僕の人生は終わっている

1

 僕が中学三年の時、ちょうど卒業式の日の朝、僕の友人は学校の屋上から飛び降り自殺した。僕と彼は仲の良い友達……中学二年までは。

 僕達が三年生になってゴールデンウィークが終わった頃、僕の通うH市北中学校に転校生が来た。転校生は快活な性格で瞬く間にクラスに溶け込み、能力の高さから一躍人気者になった。運動も勉強もできて、全く欠点の無い人だった。


 そしていじめが始まった。理由は分からない。どうして人気者の転校生が、良くも悪くも普通だった彼を狙ったのか?

 幸い僕は転校生のいじめのターゲットにはならなかった。でも、僕は彼を助けられなかった……いや、違う。んだ。友達だったのに、巻き込まれるのを恐れて。


 それでも学校の外まではいじめは続かなかった。学校の外では、僕は彼と普通に遊んだ。僕だけじゃない。他にも何人か、彼と遊んだ友達もいる。

 その分、学校にいる間は苦痛だった。彼を見捨てるしかなかった僕。だけど、誰にも助けてもらえない彼はもっと辛かったと思う。


 だから、高校は地元から離れた所にしようと思った。新しい生活が始まれば、きっと変われると……元に戻れると思っていた。僕は彼と約束をした。同じ県外の高校に行こうと。それなのに……。


 僕は彼の死から立ち直れないまま、高校に通い始めた。

 父さんも母さんも、僕自身も、環境が変われば、心境にも変化が表れると期待していた。だけど、無理だった。

 一人称を「俺」に変えてみたり、とにかく今までの自分を忘れて、新しく生まれ変わった気持ちになろうとしたけど、ダメだった。


 そして僕は引きこもった。誰にも会いたくなかったし、生きていたくもなかったけれど、死ぬ度胸も無かった。

 僕はどうしようもないグズだ。

 こんな気持ち、きっと他人には分かってもらえない。寧ろ、分かってもらっちゃ困るんだ。同じ思いをした人がいるって事なんだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る