第177話 いわゆるピロートーク

 先ほど換気のために開けた和室の窓。

 カーテン越しに陽光が射し込み、小鳥のかわいらしいさえずりが聞こえてくる。


「朝だね~」


 枕に頭を預けたまま、眠気を感じさせる声でつぶやく。

 すぐそばで寝転んでいるミミちゃんから、同じく眠そうな声で「そうですねぇ」と返ってきた。

 新しいオモチャを手に入れてはしゃぐのは、子どもも大人も変わらない。

 大きな声では――というか家の外では言えないけど、昨日は時間を忘れて盛り上がってしまった。


「シャワー、もう一回浴びておきますか?」


「うん、そうする」


 ミミちゃんが『もう一回』と言ったように、実は数時間前にもすでに浴びている。

 オモチャを試してひとしきり楽しんだところで、今日はこのぐらいにしておこうとシャワーを浴びに行った。

 だけど、晩ごはんを食べて一時間ほど経った頃、あたしたちは再び和室へ赴き意味深なイチャイチャを始めていた。

 清潔にして保管したオモチャは使わず、体と体で存分に愛を語らい、いまに至る。

 要は一睡もしていないわけで、さすがに眠い。


「ん~、ミミちゃんをギュッてするの気持ちいい……」


 ミミちゃんを抱きしめ、しっかり脚も絡め、これでもかというほど密着しながら瞳を閉じる。


「ユニコちゃん、そのまま寝たら風邪ひいちゃいますよ」


 と言いつつ優しく抱きしめ返してくれるミミちゃん。

 確かに、このまま寝たら体に悪い。

 全裸だし、汗とかで濡れてるし。


「そだね~」


 四分の一ぐらい眠りに入っている状態で、気の抜けた返事を口にする。

 このままでは数分とかからず夢の中へ移動することになると確信し、少しでも意識を保つためにとりあえずまぶたを上げる。


「ちゅっ」


 目の前に最愛の恋人の唇があって、気付いたらキスをしていた。

 そうだ、ずっとキスをしていたら寝ないんじゃない?

 なんてことを本気で考えてしまうのは、眠気によって思考力が弱まっているせいだろうか。


「寝てしまわないうちに、行きましょう」


 キスをいったん中断すると、ミミちゃんが眠気を抑えた声でそう言った。


「イきましょうって、そんな大胆な。ミミちゃんってやっぱりあたしより性欲強いね~」


 寝ぼけながらピロートークを楽しんでいるつもりだったけど、ミミちゃんにとってはまだまだ行為の最中だったらしい。


「ち、違います、シャワーを浴びに行こうって意味ですっ」


「あ、そっちの意味か。ごめんごめん」


 恥ずかしい勘違いによるやり取りを交わしているうちに少しだけ眠気がマシになり、あたしとミミちゃんは水分補給を済ませてから着替えを持って脱衣所に向かう。

 シャワーの後は和室を片付けてあたしの部屋へ行き、お昼過ぎまで睡眠的な意味で一緒に寝た。

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