第198話 夏の大型コラボ!⑪

 ミミちゃんが作ったかき氷を味わった後、あたしはシャテーニュ先輩のかき氷をいただくことにした。

 気になっていた栗のシロップを味わうべく、取り皿に移したかき氷をスプーンですくって口元へ運ぶ。


「んっ、おいしい!」


 さっきと同じような反応になってしまったけど、それについては許してほしい。

 しっかりとした栗の風味が鼻を抜け、コクのある豊かな甘みが舌を喜ばせてくれる。

 エリナ先輩も言っていたように、夏を象徴するかき氷と秋の味覚である栗を同時に楽しめるのはお得な気分だ。

 トッピングの甘栗もおいしいし、気付けば取り皿が空になっている。


「えっと、次は……」


 迷い箸ならぬ迷いレンゲをするのも行儀が悪いと思い、視界の中でひときわ存在を主張していたスノウちゃんのかき氷に決めた。

 イチゴジャムと、ブルーハワイのシロップと、レモンシロップ。まずそれぞれを単独で味わったら、次はイチゴジャムとレモンシロップを組み合わせてみたり、三種類を均等にすくって同時に味わってみたり。

 あえてイチゴのシロップではなく果肉がゴロゴロ入ったジャムを選んだところにスノウちゃんのセンスを感じる。

 いろんな組み合わせを楽しんでいるうちに自分の取り分を食べ終えたので、間髪入れず次のかき氷を選ぶ。

 ネココちゃんの桃かき氷に使われているレモンシロップはいま味わったばかりなので、ここは変化を付けるためにエリナ先輩の宇治抹茶金時を先にいただこう。


「ん~っ、これもおいしい!」


 一度でも食べたことのある人には、もはや言葉にせずとも伝わるに違いない。

 確かな甘み、ほのかな苦み、ふくよかな香り。

 抹茶の苦さが苦手という人も、これなら喜んで食べれると思う。


「お~っ、改めて見るとすっごく贅沢なビジュアルだね~」


 最後に食べるのは、ネココちゃんの桃かき氷。

 大量の桃が示す存在感はすさまじく、本体であるはずのかき氷がむしろトッピングに見えてしまう。

 大きめにカットされた桃を頬張ると、咀嚼すると同時に果汁が溢れ、甘美な芳香が口いっぱいに広がって鼻に抜けて脳まで一気に届く。


「というわけで、無事に完食! 全部おいしかった~っ!」


 全員が自分の取り分を食べ終え、六種類のかき氷は空っぽの器を残すのみとなった。

 と、ここでスタッフさんが熱いほうじ茶を用意してくれた。


「スタッフさんが熱いお茶を持ってきてくれたよ! 冷たいかき氷を食べた後の温かい飲み物って最高だよね~!」


 スタッフさんにお礼を言い、湯飲みを受け取る。

 立ち上る香りを堪能しつつ、火傷しないようゆっくりと口に含む。


「ふはぁ~……」


 甘く冷たいかき氷を食べた直後ということもあり、熱いお茶が体の隅々まで染み渡る。


「あっ、そうだ。みんにゃ、よかったらこれ食べてにゃ」


 なにかを思い出して席を立ったネココちゃんが持ってきたのは、なんと塩昆布だった。

 あたしたちは考えるよりも早く手が動き、全員が一様にネココちゃんから塩昆布を分けてもらうと同時に口へ運んだ。

 そして、ここで再び熱々のほうじ茶を一口。


「これはもう、優勝を通り越して反則だよ」


 あたしが思わず漏らした一言に、この場にいる全員が深くうなずく。

 この後、追加で氷を削ってもらい、余ったシロップやトッピングを好きに使って自由に多種多様なかき氷を堪能。

 そして再び熱いお茶と塩昆布、からのかき氷というループを、お腹がたぷたぷになるまで繰り返すのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る