第66話 ファンアートを眺めながら
朝食の後、あたしとミミちゃんは麦茶をお供にしてソファでくつろいでいる。
「ミミちゃん、これ見て~」
あたしはミミちゃんの肩に首を預けつつ、スマホをスッと近付けた。
そこに表示されているのは、あたしとミミちゃんが大胆な水着を着てイチャイチャしているファンアート。
太陽に照らされながら浅瀬で水をかけ合っている様子を描いた、至極健全なイラストだ。
あたしの腋とかミミちゃんのおへそとか、強いこだわりを感じさせる。作者さんには声を大にして感謝を伝えたい。
「わっ、かわいいですねっ。細かいところまで丁寧に描かれていて、表情もとっても素敵ですっ」
ミミちゃんが純粋すぎて眩しい。
「この水着、実際にあったら着てくれる?」
「これ、ほとんど紐ですよ? い、家の中だけなら、いいですけど……」
頬を赤らめながらそう言ってくれたミミちゃんに、あたしは興奮を禁じ得なかった。
すー、はー、すー、はー。深呼吸を繰り返し、心を落ち着ける。
「この水着を着てエッチしたいね!」
この水着を着てファンアートを再現したいね。
「ふぇっ!?」
ミミちゃんが驚きのあまり、ビクッと体を震わせる。
煩悩が強すぎて、修正前の本音が漏れてしまった……。
「ところで、こっちのイラストも見てよ~。ほら、メイドさんのコスプレしてるっ。これもすっごくかわいいよね!」
ブックマークしている他のイラストを表示して、話題を無理やり変える。
あたしはエッチなファンアートも大歓迎でミミちゃんとの濃厚な絡みを描いたイラストを大量にブックマークしているので、うっかりそれらを表示しないように気を付けないと。
ミミちゃんの●●●をあたしが●●して●●●●なイラストなんて、刺激が強すぎて卒倒してしまうかもしれない。
いま画面に映っているのは、デフォルメの効いた二頭身で描かれている二人のイラストだ。
完成度が非常に高く、そのままラバーストラップのデザインとして使用されてもまったく違和感がない。むしろ作ってほしい。絶対に買うから。
「め、メイド服を着て、え、ええ、エッチしたいって、ことですか?」
「違うよ!? したいとは思うけど、そういう下心があって見せたわけじゃないから!」
「そ、そうなんですね。ごめんなさい、早とちりして変なことを言ってしまいました……」
「ううん、あたしの方こそ動揺させるようなこと言ってごめん」
「わたしもユニコちゃんと同じぐらい、エッチなイラストを楽しめるようになりたいです」
一歳違いの幼なじみであるあたしとミミちゃんが付き合い始めたのは小学生の頃で、それから数年と経たないうちに大人の階段を昇った。
それからも良好な関係が続き、現在に至る。
幾度となく体を重ねているにもかかわらず、未だに初めての時と同じような反応を見せてくれるミミちゃん。
エッチな話題に対する耐性は皆無に等しく、ちょっとからかっただけで真っ赤になる。
「う~ん、ミミちゃんには難しいんじゃないかな」
しばし考えてから、自分の意見を告げた。
ミミちゃんがエッチな話題への耐性を得る難易度は、RPGに例えるなら最初に出てくるスライム的なモンスターを倒した経験値だけで全キャラクターのレベルをカンストさせることに相当する。
可能ではあるけど、あまり現実的とは言えない。
「あっ、そうだ――」
あたしはふと名案を思い付き、スマホにススッと指を走らせる。
ブックマークしているR指定イラストの中から比較的ソフトな――具体的に言うと、実際に経験したことのあるプレイが描かれているものを選び、それをミミちゃんに見せた。
時間をかけて徐々に過激なイラストに慣れていけば、いずれはそれなりに耐性が付くんじゃないだろうか。
「ひぁうっ!?」
ミミちゃんは顔を耳まで真っ赤にして、あたしにギュッと抱き着いてきた。
客観的に見ると刺激が強いのか、はたまたあたしとの行為を思い出して照れてしまったのか。
「道のりはまだまだ長そうだね~」
リスナーさんたちが描いてくれたファンアートは、どれも愛にあふれたものばかり。
いつになるかは分からないけど、全年齢向けだけでなくエッチなイラストも一緒に楽しめる日が来るといいな。
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