第221話 ヤンデレごっこ②
簡易拠点を設けて二人分のベッドを置いた後、あたしとミミちゃんは食料を調達するため周囲を散策することにした。
夜まであまり時間がないということもあり、それぞれ別の方角へ向かって駆け出す。
手を動かしながらミミちゃんとおしゃべりしたりコメントを読んだりしていると、ふとモンスターが湧き始めたことに気付いた。
「あっ、マズい! そろそろ帰らないと!」
作業を中断して、拠点までの最短ルートを進む。
拠点まであと少しというところで、不意に衝撃音と共に体力のゲージが減る。
「痛っ! えっ、なに!? どこから!?」
「ユニコちゃん、ここは任せてくださいっ」
戸惑うあたしに、別方向から拠点に戻ってきたミミちゃんが頼もしい言葉をかけてくれた。
視線をミミちゃんの方へ向けるや否や、あたしを弓矢で襲ったと思しきモンスターが切り伏せられる。
新手のモンスターに囲まれる前に家の中へと移動し、それぞれの成果を発表。
手分けして駆け回った甲斐あって、当分は慌てなくてもいいぐらいの食糧を確保できた。
「さっきのミミちゃん、すっごくかっこよかったよ!」
「あ、ありがとうございます」
褒められて照れるミミちゃん。かわいい。
「とりあえず回復しとかないとね。いただきま~すっ」
頭や足に矢が突き刺さった状態で、シチューを食べて体力を回復する。
ゲームとはいえ、なかなかにシュールな光景だ。
「ミミちゃん、シチューおいしい? 隠し味、気付いた?」
「隠し味? なにか入れたんですか?」
「ん~……内緒♥」
含みを持たせる言い方ではぐらかし、あたしは「ふふふ」と怪しく微笑む。
この簡易拠点を作る時にゲームじゃなければシチューに髪や爪を入れることができたのにと漏らしたように、隠し味を入れることはシステム的に不可能だ。
でも、いまあえてそこにツッコむ人はいない。
『ま、まさか……』
『ミミちゃん、吐き出した方がいいよ』
『けっこうガチなやつきたな』
『ユニコちゃんの隠された一面があらわになっていく』
リスナーさんたちも、さすがの順応力を見せてくれる。
そもそもシチューを用意してくれたのはミミちゃんだし、その様子もしっかり配信画面に映ってるんだけど、そういう細かいことは気にしちゃいけない。
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