呪いの鎖を受けて
『セレ……スお姉様』
はっ!と、顔を上げるとセレネの身体が塵となり、透明な霊体となったセレネが悲しい表情でセレスティーナを見つめていた。
『セレネ………ごめんなさい!』
止めどなく涙を溢れさせて謝るセレス。
『セレスお姉様……私の方こそごめんなさい。私はただ、認めて貰いたかった。お姉様の妹ではなく、1人の女神セレネティーアとして見て貰いたかっただけなのに……』
『うん……うん!セレネ!』
『……私、とんでもない事をしてしまいました。死なせてしまった数千の魂を輪廻の輪に連れていきます。今の私にはそれくらいしか出来ません。お姉様、最低最悪の妹ですが最後に女神としての心を取り戻せたのは詩音さんのおかげです。だから─』
セレネは小声で姉であるセレスに最後の別れを告げると詩音の側に立ち、祈りを捧げた。
淡い光が詩音に降り注ぎ、それと同時にセレネの霊体は消えていった。
ガラララララーーーーーーガチャッーン!
鎖の千切れる音が聞こえた。
『詩音!聞こえますか!!!?詩音!!!』
「う………ん……?」
セレスの呼び掛けにようやく目を覚ました。
『良かった……』
「セレス?」
詩音は身体を起こした。さっきまでの痛みが嘘のように感じない。
『詩音!どうしてこんな無茶をしたのですか!死んでしまったらどうするつもりだったのです!!!』
いや、もう死んでるし……
「だって、セレスが危なかったし……それにセレスがいったんじゃない」
『何を……』
戸惑うセレスに詩音は続けた。
「
『あっ………!?』
そうなのだ。第1話ですでに女神の加護を与えているとの事だったので、体力、防御力、素早など通常より頑丈になっていると賭けに出たのだった。
『私は貴女に頭を下げて、私に出来る事ならなんでも望みを叶えなければならない立場なのに、これ以上借りを作ってどうすれば良いのですか?』
セレスの問いかけに私は言った。
「貴女は見返りを求めて、誰かを助けるのですか?」
!?
セレスは詩音の言葉に、何も言い返せなくなり言葉を詰まらせた。そこにまた誰かの言葉が響いた。
『本当に気高く素晴らしい魂の持ち主だ。無自覚ではあるが……』
「今度はだれ?」
『創造神様!?』
セレスが驚いた声を上げる。
『セレスティーナよ。セレネティーアの事は残念であった。すぐにここに駆け付けたかったのだが、用意周到な虚無の神の結界のせいで来るのが遅れてしまった。すまぬ!』
『勿体ないお言葉です!』
私は事の成り行きを見守っていたが、急に話題を降られた。
『神代 詩音よ、この度は我が眷属の不始末に巻き込んでしまい大変申し訳なかった。謝って済む事ではないが謝らせて欲しい!』
「いえ……私は別に……」
『しかし、大変な事になった。セレネティーアが犯した大罪は、我が眷属の多くを動員し最善を尽くしている。君の家族の魂も手厚く保護する事も創造神の名の元に約束しよう。問題なのは君だ。これからの事は聞いているかい?』
「私ですか?これから異世界のスフィアに転生して力を付けて、またこっちに転生するんだったかな?」
『なぜ疑問系なのかは置いといて、君は虚無の神アビスメイデンにより、強固な【呪縛の鎖】の封印を受けてしまった。我々の加護を与えても、基礎ステータスは向上するがスキルや魔法が覚える事が出来ないのだ』
「封印を解く事は出来ないのですか?」
『私の力でも外部からの解除には、そうとうな時間が掛かるだろう。しかも7つある鎖を………うん?一つ外れているぞ?どういう事だ!?』
創造神さんがマジマジと調べているとセレスが口を挟んだ。
『セレネが最後の力を振り絞り、封印を解除してくれたのです』
『セレネティーアが?しかし………そうか!?同じ虚無の神の力が残っていれば、呪いを掛けた者として解除も可能か!』
創造神が辻褄があったと納得した。
『第1の束縛は永遠の痛みで身動きを取れなくする鎖だったようだ。これなら5分ほどだが、本来の力が扱えるようになるぞ!』
5分かー!ウルト○マンよりは戦えるかな?
『詩音!良かったわ!短い時間でも能力が使えれば、力を伸ばす事も出来るし残りの封印も解除する事が出来るかも知れないわ!』
おおっ!何とか希望が見えてきたよ!?
『しかしこの呪縛の鎖はタチが悪いな。運命まで束縛するか……』
「はい?」
言っている意味が分からなかった。
『どの鎖かは分からんが、運命にも楔を打ち込んである。どんなに上手く立ち回っても、最後は非業の死を受けたり、最初から悪役としての運命を授けられたりとタチが悪いぞ』
何それ!?嫌だよそんなの!!!
『何とか呪縛の鎖を解除するしかないな。本人のレベルと魔力を上げて、高位の解呪の魔法を覚えて少しずつ解いて行くしかあるまい』
『創造神様!それには私に考えがあります!私が詩音の体内に【憑依】し、内側と外側、そして本人が力を付け解呪をしていけば短期間での解放は夢ではありません!それに女神の宿主の加護により、最悪の運命は自動的に回避出来ます!』
『そうなると、お主も身動きが出来なくなるが……良いのか?』
『詩音には返しきれないほどのお詫びと恩が、そして借りがあります。私の全ての力を使い詩音をバックアップして返して行きたいと思います!』
セレスは真面目な顔で創造神に言い放った。創造神は少し考える仕草をして了承の言葉を紡いだ。
『良かろう!慈愛の女神セレスティーナよ!神代 詩音の転生を内側から手伝い、呪縛の鎖を解きつつ詩音の魂を強くし、またこちらの世界へ転生出来るようバックアップせよ!無論、スフィアでは直接な干渉は出来なくなるが、こちらも最大限の手助けをする事を約束しよう!』
「セレス、えっと……これからよろしくね?」
『ええ!こちらこそ、よろしくお願い致します!詩音!』
私とセレスは固く握手を交わした。
そしてすぐに【後悔】することになるとは、この時は思ってもみなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【後書き】
愚者の声
「はい、これにてこの小説は終了となりま………せん!なんか序盤でお腹いっぱいになりましたが、次は異世界編へと突入です!」
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