた事により、アルデバランには無くてはならない大切なパートナーとなった。アルデバランが溜めで動けない時に、浮遊魔法を使いアルデバランを移動させる事で弱点を無くす事に成功したのだった。

そして大事なパートナーとして勝利を疑わない。


「支援魔法ストロング!」


攻撃力増加の魔法にアルデバランは、さらに戦闘スキルを放つ!


「ソード・チャージアタック!!!!」


通常のチャージアタックより溜の時間が長い分、攻撃力も上がる武技だ!


「これで決める!」


何度も使えない剣魔大会用に取って置いた奥の手を、今使うことに躊躇いは無かった。

風圧だけで大気が震えるほどのエネルギーがグランを襲う!?


「嬉しくなるな!若き芽が育ちつつあるよだ。ならば私はより大きく立ち塞がる壁となろう!」


アルデバランの超突進攻撃が迫ったその時、グランは消えたように避けたのだった。


「なにっ!?」


今度はアルデバランが驚愕した。決まったと思った瞬間にグランが消えたのだ!


「何が………」


すぐにグランを追うと、グランは『水の龍』に乗っていた。


「ふふふっ、ここからは【水の女神】と呼ばれた私の腕の見せ所ね!」


レイラは不敵に微笑むのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【後書き】

愚者の声

「長くなったので分けますねー」


(水の女神)

どっかの駄女神と違いますよ~










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