第90話 三人で遊ぶ②
太鼓のゲームから少し移動して、次はダンスゲームをプレイすることに。
こちらも二人プレイが可能で、まずはあたしとミミちゃんが対戦する。
「手加減しないよ~」
この自信がどこから来ているのか、それはあたし自身にも分からない。
操作方法は知っているので、説明はスキップしてさっそく曲を選ぶ。
目の前にあるディスプレイに譜面が表示され、前奏が始まった。
指示された通りに上下左右のパネルを踏む必要があるので、なかなか運動量が多く、曲が始まって一分も経たないうちに体が熱を帯びてくる。
「……すごい」
不意に、背後からシャテーニュ先輩のつぶやきが聞こえてきた。
それは紛れもなく感嘆の声であり、少なからず驚きも混じっている。
難易度は普通だし、シャテーニュ先輩がすごいと思うようなことはなにも――まさか!?
譜面とにらめっこして懸命に足を動かすと同時に思考も巡らせていると、一つの答えに辿り着いた。
あたしは失礼を承知で足を止め、視線をディスプレイから外してミミちゃんの方へと向ける。
刹那、自分の推理が真実に至るものであったことを確信した。
「す、すごいっ」
意識したわけではなく、自然とシャテーニュ先輩が発したのと同じ感想が口からこぼれる。
「んっ、あっ」
声に近い吐息を漏らしながら踊るミミちゃんの表情は、真剣そのもの。
右のパネルから、間髪入れず上下のパネルを同時に、続けて左右同時、再び上下、左、下、と譜面に従い絶え間なく足を動かし続けている。
難易度は決して高くないとはいえ、ゲームの性質上ある程度の激しい動きが要求される。
今日はもともと運動する予定ではなく、ミミちゃんも当然ながら普段通りの服装で、胸揺れ防止用のスポブラなんて身に着けているはずがない。
要するに、ミミちゃんのおっぱいがめちゃくちゃ揺れ弾んでいる、ということだ。
本来ならプレイ中に動きを止めてよそ見をするという愚行を恥じてすぐにでも再開するべきなんだけど、こればっかりはどうしようもない。
曲が終わるその瞬間まで、あたしの視線はミミちゃんのおっぱいに釘付けのままだった。
「ミミちゃん、完敗だよ。いろんな意味で」
「はぁ、はぁ……あ、ありがとうございます。それにしても、ユニコちゃんの点数、低くないですか?」
乱れた息を整えつつ、ミミちゃんが訊ねる。
相当集中していたようで、直前まであたしがおっぱいを凝視していたことには気付いていないらしい。
「途中からミミちゃんのおっぱい見てたからね~」
これ以上の罪悪感は背負いきれないので、素直に打ち明けることにした。
「えっ、そうなんですか? じゃあ、実力で勝てたわけじゃないんですね」
残念そうなミミちゃんの様子を見て、あたしの心は全方位から罪悪感の刃で滅多刺しにされる。
「まだユニコちゃんとミミちゃんの対戦見たいから、よかったら次も二人でやってよー」
あたしの心中を察してくれたのか、シャテーニュ先輩が助け舟を出してくれた。
「ミミちゃん、再戦お願いしてもいい? おっぱいは家でじっくり堪能するから、次は絶対に途中で止まったりしないよ!」
「望むところです。次は本気のユニコちゃんに勝たせてもらいますっ」
同じ曲で再戦した結果、僅差で敗北を喫してしまう。
体力が余っている分あたしが有利だと思っていたけど、ミミちゃんいわく先ほどのプレイでコツを掴んだらしく、最後のところで差をつけられてしまった。
「ま、負けた……っ」
「やったっ、勝ちました!」
「二人とも、お疲れー。はい、ジュースあげる」
声につられてシャテーニュ先輩の方を向くと、両手に持ったペットボトルを差し出してくれていた。
あたしとミミちゃんはお礼を言いつつペットボトルを受け取り、乾いたのどを潤わせる。
「たまには先輩らしいところ見せとかないとねー」
シャテーニュ先輩はそう言いもって、自分用の飲み物を口に含んだ。
「いやいや、普段から先輩らしいよ!」
「そうですよ、いつもお世話になってますっ」
「ふぇっ? いや、そんな、嬉しいけど……さ、さすがに照れる」
あたしとミミちゃんの反応が意外だったらしく、シャテーニュ先輩は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます