異界交界神話録〜それいけ八十神カンパニー!〜『声劇台本』
桜楼
力と康の話 〜初めての異世界〜
第一話
【登場人物】
三島力(みしま りき)
中学1年生。男。『何か』に取り憑かれて暴れてしまうことがよくあり、いつも周りになにもないか気にしている。女子のような顔つきがコンプレックスで、女の子のようだと言われると可愛らしく怒る。自分を止めてくれる康のことを信頼している。
『何か』(力と同じ人でも違う人でもいい。ただし叫ぶだけの役)
力に取り憑いては暴れ出す正体不明の怪物。
嵐山康(あらしやま やす)
中学一年生。男。この歳で格闘技の達人で、『何か』に取り憑かれてしまった力を止めることができるほどの実力を持つ。勉強は苦手だが頭は周る。実は力のことが男として好きだが、隠している。六人兄弟の長男。
鈴鳴巫音(すずなり みこと)
力と康の前に現れた謎の美少女。
鈴鳴神威(すずなり かむい)
巫音の弟。なぜか巫音が持っている剣から声が聞こえる。
【本編】
力:寝ることとか、神聖な場所に行くことだとか、日常によくある、もしくはしなきゃいけない行動。
力:僕は、それが苦手です。
力:ずっと、見えない何かにジロジロと品定めされているような気がして。
力:そして時たま、見えない何かは僕の中に入り込んで、
力:全てをめちゃくちゃに彩ろうとするんです。
〜〜〜
【通学路にて】
康:「力〜! おはよう!」
力:「おはよう、康くん。昨日はよく眠れたの?」
康:「ん? そうだな。昨日は弟たちも早く寝てくれたしな。……いっつも悪夢見てるお前には悪いなって思ってるんだけどな」
力:「いいよ。康くんが安眠できているだけでも僕、嬉しいから」
康:「!? ……お、おう。ならよかった、いや、なにがいいのかはわかんねーけど、とにかくよかった!」(照れる)
力:「それでね。……多分、近いうちに発作、来るかも」
康:「! そうなのか。安心しろ。(リキの肩に手を置いて)オレは力に何も壊させねーから。絶対に止めてやる」
力:「うん。ありがとう、康くん!」
康:「おうよ!」
【放課後、二人だけの教室にて】
力:「これで日直の仕事、終わりかな」
康:「おーい力! 一緒に帰ろうぜ!」
力:「うん。帰ろ、康くん。……う、うぅ」(突然胸を抱えてうずくまる)
康:「力? ……発作か!」
力:「そう、みたい。……康くん、助けて……」
康:「ああ。任せとけ!」
力:「う、うぅ……、あ、あ、」
『何か』:『あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ああああぁぁぁ!』
康:「きやがった!」
『何か』:『う゛、う゛、う゛? あ゛ああああぁ!』
康:「お前らがなんなのか全く分かってねーけど、とりあえず力を返してもらうぜ! おらっ!」
(『何か』の体を抑え、首筋を手刀で叩く)
『何か』:『う゛、ぐ……』
康:「ふぅっ……。あとは救急車呼んでっと。もしもし、オレです。嵐山康です。また力の発作が起きたので、お願いします!」
力:「う、うぅ……」
康:「……大丈夫だからな、力。何があっても、オレが守ってやる」
【空を飛びながら二人の教室を見つめる巫音。手には一振りの剣を持っている】
巫音:「信じられない。アノニマを腕力だけでねじ伏せるなんて……。それに、アノニマを憑依させられるあっちの子も……。アイツに報告しておいた方がいいのかしら」
神威:『やめといたほうがいいと思いますよ。絶対アイツのストライクゾーンど真ん中でしょうあの子たち。ゔ、昨日の出来事を思い出して吐き気が……』
巫音:「昨日もあったの? ……アイツ後で処そうかしら」
【翌日、病院にて】
康:「おーい、力! 見舞いに来たぜ!」
力:「うん。ありがとう康くん。いつも通り、今日にも退院できるって」
康:「そうか、良かった!」
(病室のドアを開けて巫音が入ってくる)
巫音:「こんにちは。えと、三島力くんよね?」
力:「あ、えと、はい。そうです。あなたは?」
巫音:「私は鈴鳴巫音。初めまして。あなたたちに話があってきたの」
康:「話?」
巫音:「……力くん、君が何に取り憑かれているか、知りたくない?」
力:「! そ、それは、知りたいですけど……」
康:「……お前、力の何を知ってる?」
巫音:「時たま正体不明の『何か』に取り憑かれて、暴れ回って、苦しんでいるってことだけね」
力:「……」
康:「まあ、オレも力が何に苦しんでいるのかは知りたい。けど、力がそれを知ってもっと苦しむのだけは嫌だ」
巫音:「そうね。嵐山康くん、でいいかしら? じゃあ、一つだけ教えるから、それを聞いて、この後の話を聞くかどうか決めてほしいの」
力:「……康くん、それだけでも聞こう」
康:「……おう。分かった」
巫音:「力くん。君に取り憑いているのは、『アノニマ』。神様の成れの果てよ。自分が生み出したものじゃない。外からやってきて、君の体を借りてこの世界、いや、並行世界すら滅茶苦茶にしようとしているの」
力:「かみ、さま……?」
康:「神様なんているわけねーだろ?」
巫音:「いるわよ。目の前にだっているんだし」
力:「え?」
巫音:「ま、信じられないでしょうから、証拠を見せてあげるわね」
(巫音の体が30センチほど宙に浮かぶ)
康:「うわっ! 飛んでる!?」
力:「すごい……」
巫音:(地面に降り立ち)「うーん、他にも色々見せてあげられるけど……。とりあえずはあなたたちにプレゼントね」
(と言って、手の上にペンダントを創り出す)
力:「えっ!」
康:「手品か!?」
巫音:「手品じゃないわよ。これは私の能力『
康:「お、おう。タネを仕掛けている余裕なんてなかったしな。それで、どうする力? ……もっと聞くか?」
力:「……うん。巫音さん、よろしくお願いします」
巫音:「ええ。わかったわ。……まず、神様ってのがどういうものか説明するわね」
力:「はい」
巫音:「神様ってのは、信仰から生まれる存在。人から信仰された分強くなれるの。けれど、人から忘れ去られると、力を求めて暴走する。被害は並行世界まで及ぶこともあるわ。それが『アノニマ』。力君に取り憑いている存在よ。本来だったら人に取り憑くことなんてないのだけれど……」
康:「だったら何で力に取り憑いてるんだ?」
巫音:「おそらく、魂の容量が大きすぎるのね」
力:「魂の、容量?」
巫音:「体にどれだけの魂が入るかっていう数値ね。本来だったら、どんなイタコや神職の人でも、アノニマを降ろすことのできる容量なんてないわ。けれど……」
力:「僕は、取り憑かれちゃうくらいの容量があったんですね……」
康:「じゃあ、力は一生アノニマに乗っ取られるのか?」
巫音:「安心して。乗っ取られない方法も教えるわ。そのためにあなたたちに会いに来たんだもの」
力:「教えてください!」
康:「オレも! お願いします!」
巫音:「ええ。アノニマは神様の成れの果てで、魂の容量が空いている力くんに取り憑こうとする。だから、最初から体に神様を降ろしちゃって、容量をいっぱいにすればいいのよ。神様はしっかりとした人格があるから、制御も対話もできるわ」
力:「神様を、降ろす……」
康:「じゃあ、巫音さんが力に取り憑けばいいのか?」
巫音:「あ〜……。それはね、ちょっとできないの。私は神様の中でも特殊な部類だから。でも、有名な神社なんかにいけば、取り憑いてもらうことができるかもしれないわね。大丈夫よ。最初は私が間を取り持ってあげるから」
力:「あ、ありがとうございます!」
巫音:「それじゃ、まずはどの神様に会いに行こうかしら。移動は私のもう一つの能力で何とかなるから……ッ!?」(突然血相を変える)
力:「巫音さん? どうかしましたか?」
康:「力、伏せろ!」
(三人の下に空間の歪みが出来上がり、落ちる三人)
巫音:「きゃあ!」
力:「きゃぁー!」
康:「うわぁっ!」
神威:『ぎゃー!』
康:「おい今一人多くなかったかぁ!?」
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