018:カルディア

 Drメテオールと別れた4人は、彼の研究室をでて通路を歩いていた。Drメテオールの告げた事実。ライカは人為的に作られた生命体であり、宇宙へ飛び立つ魔航船のパーツとして使われる運命にある。彼女は、いつか来る安寧の時代のための箱舟として、誰もいない、誰も知らないラクシアの遥か空の果てを惑い続けるのだという。


 そんな恐ろしい計画を打ち出したという、魔導知能『カルディア』の元へDrメテオールは向かって行った。狂った計画を中止するようにと上申しに行ったのだ。


「Drメテオール……大丈夫でしょうか?」


 とぼとぼと歩くスチュワートは呟く。


「大丈夫でしょ、あの人はもう迷うことはないわよ。そういう目をしてたもの」


 アリッサはスチュワートの隣を歩きながら、先ほどのことを思い返していた。Drメテオールはもう迷うことはない。それは、確信に近いものがあった。


「さて……それはそうでしょうが、魔導知能『カルディア』とやらがそう簡単に取り消してくれるとは思いませんね」


 ルナもまた、先ほどの話の内容を思い返す。3つの魔導知能、「始まりの剣」の名を冠するそれらは、高度な技術を蓄積した魔動機の集大成のようなものらしい。その中でも、計画を提案してきた『カルディア』は高い演算性能を持つという。叡智を司る剣の名を戴くだけはあり、そうやすやすと変更するとは思えない。


「もし魔導知能に拒否された場合は……我々も身の振り方を考える必要があるかもしれませんね」


 タイヴァルドはそう呟き、通路を歩く。すると、通路の先に見慣れた少女の姿を見る。


「あ、みんなー!!」


 とてとてと駆けこんできたのはライカだ。嬉しそうに獣耳と尻尾を振りながら、彼女は4人の元まで一気に走ってきた。


「ライカさん、通路を走っては危ないですよ」


 スチュワートは走りこんできたライカをみてそう言いつつ、ほっとした様子でライカを見る。


「ごめんね、スチュワート。でもみんなのこと見たら、すぐに駆けたくなっちゃって……ってあれ、ドクターは?」


 ライカはきょろきょろとあたりを見渡しながら呟いた。


「あーっと……ドクターはお仕事ね」

「お仕事かぁ。そっか、じゃあしかたないね。ねぇ、ドクターが帰ってくるまで一緒に────」


 ライカがそう言おうとしたとき、館内にけたたましい警報が鳴り響く。耳をつんざくような警報がひとしきり鳴り響いた後、アナウンスが流れ始めた。


《警告 中央コントロールルームにて異常を検知。許可されないアクセスを連続して確認しました。保安要員は、直ちに原因の特定と排除を実施してください 繰り返します……》


 と、警報が鳴り響いている。周囲の人々は、突然の出来事に不安そうな顔を浮かべながら、ざわめき立ちつつある。


「今度は一体なによ!?」


 アリッサは耳を抑えながらそう呟いた。その言葉に、ライカは、


「中央コアブロックって、この研究所の一番深い所だよ……なんでそんなとこ」


 と、獣耳をぺたんと倒し、不安そうな目で4人を見つめている。


「つまり、地下ということですか。ライカさん!?」

「えっ、うん。一番深い所。ドクターが前言ってたけど、そこには一番大切な魔動機が置いてあるんだって」


 ライカはスチュワートの剣幕にびくりと震えながらそう答えた。


「マスター……これは!」

「確認に行った方がよさそうね」


 アリッサはそういい、タイヴァルドとルナの方に目をやる。二人もまた、異論はない様子だ。


「しかし、外部からの侵入ではなく、おそらくメテオールが原因のもの、ですか。まったく、一般市民を不安にさせないようにとあれほど言ったのに……」


 タイヴァルドの言うように、周りの避難民たちは浮足立っている。蛮族たちに襲われた時のようなパニックは起こしてはいないが、一触即発といっても過言ではない。


「……あたし、“また”あの登場ポーズしないといけない?」

「振りですか?」

「振りじゃないわよ!!」


 だが避難民の多くは、そんなアリッサの悲鳴を他所に4人のことを見つめている。先の戦闘で、彼らが圧倒的な力を見せ付け蛮族たちを撃退したことを、すでに多くの人たちが知っているのだ。


「……ジャスティス!! あたしたちがいる限り、心配は無用よ!」


 その視線に応えるかのように、アリッサは往年の決め台詞とポーズをとる。それを見た多くの避難民たちは、歓声をあげ不安の波は徐々に収まっていった。


「マスター、素敵ですよ」

「はぁ……」

「今はこんな時ですから。分かりやすい形で“英雄”というものが必要なのですよ」

「だったら、あんたたちでもいいじゃないの!!」


 奇妙な4人の“英雄”たちは、避難民たちの声を背に一路、研究所の地下へと向かって行ったのだった。


     **


 4人はライカの先導の元、研究所内の地下へと駆けていく。移動中もけたたましい警報の音はなり続け、研究員たちは何事かと慌てふためいていた。


「みんな、こっちだよ! ここを通ったら近道なのっ!」


 ライカは複雑に入り組んだ地下通路を迷うことなく進んでいく。階段を下っていくほど、警報は徐々に大きくなる。それに比例するように、どこか焦げ臭い匂いが立ち込めていた。その中には、嗅ぎなれてしまった血の匂いも混ざっている。

 ライカは通路の最奥、巨大な両開きの扉の前で立ち止まる。ここが中央コントロールルームのようだった。4人は警戒しつつ、その扉を勢いよく開け放つ。


 中央コントロールルームは、巨大なドーム状の部屋だった。壁一面に複雑な魔動機が設置され、円形に配置された無数のコンソールが、中央に向かって大量のケーブルをのばしている。部屋の天井を支えるかのように、いくつかの支柱が伸び、その支柱にもたれかかるようにしてDrメテオールは倒れていた。


「Drメテオールっ!!」


 スチュワートはDrメテオールの側に駆け寄る。彼の目の前には、爆発し燃え上がっているコンソールが残されていた。Drメテオールはその爆発に巻き込まれたのか、体中に無数の破片が突き刺さり、胴体の一部は吹き飛ばされていた。それでも彼は、浅い呼吸を繰り返しながら、スチュワートの呼びかけに反応する。


「……は、すちゅ、わーと……くん、かい……。こんな形で……わるいね……」

「喋らないで! 今応急処置を……」


 鞄から医薬品を取り出そうとするスチュワートの手を、Drメテオールは止める。


「むだ……だよ、私にだって……わかる。迷惑を……かけてしまった……」

「……長くないわね。あたしたちにできることはなに?」


 アリッサはDrメテオールの側に座り、そう呟いた。Drメテオールは震える手で、握っていた小さなマギスフィアをアリッサに手渡す。


魔導知能カルディアの……機能の一部を、切り取った……。これを、キミ、たちに……」


 その小さなマギスフィアは血にまみれてはいるが、爆発の中Drメテオールが懸命に守り抜いたのか、傷は見当たらない。アリッサはそれを受け取る。


「……一時しのぎですが。これで少しはしゃべりやすくなるでしょう」


 ルナはDrメテオールの側で妖精魔法を行使する。うっすらとした光がDrメテオールを包み込み、彼は幾分か楽になったようだ。ルナはタイヴァルドに視線を送るが、タイヴァルドは小さく首を横に振った。わずかばかり、死から遠ざけるのが関の山だった。


「魔導知能に、計画の中止を上申した……だが、あ、れは……拒絶した。私……たちは、“怪物”を産み落としてしまった……どうか、あれを……止めてくれ……ッ」


 Drメテオールは震える手で、アリッサの手を掴む。アリッサは静かな声で囁いた。


「……安心しなさい、あたしは正義のヒーローよ。ジャスティズピンク、貴方の願いは受け取ったわ」


 しっかりと、アリッサはDrメテオールの手を握り返した。


「それよりも、もっと大切なことを伝えなければいけない相手がいるでしょう」


 タイヴァルドがそう告げる。彼の隣には、ぺたりと座りこみ、呆然とした表情でDrメテオールを見つめるライカの姿があった。


「ドクター……? どく、たー……?」

「ら、いか……」


 Drメテオールは残された手を、彼女の方へと伸ばす。ライカは、何度も転びそうになりながらDrメテオールの元へと歩み、その手を取る。ぎゅっと、両の手でDrメテオールの手を包み込むライカは、囁くような声でDrメテオールへと語り掛けていた。


「ごめんな……ライカ、こんな形で……許して、くれ……」

「な、なにを……。どうしてあやまるの……ドクター?」

「私は……らい、かのことを……ずっとだましていた。キミに、うそをついて、いた……私たちは、キミのことを、利用……していた」


 とぎれとぎれの言葉を紡ぐDrメテオール。ライカは首をぶんぶんと横に振る。


「いやだよドクター……! な、なにをいってるのか、わかんないよ! ねぇ、ドクター。どこにもいかないよね……? ずっと、いっしょにいてくれるよね……?」


 ライカの声は震え、瞳からは大粒の涙があふれ出していた。ぽろぽろと、頬を伝う涙を、Drメテオールはそっと指先で拭った。


「らい、か。キミは……もう、独りじゃない。もう、ここに縛られる必要もない。キミは……キミの、進みたい道の先を……進んで、くれ」

「ドクター……?」


 Drメテオールは、最後の力を振り絞ってライカを抱き寄せる。ライカはその大きな手に抱かれ、Drメテオールの胸に埋まった。


「……キミたちに、託したい。まだ、諦めてない者たちに……。ライカと、ライカの……初めての友達に……」


 Drメテオールの言葉は徐々に小さく、静かにしぼんでいく。


「……ライカのことを、愛しているよ。……すまな、かった……」

「どくたー……? ねぇ、ドクター? お、きてよ……そんな、ねぇ……っ!! ドクター……どくたーっ!!」


 最期に言葉を残した彼は、静かに息を引き取った。すでに、ライカに回した腕に力はなく、その目は虚空を見つめている。ライカは目を見開き、Drメテオールの身体を揺り動かしながら何度も彼の名前を叫び続けた。彼女の悲痛な声が、広い部屋に木霊する。


「……お見事でした。短命な、人の身であることが惜しい」

「えぇ、非常に残念ですが。彼は彼の役割を果たしました」


 ルナとタイヴァルドは静かにそう呟いた。アリッサとスチュワートは、慟哭するライカの身体を静かに抱き留めている。今は、どんな言葉でも彼女を慰めることはできないだろう。


「……あたしたちができることをしないとね」

「はい……マスター。Drメテオールから受け取ったものも、ライカさんのことも……必ず」


 タイヴァルドは静かに聖印を掲げ、祈りの言葉を捧げ始める。落ち着いた、柔らかな声は部屋を充たし、死者を神の御許へ導くだろう。彼の祈りの声と、ライカの小さな泣き声が部屋に残された。



 祈りの声が途切れた直後のことだ。部屋全体に伝っているケーブルが、不気味にうごめき始める。まるで生き物のように、それは部屋の中心へと集まり始めた。


「こ、これは一体……」


 スチュワートは剣をいつでも抜けるように警戒しながら、突然起きたその現象を見つめている。他の3人もそれぞれ周囲を警戒しながら、鋭い眼差しを部屋の中央へと投げかけていた。

 蠢くケーブルたちは、複雑に絡み合い大きな触腕のような形へと変わっていった。10本はあろう、巨大な触腕は部屋の中央に繋がっている。部屋の中央には巨大な箱のようなものが設置されていたが、結線された触腕に持ち上げられるようにしてその全容を露わにした。箱は全体の一部分だったようで、その下には巨大な脳のようなものが接続されている。その脳は、つながった無数の触腕を器用に動かしながら蠢いていた。さながら、巨大な蜘蛛のようだ。

 その姿をみたタイヴァルドは、緊張感を伴った声でつぶやく。


「……別大陸の、魔法文明デュランディル時代の遺跡に、こういう形の魔法生物が住み着いていたそうですよ。それは、かつての大魔導師たちの“脳”を使った、巨大な防衛機構だったそうです。その名は“ウィザーズブレイン”……この目で見るのは初めてですが、聞いていたよりも異様な見た目ですね……」


 タイヴァルドは目の前の巨大な脳みそと、無数の触腕をみて3人にそう伝える。だが、その言葉に反応したのは、意外なことに目の前の脳みそ自身であった。


『そのとおりです。博識なタイヴァルド・エデンズ・ハロウズ。当機は魔法文明時代の遺跡より発掘された“ウィザーズブレイン”を元に、発展・改良された、最新鋭の“魔導知能”。当機は魔導知能『カルディア』と呼称されております』


「驚きましたね……まさか対話が可能だとは」

『警告。当機は貴方がたと戦闘行為に発展することを望んではいません。貴方がたが“反逆者”Drメテオールより受領した、マギスフィアを回収するため、この場に参りました』

「反逆者……?」


 魔導知能「カルディア」は、4人のその言葉に続けて言葉を発した。


『肯定。Drメテオールは当機が立案・実施している『プラネテス計画』の即時中止を求めてきました。ですが、当機はそれを却下し、計画の進行を彼に命令しました。これは全人類を救済する、重要なプランの一つです』

「だから……だから彼を殺したっていうの!?」


 アリッサの声が部屋に響く。だが、無機質な合成音声は静かに告げる。


『肯定。Drメテオールは『プラネテス計画』において重要なポジションを占める人員でしたので、計画のを彼にのみ伝えました。ですが、彼はその後、当機の一部の機能を分離し、彼の所有するマギスフィアへと移譲したのです。極めて残念な結果となりましたが、当機は彼が反逆行為を行ったと断定。処分を実施しました』


 魔導知能「カルディア」は、不気味な声で4人に言葉をささやいた。


『当機としても、これ以上優秀な人員を処分することは回避するべきと結論がでています。全人族の恒久的な存続のため、我々は最良の未来を選択する義務があります。そのために、“反逆者”Drメテオールより受領した、マギスフィアを即時返却してください』


 そう言って、巨大な触腕の一つをアリッサの目の前に伸ばした。


「マスター、どうなさいますか?」

「ふん。残念だけど、あたしは余所者だから、貴方の言うことは聞けないわね」


 そういい、アリッサはマギスフィアを鞄の奥へとしまい込む。やり取りを聞いていたタイヴァルドは、目の前の魔導知能に呼びかけた。


「この施設を一般市民用の避難シェルターとして開放し、貴方の言う「計画」を中断するというのなら、返してもいいかもしれません。どうでしょうか?」

「そうね、タイヴァルドさんの言う通りにしてくれたら、いずれ返してあげてもいいわ。いずれね」


 その質問に、魔導知能は再び不気味な合成音声で語り掛ける。


『否定。全市民の保護のため、シェルターを解放することはできません。このシェルターは当機によって選別された、優良個体のみを保護します。それは『プラネテス計画』の一部に組み込まれたものです』

「では、貴方の選別から漏れた市民は見殺しにすると?」

『肯定。雌雄含めた、優良な若い固体を500体シェルターにて保護します。それ以外の個体については、地表へと放逐される予定です』


 さらに、魔導知能は続けてこう言い放った。


『────当機の提案した『プラネテス計画』は、攻撃衛星『イグニス』の対地攻撃能力をもって、地表の98%に対して無差別攻撃を実施。その間、保護した500体の個体をシェルター内にて繁殖させ、新たな世界を築く計画です。有人魔航船『ルミエル』には、人造生命体……通称は「ライカ」を管理者として、植物や動物の種子を搭載させる、有事の際のバックアッププランとして運用されます』


 一瞬、広い部屋の中が沈黙で埋め尽くされる。Drメテオールの残した“怪物”という言葉は、これを指していたのだ。


「なにを……いって、じゃあ地上にまだいる人たちは……」

「この魔動機の言うことが正しければ、未だ抵抗する我が同朋たちも巻き添えを受けるでしょう」


 静かに、ルナはアリッサの言葉の続きを告げる。


「……蛮族に勝利するための手段としては、相当素晴らしいのが、な……」

「でも、そんな手段があったとしても、取るべきではないでしょう! 僕たちルーンフォークは、人と寄り添うために造られたのに……人を見捨てる選択をするだなんて」


 目の前の魔導知能は、静かに合成音声を響かせる。その響きは、重く、絶対的な威圧感を孕んでいた。


『我々は、人族の永劫の存続のために設計された存在です。我々の選択は絶対であり、現存する選択の内、必ず最良のものです。現時点で貴方たちは、この施設内において“最良”の個体であると認識しています。貴方たちが、合理性を説くのであれば、この選択肢を無視できないものだと魔導知能「カルディア」は予測します』


 魔導知能はそう宣言する。高らかでもなく、媚びるわけでもなく、ただ淡々と事実を突きつける。合理性という矛で、4人と、残されたすべての人々を容赦なく選別していく。


「……私の目的が、種の存続であるならば。なるほど、確かに合理的ではあるでしょうね」


 目の前の魔導知能に向き合い、言葉を粒いだのはルナだ。瞳を閉じて、静かに語る魔女は、淡々とそう述べる。


「……これだから人間は。このような生命にあらざるモノに耽溺するから、このようなことになるのです。────愚かな話だ、非生命まどうき如きが神を気取るか」


 言葉に、力が籠められる。魔力を纏い、魔女は静かに激怒した。


「あたしたちの答えは変わらない。避難シェルターとして、この研究所の解放を要求するわ。人数制限はなしよ」


 アリッサは、震えるライカの背を優しく撫で、静かに立ちあがる。


「もし断るというのなら、このマギスフィアも、「カルディアおまえ」も破壊する!」


 主人マスターの声に続き、スチュワートも剣を抜き、目の前の魔導知能に言い放つ。


「僕の知っている限り、創造主かみは全てヒトだったように思いますが……どうやら、随分不正確なデータを学習させられてしまったようですね」


 人に寄り添うルーンフォークの少年は、ただ一人の主人マスターの側に立ち、剣を構える。


「あなたは僕たちの三原則ルールに違反した。────破壊します!」

「まぁ、個人的には生命無きモノへの耽溺までは、そんなに嫌いじゃないんですがね。カルディアとかルミエルとか……名づけセンスのなさには、辟易します」


 タイヴァルドはそう呟き、聖印を掲げながらゆっくりと前に進む。


「まったく、人のもつ最悪の傲慢さヒュブリスがにじみ出ていますよ……」


 それぞれに立ち上がり、自らの意志でその行く末を選んだ4人。彼らは狂った魔動機カルディアへと立ち向かう。



『……“神”とは、人ならざる身にて、天上の意志を戴くもの。我々以上に、現在“神”への適格者は存在しえません。我々は、新たなる世界を創造する「始まりの剣」となり、永遠に人族の安寧を導くモノ』


 目の前の、“神”に等しき知能を得た魔動機は、4人にそう言う。それは、無数の触腕を動かしながら、巨大な脳を掲げて宣言する。


『最優先タスクを繰り上げ実行。攻撃衛星『イグニス』への攻撃命令を出力。次優先タスクとして、目の前の“人族への反逆者”の抹殺エリミネートを開始します』



 ────人知れず、世界の終焉へと向かう戦いが、今幕を開けた。


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