第215話 雨の日の運動②
ラジオ体操を終え、いよいよ筋トレに移ろうとするその時――
「体操服っ!」
あたしの脳内に、体操服姿のミミちゃんが降臨した。
たった一つとはいえ学年が違うあたしとミミちゃんは、当然ながら一緒に体育の授業を受けたことがない。
でも、いまなら?
すでに学生じゃないとはいえ、自宅なら好きなだけ体操服姿を堪能できる。
「急にどうしたんですか?」
「ミミちゃんの体操服姿が見たい!」
「そ、そんな真面目な顔で叫ぶようなことじゃないと思うんですけど……あっ、すみません、ちょっとだけ部屋に行ってきます」
ドン引きまではいかなくても困ったように苦笑いを浮かべたミミちゃんが、ハッとなって和室を出る。
もしかして、こういう時のために体操服を用意してくれてた?
いやいや、さすがにそれはないか。
そう言えば、実物を目にしたことはないけどブルマにも興味がある。
ミミちゃんが穿いているところを見てみたいし、どんな感じなのか自分でも穿いてみたい。
「お待たせしましたっ」
あれこれ考えている間に、ミミちゃんが自室から帰ってきた。
「おかえり~。なにか忘れ物?」
「激しく動くわけじゃないと思うんですけど、念のため下着を替えてきました」
「えっ!? そ、それって、勝負下着ってこと? 二人きりだからって、そんなこと言うなんて大胆すぎるよっ。でもミミちゃんがそのつもりなら、あたしも――」
「ちょっ、ちょっと待ってください! 違います、胸が揺れると痛いからスポブラに替えてきたんです」
「あ~、なるほど。確かに、筋トレとはいえ場合によっては揺れて付け根が痛くなるかもしれないよね」
まぁ、あたしには無縁の現象だけども。
胸が揺れて付け根が痛くなるって、どんな感覚なんだろう。
「それじゃあ、始めましょうか」
「うんっ。まずは定番の腕立て伏せからでいい?」
「はいっ」
「いい返事だね~。じゃあ、まずはミミちゃんからどうぞっ」
ミミちゃんが布団の上でうつ伏せになり、あたしは一歩下がって体育座りでその様子を見守る。
「とりあえず十回ね。無理しちゃダメだよ、限界だと思ったらすぐ中断してね!」
そう告げてから、カウントを開始。
「い~ち」
掛け声に合わせて、ミミちゃんはうつ伏せの状態からゆっくりと腕を立て、体を上げていく。
「に~い」
「さ~ん」
「よ~ん」
そのまま順調に回数を重ね、難なく十回を達成。
「ミミちゃん、お疲れ様~っ」
無事に腕立てを終えて立ち上がったミミちゃんに歩み寄り、ギュッと抱き着く。
先ほどより少し高くなった体温を感じながら、あたしは背伸びをしてミミちゃんに顔を近付けた。
「ちゅっ」
唇を重ね、背伸びの限界が来るまでずっとキスを続ける。
「お疲れ様のキスだよ~。元気出た?」
「すっごく元気になりましたっ。いまなら十回と言わず百回でも余裕です!」
「お、思ってた以上の効果が出てる……!」
ここまで喜んでもらえると、こっちも嬉しくなる。
キスとミミちゃんの反応であたしも力が湧いてきた。
雨の中を駆け回りたくなるほどの気力をみなぎらせ、腕立て伏せに臨む。
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