第197話 夏の大型コラボ!⑩

 冷たいかき氷を勢いよく食べたことで頭がキーンとなり、反射的に手が止まる。

 決して気持ちのいいものではないけど、不思議とそれほど嫌ではない。

 あと、今回に関して言えば手が止まったのは幸いだった。

 みんなでシェアする企画なのに、あの勢いのまま食べ続けていたら自分一人で完食していたはずだ。

 六等分すると考えると、あたしが食べ進めた量は一人分としてちょうどいい。

 あのタイミングで頭がキーンとなって手が止まったのは、配信の神様があたしをサポートしてくれたとすら思える。


「自分のオリジナルかき氷を味わったところで、次はみんなが作ったかき氷を食べよ~」


 全員がほどよい量を食べ進めたのを確認して、企画の本題とも言えるコーナーへと進める。

 かき氷の器をテーブルの真ん中に移動させ、手元にはスプーンとスタッフさんが持ってきてくれた取り皿、そして取り分ける際に使うレンゲ。


「それじゃあ、あたしはまずミミちゃんのを貰うね!」


 さっそくレンゲを手に取り、ミミちゃんのオリジナルかき氷を目分量で六分の一ほど取り皿に移す。

 最初は『なんでレンゲ?』と思ったけど、実際に使ってみるとほどよい量のかき氷とトッピングを一度にすくえる上に安定して取り皿へ運べて非常に便利だった。


「わたしはユニコちゃんのをいただきます」


「栗のシロップが気になるし、アタシはシャテーニュのを貰おうかしら」


「実は抹茶好きだから、エリナの食べたかったんだよねー」


「ボクはネココ謹製のかき氷をいただくとしよう」


「じゃあ、ネココはスノウのを食べるにゃ」


 各々が取り皿とレンゲを手に、思い思いのかき氷を手元に運ぶ。


「ん~っ、黒蜜の風味がおいしいっ。黒豆も甘くておいしいし、黒糖のシャリッとした歯触りもすごくいい! とにかくおいしいよ!」


 語彙力が乏しいなりに、ミミちゃんのかき氷を食レポしてみた。

 あたしは白いという理由で白玉を選んだけど、味の相性で考えるとミミちゃんのかき氷にトッピングした方がおいしそう。


「ユニコちゃんのかき氷、練乳とカ●ピスが混然一体となって贅沢な甘さを演出してますね」


 練乳はなんとなく高いイメージがあるし、カ●ピスを濃いめに作るのもなんとなくためらってしまう行為だ。

 それらを同時に味わえるお得感が、あたしのかき氷が持つ一番の強みかもしれない。


「栗のシロップ、栗の風味が豊かでおいしいわね。それと栗って秋のイメージがあるから、夏と秋を同時に楽しめるって考えるとお得な気がするわ」


 エリナ先輩が食べているのは、シャテーニュ先輩が作った栗のシロップと甘栗トッピングのかき氷。

 栗のシロップは非常に興味深いので、ぜひ味わってみたい。


「抹茶のほのかな苦みと小豆の濃厚な甘さが合わさって、無限に食べれそうだよー。冷たい氷のおかげでサッパリ食べられるのも嬉しいよねー」


 シャテーニュ先輩はエリナ先輩の宇治抹茶金時。

 もう見た目からおいしいのが確定していて、食べなくても分かるけど絶対に食べたい。


「熟れた桃の豊潤な甘みが口いっぱいに広がって、鼻腔をくすぐるこの芳香がまた素晴らしい……」


 スノウちゃんが選んだのはネココちゃんの桃トッピングかき氷。

 ちなみに、シロップを忘れたネココちゃんはスノウちゃんのレモンシロップを使っている。これが何気にてぇてぇポイントだと思っているのはあたしだけだろうか。


「スノウのかき氷、シンプルだけどおいしいにゃあ。あえてイチゴのシロップじゃにゃくてジャムを使ってるのも、果肉の食感がアクセントににゃっていい感じにゃ」


 ネココちゃんはスノウちゃん作の三色かき氷を食べている。

 普段は複数のシロップを同時に使うことはないので、この機会にいろんな組み合わせを試すのも楽しそうだ。


「次はどれにしよっかな~」


 取り皿が空になったところで、さっそく次のかき氷を選ぶ。

 余談だけど、さっきふと配信画面を見た時に『白色でそろえるならソフトクリームも合いそう』というコメントが視界に入って、まさに目から鱗が落ちた気分だった。

 かき氷にソフトクリームって、絶対に合うよね。

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