堕天した女神
『そうはさせないわ!』
急に辺りが暗くなり、声が響いた。
『そんな!まさか!?』
その声の主に心当たりがあるのか、セレスが取り乱した。
『ふふふっ、ようやくたどり着いたわよ!』
地面に影が出来るとそこから黒髪で黒い翼を持った少女が現れた。
『セレネティーア!貴女は大罪を犯し指名手配されているのに!どうして!?』
セレネティーアと呼ばれた14歳ぐらいの少女は不気味な笑みを浮かべて言い放った!
『セレスお姉様、御機嫌よう。ようやく復讐できますね~』
!?
「姉妹!?」
余りにも似てない姉妹に見比べてしまう。
『セレネ、その姿は………そこまで堕ちてしまったのね……』
『ちっ!私を哀れむな!そういう所が昔から大嫌いだったのよ!私は力を手に入れた!何千という人間の魂を取り込み!上級神までの力を手にした!もう格下なんて言わせない!死ね!セレスティーナ!!!』
セレネの手のひらから黒い稲妻がほとばしり、セレスへ襲い掛かった!
『清浄なる盾よ!顕現し、我が身を護りたまえ!【神珠の盾】』
光り輝く薄いシャボン玉みたいな膜が、セレスと詩音を包み、黒い稲妻から身を守った。結界である。
『その程度の防御魔法など打ち砕いてあげるわ!』
私は目の前の激しい攻防よりセレネの言葉が気になった。
「待って!数千の魂ってどういうこと!!!」
セレネは私の方を見て嗤った。
『なんか私の力の気配がすると思ったら、あんたあの時の死にかけてた人間……か?お前を殺すのに力を使ったせいで、居場所がバレて全ての魂を吸収が出来なかったよ!目障りな私の食糧でしかないゴミの分際でっ!』
「いったいどういう事……?」
私は理解出来ず戸惑うばかりだった。
セレネは攻撃を止めて言った。
『クハッ!おまえ何も知らないんだ!?いや、セレスが秘密にして隠していたのか?』
思わずセレスを見ると目を伏せて歯をくいしばっている。
『おまえ、利用されているんじゃない?あのセレスは人の良さそうな顔で平気で人を騙す奴なのさっ!』
ケラケラと笑うセレネに、セレスティーナは重い口を開いた。
『ごめんなさい。詩音!まさか身内の不祥事を伝えるのがはばかられたのです。まさか我が妹が堕天し、人間界に震災をもたらして数千もの人の命を奪うなんて………』
ワナワナと震えながら発した言葉は消え去りそうなほど小さかったが、はっきりと聞こえた。
『うるさい!偽善者であるセレスティーナを殺す為に力が必要だったんだ!こうなったのも全ては貴様が原因だ!』
『どうしてそこまで私を憎むのですか!?昔はイタズラ好きの可愛い妹だったのに……』
『はっ!優等生のお姉様にはわからないでしょうよ!どんなに頑張っても敵わない、セレスの妹だからもっと頑張れ、見習え!もう、うんざりよ!』
セレスは目を瞑り、静かに十文字の槍を召喚し、構えた。
『貴女の気持ちはわかりました。妹の辛さや悲しみ、葛藤に気付かなかったのは私の罪でしょう。しかし!自分の身勝手な都合で、未来ある人々の命を奪って良い筈がありません!………私が引導を渡します!』
ゆっくりと十文字の槍を構えた。
『ふんっ!ようやく殺る気になったわね!上級神になった私の力を見せてあげるわ!』
セレネも槍を召喚した。刃先は薙刀になっていた。私はどうなるのか動けず、結界の中で見守った。
ギンッ!ギンッ!ギンッ!
ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!
目に追えないほど速い攻防で、高速移動しながらお互いの槍が交差し、金属音が鳴り響く。
どれくらいの時間を斬りあっていただろうか……
ザシュッ!!!
『グッ!何故だ!?私の方が力は上なのに!数千もの魂の力を、取り込んだ私が押されてる!?』
脇腹に十文字の刃先が掠め、血を流して吼えた!
『憐れな妹、セレネティーア………気付いていないの?確かに強大な魔力と闇の力を手に入れたようですが、貴女は力に溺れ力に振り回されているだけで、使いこなせていないのですよ?』
!?
『そんな事はない!私は上級神の力を─』
『貴女が姿を消して数百年の間に、私はすでに上級神へとなっているのですよ?憎しみに囚われて気付かないのですか?』
『そ、そんな………たかだか数百年で上級神の位に届いたと言うの!?』
『同じ上級神の力を持つ同士なら使いこなせる方が有利です。ずっと暗闇に囚われていた貴女の時間は停まっていたようですね。ただ膨大な力を手に入れただけの貴女には負けません!』
スッ─と、十文字の槍を構えてセレネを見据えた。
このまま勝敗は着いたかに見えたが─
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