第225話 充実した朝のひと時
一時間ほど朝の雑談配信をした後、あたしは優雅なひと時を過ごすべくコーヒーを求めて自室を後にした。
ブラックコーヒーに挑戦したものの、ほんの一口で返り討ちに遭って普段通り砂糖に助けを求めることに。
スマホで自分のアーカイブを流しながらコメントを読んだりしているうちにコーヒーが冷めてしまい、熱いのと冷たいのを味わえてお得だという考えを抱きつつカップに残ったコーヒーを一気飲みする。
片付けて部屋に戻ろうと立ち上がったタイミングで、いつもより少し遅起きなミミちゃんがリビングに姿を現した。
「おはようございます」
きれいな発音だけど、声がふにゃふにゃしている。
少し乱れた髪といい、寝起きであることは間違いない。
「おはよ~っ」
あたしはあいさつを返しつつ駆け寄り、パジャマ姿のミミちゃんをギュッと抱きしめた。
「コーヒーですか?」
「うんっ、配信後に優雅なひと時を過ごしてたの!」
「それは優雅ですね」
「大人っぽいでしょ?」
「とっても大人っぽいです」
まだ完全に覚醒しきっていないらしく、ふわふわした感じのミミちゃん。
かわいすぎる。
もう今日はこのままここで抱き合って夜まで過ごすのもありなんじゃないかな。
***
「あたしとしては、一日中あのまま抱き合っててもよかったんだけどな~」
あれから約一時間後、あたしとミミちゃんは近所のスーパーを目指して歩いていた。
残念ながら抱き合ったまま歩くことはできないけど、手をつないでいるので温もりは感じられる。
しかも、ただ手をつないでるだけじゃなくて、しっかり指を絡めた恋人つなぎ。
「一日中抱き合うのはいいですけど、あのままはさすがに足がもちませんよ」
「じゃあ、一時間ごとにその場で座るのはセーフってことにしよう!」
「それなら大丈夫かもしれませんね」
冷静に考えると真面目に議論するような話題じゃないんだけど、あたしとミミちゃんは家を出てからスーパーに着くまでずっとこの話で盛り上がっていた。
必要な物を一通りカゴに入れ終えた後、カートを押すあたしはレジではなくデザートのコーナーへとミミちゃんを誘導する。
「デザートにケーキもいいと思うんだけど、ミミちゃんはどう思う?」
「まったくの同意見です」
「やった~っ。そうと決まれば、端から端まで全部買おう!」
「それはダメですよ。一回やってみたいですけど」
「デザート売り場のケーキを全部買うのって、一つの夢だよね~」
なんてことを話しつつ、あたしはチョコレートケーキ、ミミちゃんはショートケーキを、それぞれ一つずつカゴに入れた。
早朝から配信したり寝起きのミミちゃんとハグしたり、お買い物ついでに散歩したり。
特に大きなことが起きたわけではないけど、充実したと感じられる朝だった。
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